表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽善者とこぼれ話 番外月  作者: 山田 武


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/75

偽善者とエイプリルフール 2024

※忘れた方への人物紹介

不死魔王:不死族の魔王にして不死をもたらす魔王、魂魄──命の輝きを視る瞳を持つがゆえにそれに執着している



 ???



「──今年もこの日がやって来たのか……」



 毎年の恒例行事染みているなぁ、と場違いなことを考えてみる。

 ──少なくとも、何もかもが死に満ちた文字通り腐り切った場所ではな。



「どこもかしこもアンデッドだらけ。というか、生きている物が何も無いなこれ」



 これがゲームやら漫画の創作物ならば、探索していくうちにこの状況を打開しようとする組織に出会い、力を合わせて世界の解放に挑むのだろうが……時間が無い。


 この状況は、一年に一度だけ使える魔導によって引き起こされたもの。

 ──“非ざる在りし偽証”嘘が許される日(エイプリルフール)にのみ使える限定的な事象改変だ。


 これは夢の世界、眷属の誰かと結びつけられたありえたかもしれない未来の世界。

 制約/誓約をぎちぎちに施しており、従来のチートスペックは発揮できない。



「──『塊魔』」



 それでも身・能力値的にはそれなりに高い状態なので、有り余る魔力を一点に集中させて物質化──武器を確保した。


 それと同時に、その膨大な量の魔力を検知したアンデッドたちが迫ってくる。

 分かり切っていたことなので魔力に神聖属性を付与、近寄ってくる個体に当ててみた。



「……効果なし、か」


『うぼぁああああ……』


「となると、聖属性も光属性も同じか。浄化も無理だろうし──“生命剥奪(デス)”」


『うぼ──ぁあああああああ!』


「ちょっと死んだけど、戻ったな。ああ、これもういろいろと狂ってる世界なのか」



 眼を死霊眼と魂魄眼にして分かった。

 どうやら魂が肉体に縛り付けられ、解放してもすぐに戻ってしまう仕様のようだ。


 ゲーム的に言うなら──浄化無効、死亡後再配置、死病感染、耐久値即回復……みたいな感じだろうか。



「けどまあ、お陰で誰が元になっている世界かは分かった……親玉さん、観ているんだろう? 悪いが時間が無い、早々に出てきてはもらえないか?」


『ああああああ! ──ふむ、幾百年ぶりの生者との語らいか。それも悪くない』



 目の前のアンデッドに声を掛ければ、悲鳴は突如止まり代わりに聞こえてくる別の声。

 一度聞いたことのある、だがしかしその声よりもおどろおどろしいもの。



「本当に時間が無いんだ。俺をそっちに連れていく、あるいはそっちから出向いてくれるのどっちでもいいからやってくれないか?」


『……驚かぬか。まあよい、であれば招き入れてやるのが上位者の余裕というものか──あがががががががが』



 再び声が切り替わると、アンデッドは壊れた機械のように口を震わせる。

 それは詠唱としての意味を持ち、俺を対象とした転送陣が構築された。


 本来そんなものは無い、だが今この世界においては先ほどの存在こそがすべて。

 そうあれと認識さえすれば、何でも好き放題弄繰り回せるのだろう。



  ◆   □   ◆   □   ◆



「──待っていたぞ、生者よ。吾は貴様を歓迎しよう」


「さっきから言っていた通り、時間が無い。具体的に言うと、今の俺は別世界のお前の可能性と繋がってここに居る。これは泡沫の夢であり、俺は仮初の来訪者。目的はたった一つだけだ」



 転送された先で待っていたのは、歴戦の強者たち──のアンデッドを付き従える者。

 屍たちの王にして自らもまた死骸の王、死霊術を極めた不死の魔王──ネロマンテ。


 この世界はネロマンテが世界を制圧し、全生物アンデッド化を成し遂げたIF。

 どういった違いがあるのか、それを俺が知る由もない。



「……吾とは異なる吾、か。それはそれは、さぞや扱いに困っているのではないか?」


「なんだ、俺が従属しているとは思わないんだな」


「であれば、そのような振る舞いをするはずが無かろう。何より──貴様の魂魄、その輝きがそれを認めるはずがない」


「そういえば、それがあるよな。たまに使わせてもらっているよ、コレ」



 片目に発現させている魂魄眼、それは本来ネロマンテ──俺の世界のネロが発現させているものを借りている。


 空っぽの眼窩の中に灯る緑の炎、ネロマンテはそれを介して俺を視ていた。

 映るのは俺の──チートに弄られた、美しくも歪であろうメルスの魂魄だ。



「それで、目的とはなんだ? まさか、吾を滅ぼしに来たのか? 貴様には、それを成す力があるのだろう?」


「それをお前が望むなら、別にいいんだが。ただこれを聞きに来ただけだ──今のお前は幸せか?」


「……」


「ああ、勘違いしないでほしいんだが、別に答えを間違えたら何かする……ってわけでもないんだ。ただ、その現状にお前さんがどういった想いを抱いているのか。こっちの世界のお前にもちょっとだけ伝わるだけだ」



 なお、俺自身はこの経験を記憶できないので何も反映できないのだが。

 前回はフーラとフーリ、それとレミルが経験したらしいが、それもあくまで又聞きだ。



「──幸せ、それを貴様の世界の吾は感じているのか?」


「さあ? ちょっといろいろとあったが、少なくともアイツ自身の魂魄は、今のお前よりも綺麗に輝いていると思うぞ」


「…………そう、か」



 この世界のネロマンテは、惨状からも分かるように世界を支配している。

 当然、それに見合った証を世界から授けられていた──災凶種になっていたのだ。


 結果、元よりアンデッドかつ死霊術の行使により禍々しくなっていた魂魄は、多くの存在をその深淵に引き摺りこんだことで、更なる黒へ──真っ黒なものに。


 ネロがそうなる可能性は、少なくとも俺が居る限りは絶無と言ってもいいだろう。

 だからこそ、この質問はある種の試みでもあった。



「……吾には、幸せという感情を抱く機構は未だ備わってはおらんよ。魂魄を極めれば、そう信じてやってはきたが……その果てにあるのは、輝きとは程遠い、何もかもが黒ずんだ腐敗と死骸の世界だ」


「…………」


「貴様を調べ尽くせばあるいは……そう考えなかったわけではない。だがそうだな、これは泡沫の夢であったか──幸せではない、だが不幸でも無いのだ。吾の探究は、吾が滅ぶその時まで決して終わらんよ」


「そうかい……なら、頑張ってくれよ」


「……どうやら、時間のようだな」



 やるべきことを、聞くべきことを聞いたからだろう。

 ネロマンテを見る俺の視界が、だんだんボヤけていく。


 少なくとも祈念者たちの認識からすれば、この世界の有り様は間違っているだろう。

 生者無き死の世界、おそらくアイやその他の超越種も何かの理由で阻止できなかった。


 それでもこの世界は存在し、ネロマンテという存在が終わるまでこの在り様のまま続いていくのだろう──まあ、夢から覚める俺には分からないことだな。



「良い終わりを、そう祈っておくよ」


「祈る、か……」


「じゃあ、これでお別れだ」



 この経験を経て、俺たちの世界のネロにどういった影響があるのかは分からない。

 だが知っている、それだけで何かが起きるのかもしれないな。



  ◆   □   ◆   □   ◆


 夢現空間 研究室



「──ふはははっ! アイデアが、アイデアが湯水のように湧き上がってくるわ!!」


「…………」


「むっ、メルスか。どうやら吾の夢を見たようだな!」


「そうみたいだが、どんな未来だった?」


「どうやら災凶種になった未来だな! そうなる過程、そうしてそうなった果てに吾とは異なる真理に辿り着いたようだ!」



 翌日、夢から覚めた俺が目にしたのはハイテンションで死霊術を行使するネロだった。

 今日がエイプリルフールだったことを考えるに、“非ざる在りし偽証”の影響かな。



「…………それ、絶対ロクでもない禁忌指定の死霊術だろう」


「当たり前だろう?」


「そんな当然です、みたいな感じで言われてもなぁ」


「そも、何事も使いようだ。今までの吾では到達できなかったことも、更なる応用を加えることで可能になったぞ!」


「……言っておくが──」


「分かっている。あくまで今の吾はメルスの眷属だ……嫌われるような真似は、他ならぬ吾自身、したくないからな」


「お、おう……分かってくれてるなら、それでいいんだ──あとで他の眷属も呼んで、封印するヤツは封印するからな」


「チッ……誤魔化されてはくれないか」



 人化し、美女となったネロの照れ顔には俺も思わず赤面してしまう。

 ……がまあ、それはそれとして、得た技術に関してはきちんと管理させてもらおうか。




そんなこんなで、今年はこんな感じ

無双できない仕様なので、戦闘が毎回発生するわけではありません

──今回は上手く立ち回れた方です、最悪(情報規制)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ