偽善者とハロウィーン 2021
毎年恒例です
ハロウィーン。
前回はカーニバルみたいな山車で、かなり盛り上がった記憶がある。
……上手いこと出し物と山車物を掛けたつもりだったのだが、生憎不評だったし。
ともあれ、仮装コンテストもそんな山車物も今年はやるとのこと。
そのうえで、何か新しいものは無いかと唸りながら頭を捻る今日この頃。
お菓子を配るのは眷属やVIPに任せるとして、それと同じくらい盛り上がるもの。
凡人が地球のにわか知識を引っ張ってきても、大して意味が無いことが分かる。
「イベント性……は、止めておこうか。オンラインゲームじゃないんだから、処理に一苦労するだろうし」
スタッフを雇い入れるつもりではあるが、今なお民が増える世界には足りないはず。
そうなると、やはり何らかの形で眷属に頼むのが一番かもしれない。
「まあ、可能な限り眷属には参加者側として楽しんでもらいたいけど。率先して手伝ってくれるなら、それを断るのは無しか」
参加を強要するのもアレだし、したくないなら裏方を少し任せてみよう。
……手伝いそのものに、報酬は付けないことを言明しておかなければ。
◆ □ ◆ □ ◆
そんなこんなで始まったハロウィーン。
年を経るごとに、だんだんと向上していくコスプレのクオリティ。
やはり国民も、自分ではない何者かになるというのは盛り上がるのだろうか?
実際に多種族が居て、割と簡単になれるのがいいのかもしれない。
「──一時的に別種族になれるメタモルポーション、気になる方はお一ついかが?」
俺も店子という仮装(?)をして、ただひたすら薬を売り捌いていた。
因子注入スキルと変身魔法によって、比較的容易に作れるポーションである。
なお、水に因子を入れて魔法を掛けるだけの簡易な代物なので、効果は非常に短い。
それでも祭りの間だけもたせる、ぐらいならば副作用が残ることも無いのだ。
「獣人各種はもちろんのこと、森人や山人、天使に悪魔……今日だけはどんな種族にもなれるぞ! さぁ、ぜひともお試しあれ!」
因子だけは豊富に揃えてあるので、見た目だけの再現のポーションを並べてある。
吸血鬼の姿になっても、日に弱くなるわけでも夜に強くなるわけでもない感じだな。
「お一つくださいなっ!」
「毎度……って、アイリスか。もう天人なんだからそのままで良くないか?」
「分かってないなー、メルスは。翼萌えーな時代はもう終わったんだよ。ケモ耳エンジェル、この言葉に聞き覚えは?」
「…………いや、物理的になってもそこまで効果はぁああ!?」
会話の最中だったが、獣人になれるメタモルポーションを飲み干したアイリス。
すると、魔法の効果がすぐに作用し、彼女の頭頂部と臀部辺りから獣の特徴が発現。
選んだのは兎バージョン。
長い耳が俺の叫びに驚いたのか、ピーンと張った姿にさらに萌える。
「うーん、本当に聴覚が鋭くなったりはしないんだね。でも、いきなり脅かさないでよ」
「…………うさ耳天使、マジ最高」
「ふっ、限定スチルの回収成功だね」
その後、アイリスを探しに来たフィレルが俺と似た反応をしたりするのだが……それはまた別のお話。
ネタポーションですが、いずれは本編でも(?)




