表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/72

偽善者とひな祭り 2019



 ひな祭り云々で親バカを極めている大人たち、誰も彼もが自分の娘こそが一番だと自負するため、舞台裏では『うちの娘1グランプリ』が行われているのだが……子供たちはそれを知らない。


 いや、別に教える気も無いけどさ。

 俺も俺で、ミントとカグの素晴らしさを熱く語っているわけだし。


「よーし、みんなでひなあられを作ろう!」


『おー!』


「作り方は二つあるから、どっちでも好きな方で作ってみてね!」


 日本においてひなあられは、関東と関西で作り方が異なる。

 関東は……そう、ポン菓子とか呼ばれるお菓子に似ているんだよな。

 関西はモチを膨らませる感じだ。


 去年はどちらかといえば大人たちのためのひな祭り、みたいな感じになってしまった。

 なので今回は子供が大人のためにお菓子を作りプレゼントする企画を用意したのだ。


「おれは弾ける方かな?」「わたしは膨らむ方がいいわ」「どっちも作りたいなぁ……」


「うんうん、決まった方の場所に行ってね。並んである材料とレシピ通りに作れば、とりあえずちゃんとした物ができあがるよ」


 いつの世も、アレンジを勝手に加える者が現れるものである。

 その理由は人によるが、その大半がより美味しくしたいという願いから生まれているからこそ、性質(たち)が悪いんだよ。




 関東組はモチモドキを170℃の油で揚げさせ、弾ける音を楽しませた。

 関西組はひしモドキをオーブンに入れて、膨らむ様子を楽しませる。


 ワイワイと、そしてキャピキャピしながらお菓子を作る様子にほっこりしながら、同時に片目を輝かせてその景色を送信していた。

 父母に見せておかないと、頑張っているところを見せられないからな。


「うんうん、みんな美味しそうだね……だけど、一度食べてみようか」


「……うわ、甘すぎる!」「渋いよー」「なにこれー」「……普通に美味しいけど」


「美味しい物を食べてもらいたいって思うことは大切だけど、想いを籠めるすぎると苦しくなっちゃうんだよ。だから、大切なのは十分な量にすること──喜んでもらいたい、それだけでいいんだよ」


 そう言われ、再び挑戦を始める子供たち。

 当然ながら、二回目は美味しくなった。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 そうして出来上がったお菓子を、大人たちは号泣しながら食べている。

 そこまですることかよ、とツッコみたいところだが……今の俺には、そんなことをする余裕もない。


「美味い! 美味いよ──ミント、カグ!」


「ふふーん、パパのために頑張ったんだ!」

「おにーちゃんが喜んでくれると思って、わたしも一生懸命作ったよ!」


「うぐっ……本当に、ありがとう……」


 俺もまた、同じように泣いていたからな。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ