偽善者とハロウィーン 2024
※忘れた方へのキャラ紹介
アン:サポートAI的存在、擬人化状態はメカっ娘
ハロウィーン。
前回はウォーリ……じゃない、探し人という企画でお菓子を配るイベントにした。
アレはアレで、子供たちから大変評判だったのでよく覚えている。
……裏では【暴食】の権化ことグラとの壮絶な戦いがあったことは、誰も知らないが。
前回もかなり煮詰まったうえで、どうにか捻りだした俺のアイデア。
だが今回もとい今年は眷属と共に考えているのだ、何とかなるだろう。
◆ □ ◆ □ ◆
夢現空間 自室
「…………ダメだ、詰んだ」
《何と酷い。何ですか、アンだからダメなのですか。レンでしたら万事解決ですか?》
「レンを巻き込むなよ…………いや待てよ、たしかに迷宮が使えればそりゃあもう盛大に何かできたのかもな……」
《本気で考えているじゃありませんか》
今回の担当はアン。
普段からツッコミ役というか、俺の脳内をほぼ自由に覗き見できる生態を活かしている彼女だが、だからこそ問題があった。
そう、彼女は種族[不明]の産物、つまり俺の半身みたいな存在。
思考に俺要素が混じっているためか、アイデア出しにはかなり不向きなのだ。
なお会話に出てきたレンは、迷宮核の擬人化娘なのでそちら由来の知識が豊富。
ハロウィーンを模した迷宮でも造ってもらえば、子供たちも大満足だったかもな。
《と、考えても現実はわたしが担当です。名前が似ているから、レンとアンで間違えたなどと言わないでくださいね》
「アンさんや、似た名前のヤツが居る眷属は他にもいっぱいいるだろう。特に武具っ娘」
《メルス様のネーミングセンスの無さが爆発していますからね。シンプルイズベストという言葉は、決して一音で名前を済ませようという意味では無いのですよ?》
「悪くないと思うんだがな……決して、俺が名前を覚えられないからじゃないんだぞ」
うん、名前は……『は』、覚えられる。
ただちょっと、顔なんかは何をどう覚えていいのか分からなくなるから難しいけど……今は記憶系のスキルでどうにかなってます。
「ゴホンッ、話を戻そう。今年は何をすればいいと思う?」
《やはりレン様に頼られては?》
「今年、何だかんだ決まった眷属とこれまで上手くやって来たんだからさ、今回もそんな感じでいきたいんだよ……頼む!」
《と、言われましても…………ハァ、そんな顔で見られては仕方ありません。もう少し、考えてみましょう》
「いや、何その俺が情けなかったからみたいな感じ。特に懇願もしてないし、目をウルウルとかもさせてないんだが?」
「──そういうところですよ」
そう語る彼女は──これまでの念話のみでの話し合いを止め、突然俺の部屋に体を出現させた。
機人系統のアバターなので、メカチックな部分が要所要所にある彼女。
人肌ならぬ機械肌特有の(普段は)ひんやりとした冷たさを、俺に押し付けてくる。
「最悪、復刻版と付ければ過去のアイデアを使い回す形でも問題ありません。何より、毎回新作をやり続ける必要も無いでしょう。メルス様、これはそもそもの話ですが──」
「あーあー、何も聞こえ──」
《こちらの世界の住民は、まったく知らないイベントです。メルス様がやりたいと主張するからこそ、毎度まったく新しい行事に突き合わせてしまっているわけですし……》
「うぎゃー! なんか元も子も無いこと言いやがったな! やめろよ、わざわざ念話に切り替えて真実告げるの!」
自由民たちに聞いたことがあるのだが、地球と共有の季節行事は存在自体はする。
ただしそれは過去に存在した転生者や転移者による、半ば魔改造版なんだとか。
そして何より、移住してくる元の世界が俺の知る地球だけじゃない。
そう、似て非なるものだけじゃなくまったく知らないイベントなども存在するのだ。
まあ、そんなわけで逆にイベントが飽和してしまい、こちらの世界の人々も困り果て、ある程度利益があるイベントのみを選別したり複合したり……いろいろしたそうで。
残ったのは原型を失った、ただただ盛り上がるイベント。
……いやまあ、それはそれで面白いからいいんだけども。
「それで、何か思いつきましたか?」
「…………復刻版にしようか」
「それがよろしいかと」
今ならば──割と前からだが──ソシャゲの運営の気持ちが分からないでもない。
イベントって、別に無尽蔵にアイデアが湧いてくるわけじゃないんだな。
割と初めて開示された気がする……
転移/転生者云々による季節ネタはある意味布石っぽい……活かせる気がしないけど
 




