偽善者とこどもの日 2021
な、なんとか仕上がりました
こどもの日。
今回のテーマは──鯉幟だ。
こいのぼりと言えば、やはり魚の鯉を模した物を高く掲げるイメージだが……初期の物は違っていたらしい。
本来は男の子が生まれたことを示すべく、幟を上げていた日本。
しかし庶民には難しかったので、登竜門的な意味のある鯉がどうとか……。
まあ、そんなこんなの派生から、こいのぼりになったらしい。
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第一世界 イベント会場
俺はイベントごとに使う舞台に、多くの子供たちを集めていた。
そして、俺の隣に居る彼らと同じくらい背の低い少女に手を向けて告げる。
「──というわけで、今回はリンカお姉さんの力をお借りしました。みんな、お礼を言ってね」
『ありがとう、リンカお姉ちゃん!』
「……不謝」
「お礼は要らないだって。でも、みんなが感謝していることには変わりはないからな」
リンカは輪廻の概念が妖怪化した存在。
そのため、ストックした魂魄からさまざまな妖怪を生み出すことができる。
そして、俺は新種族を生み出すことができる……その組み合わせで、子供たちが怖がらない感じの妖怪を用意してもらった。
「この『弐式鯉』君たちは、君たちを空の旅に案内してくれるよ。この日のためだけに用意した場所もあるから、ぜひとも楽しんでほしいな」
「……希望」
許可が出て、子供たちはそれぞれ用意された鯉に跨っていく。
事前に大人たちにテストさせたので、運搬性に関しても問題はない。
そんなこんなで、子供たちは青い空という水を鯉と共に泳いでいく。
楽しそうにしている子供たちを見ながら、俺はリンカに話しかける。
「改めてありがとうな……正直、俺一人だとそろそろネタが尽きそうだった。その点、和風のネタならリンカに手伝ってもらえるようになったんだ。本当にありがとう!」
「! ふ、不要!」
近づこうと思ったら、突然眼前に壁が現れて阻まれる……ぬりかべかな?
普段の戦闘スタイルとは違うのだが、反射的になると妖怪が生まれるんだよな。
「おっと、悪い悪い。まあでも、さっき子供たちが言っていたのは本当だからな。それは分かっているんだよな?」
「……肯定」
リンカも少女の姿を得てから、それなりに時間が経過していた。
負の概念の塊だった感性も、ピュアな子供たちと共に過ごすことで変化している。
「この世界は閉じているからな。どれだけ増やしても、その根幹は変わらない。それを意識させないためにも、これからもこの世界が楽しいって伝え続けないといけないんだ」
「…………意外」
「ん? 真面目なのは、基本的に任せているからな。俺はバカみたいに振る舞って、それが笑えればいいんだ。実際、俺はバカなんだから仕方ないさ」
「…………否定」
リンカが何を否定したのか、この後沈黙する彼女の口からは明かされない。
空を仰ぎ見て、ただ俺たちは子供たちを見守るだけだった。




