偽善者と節分 2023
節分。
節の分け目と書いて節分と読むわけで、本来は四つの季節(日本は四季だしな)の間で毎度行われていたイベントだ。
今では新年にもっとも近い、立春の節目である二月三日のみの開催ではあるが。
……まあ、裏の理由としては四度もやる大人たちの苦労もあるかもしれないが。
ともあれ、子供たちの認識としては家宅侵入を決め込んだ鬼に豆を投擲した後、歳の数だけ鬼に投げないで家に放った物を食べるイベントのはず……全然意味が分からんな。
◆ □ ◆ □ ◆
第一世界 イベント会場
祈念者主催のイベントもあったのだが、今回は集団で鬼系の魔物を討伐するらしい。
ちょうど誰かが引き起こしたレイドイベントもあるようで、それで盛り上がっている。
「まあ、特段欲しい報酬があるわけでもないからな……欲しければ作ればいいし」
さて、そんなわけで住民たちと楽しむことにしてみた。
俺と共に舞台に上がった子供たち、彼らはその頭に皆角が付いている。
「さぁ、鬼ごっこを楽しむぞ!」
『おぉおおおおお!!』
「ルールは簡単、みんな知っている増え鬼の形式だ。タッチされても鬼のまま、全員が鬼になるまで続けるぞ。逃げ延びた時間、また鬼にした人数で賞品が決まるからな!」
『おぉおおおおおおお!?』
「そして、重要なのはこれ。今回、鬼になったヤツは本当に鬼の種族性質が宿るこの角を付ける。元から鬼なら普段より強くなれる、さぁお前も鬼になろうぜ!」
『おぉおおおおおおおおおお!!』
うん、ノリが良くて何より。
鬼ごっこ(物理)というかファンタジーというか……ともあれ、そんな感じで鬼ごっこが始まった。
鬼の角はあえて色を付けており、その色に応じた効果を発揮する。
赤鬼なら火、青鬼なら水……と、ただし白鬼と黒鬼は居ない……鬼族と色が被るし。
子供たちが最初の鬼なので、捕まるのも最初は子供たちばかりだ。
なので最初のうちに子供同士で捕まえあって、ポイントを少しずつ稼いでいく。
中盤になると数の力、そして鬼の力を用いて大人たちが捕まっていった。
そうなると加速度的に鬼の数は増え、戦闘職に就くような者しか残らなくなる。
「なお、眷属たちも参加中です……さてと、そろそろ俺も行きますかな」
終盤まで俺は動かず、初期位置からずっと状況を見守っていた。
しかし、逃げ切られると俺にも面倒なことがあるので──終わらせに向かう。
「転移は禁止だし、地形操作系もダメ……それでも、身体能力でどうにかする!」
俺の頭部に付いている角は、特別製の全色対応版……ゲーミングカラーみたいで目立つのが若干の欠点。
だが、気づかれる以上に補足してしまえばどうとでもなる──眷属たちに、ご褒美を渡すわけにはいかんのだ!
ご褒美云々、そしてどうなったかは──ご想像にお任せします




