偽善者と節分 2019
節分。
その名が示す通り──なんて説明は去年もやったので、省いておこう。
わざわざ春夏秋冬のすべてで行うのは、さすがにこちらの世界でも面倒臭い。
あくまで春の節目となるこの日のみ、節分は夢現空間でも行われている。
暦もいつの間にか、新しく成立していた。
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第四世界 特別会場
二年周期でイベントを変える、ということで誤魔化すことにした。
なので今年は節分(戦闘関連)、つまりは豆撒きバトルというある意味豆への冒涜をしているが……細かいことは気にしない。
「などと言っていると、どこから訴えられるか分からないから──今年から、この豆はユラルに品種改良してもらった魔物だ。健康にもいいし、地面に落ちても明日には場所に合わせて処理されるから放置しても問題ない」
迷宮を一つ設け、その中で祭りを行うようにしたんだが……意外と好評だ。
どれだけ派手にやっても、迷宮の外から出れば何も残っていないんだから衛生的にも充分な配慮が整っている。
──後片付けも、迷宮の還元機能を使えばすぐにできるわけだし。
「今回は鬼の役を増やした! 前回よりも景品の数を増やしたし、思う存分楽しめるような環境にしてある!」
眷属に予め交渉し、鬼役をやってもらえるように頼んでおいた。
身体能力に縛りを設けてはいるが、スキル的にはいっさいの制限を掛けていないので、鬼として異常な強さを誇るだろう。
「じゃあ、始めるとしよう──豆撒き大会の幕開けだ!」
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しかし、なぜだろう……新ルールが用意されてしまった。
≪では、メルス様に命中された方には、特別ボーナスが用意されていることです! これは眷属の皆さまにも当て嵌まります──どんどん当ててください!≫
その言葉に、眷属も反応してしまった。
一昨年はアーチさんと死闘を繰り広げたのだが、それはあくまで個人との闘いであって集団戦闘ではない。
「ちょ、おま、えら、や、めて、くれ!」
『……無理!』
「ひ、ひぃいいいっ!」
超高速で飛んでくる豆。
建物を貫通してくるそれらを、未来眼で観測したうえで反射眼によって回避していく。
それでも避けられない不可視の豆は、次元魔法の使用で阻む。
今回、俺は魔力にのみ縛りが掛けられているので体力切れの心配はない。
しかしその分、容赦なく投擲されてくる豆の回避が要求される。
「な、なんとしても生き残ったやるからな。そしたらお前ら、絶対罰ゲームだぞ!」
『…………』
「ちょ、やめ──アーッ!」
それでも、どうにか足掻き続けた俺。
その結果は──あえて語らないでおこう。