表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/72

偽善者とホワイトデー 2019



 ホワイトデー。


 バレンタイン同様、説明を既に済ませているので簡単に纏めると――リア充だけに行うことが許された奉納の儀である。


 神はリア充にチョコを授けた。

 リア充たちはその聖具を操り、世界に蔓延る魔物たち(ひリア)遠き果ての深淵(ジタクのナカ)へ陥れる。


 リア充はその威光に感謝し、与えられた聖具の何倍もの供物を捧げる――それがホワイトデーなのだ。




「……いろいろと違う気もするが、まあようはこんなものだろう」


「で、なんで俺まで駆り出されてんだよ」


「コアさんに贈るんじゃないのか?」


「そ、そうだけどよ……」


 俺とカナタの二人は、厨房を貸切状態にしてホワイトデーのプレゼントを作成中。

 共に贈るべき相手が居る身、例え片方の容姿が女子だろうと気にしてはいられない。


「元男を連れてくるっていうなら、リョクとかクエラム、微妙だがソウも引っ張って来るが……バレンタインを渡された、という条件が入るとお前しかいなかった。リア充コンビであるアマルとウルスは……いろいろと忙しそうだしな」


「まさか、異世界でTSして後にようやくこのイベントに関われるようになるとは……って、いろいろとおかしいだろ!」


「諦めろ。チョコを貰った時点で、非リアに許されるのはその何十倍もの品を届けることだけなんだ。悪魔と契約した時点で、俺たちに未来なんてない」


あの悪魔(コア)め……」


 カナタの材料を混ぜる音が、いっそう強くなったが気にしない。

 ミニイベントで行われたチョコ乱獲によって、材料はほぼ無限にあった。

 俺は異端審査会のような目にあったが、あの後眷属たちは普通にチョコを作った。


 そしてカナタもまた、チョコを作り俺とコアに渡した。

 俺は怒られながらも作り上げたココアクッキーを渡したんだが……コアがな。

 チョコ自体に仕掛けをしたわけじゃない。

 自分をコーティングして『わ・た・し』をしたわけでもない。


 だが結果として――塔を建設したのだ。

 事情は知らない、だが翌日の艶々した顔とゲッソリした顔を見れば良く分かる。


「大変だったんだな……お前も。全身チョココーティングの世界最強の龍に追われたり、一人一人は普通だけど、組み合わせて食べると状態異常を引き起こす仕掛け付きなんて小さい物とは大違いだな」


「…………いや、お前の方がヤバいだろ」


 そうだろうか? 俺に実質的な被害は皆無だったし、カナタの方が大変だろう。


「ま、お互い様ってことで――よし、完成した。カナタ、味見頼む」


「オッケ……ェって、何これ」


「マシュマカロンだ。マシュマロの柔らかさとマカロンのサクサク感とネチネチ感を併せ持った一品……どうだ、イケるか?」


 会話中に手を動かして作り上げた名作。

 中にチョコも入れてある、極上の品だ。


「――――!」


 それを口に含んだカナタ、物凄く幸せそうな顔をしています。

 なんだか料理兼バトル漫画のタッチで幸悦しているんだか……ソーマを混ぜた覚えは無いぞ。

 よし、これならバッチ『駄目だ!』……リにはならなかったようだ。


「何が駄目だったんだ?」


「旨すぎる……また同じ目にあうぞ」


「ふっ、構わないさ。例えどれだけ折檻されようと、俺は愛しきハーレムたちに愛を囁きたいんだ」


「……い、言ってて恥ずかしくねぇか?」


「…………超絶恥ずかしい」



 カナタの予想は的中し、美味しすぎると怒られることになった。

 だがいいんだ、笑顔で怒られたのだから。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ