偽善者とエイプリルフール 2021
嘘回(?)です
──その日、世界は終わりを……迎えようとしたので、今回もどうにかしました。
「……で、またか?」
エイプリルフール、それは大衆において合法的に許される日。
時代の変化に合わせて、その規模や意味合いが変わっていたりする。
そんな時を経ることによる変化の悪い部分が、眷属たちを蝕んでいた。
具体的には、毎年止めないととんでもないことをしでかそうとするのだ。
「前は未来だったから、今回は自分たちの過去に関する事……お前ら全員、バッドエンドだったんだから止めとけよ」
神に反して封印、危険物として追放、自分のせいで民が苦しみ、死の因果が延々と続いていく……はっきり言おう、そういう性癖が無ければ性根が歪む!
「……なら今? それって嘘にならないし、嘘にしないから……いや何その反応、当たり前のことを言ったんだけども」
救われた後、救った時のことをやろうとしてみたいだが……それって嘘じゃないし。
盛ろうとしたみたいだが、後のことなら俺が本当にするのだから嘘にならない。
なんてことを言うと、彼女たちは物凄く気恥ずかしそうな顔を浮かべる。
恥ずかしがるような出会いだったか? そう思っても、心当たりはさっぱりだ。
「初心に還ってくれ。エイプリルフールの嘘は、今だと楽しい嘘を吐くものなんだ。お前らの終末論とか、バッドエンドを見て誰が楽しめるんだよ……こう、あったらいいな、みたいな感じでやってみればいいんだよ」
面白い、いわゆるジョークのような嘘。
ただ迫力のある嘘ではなく、吐く者も付かれる者も楽しめるような嘘の方が、こういうイベントの時は好まれるはずだ。
「──というわけで、まあ簡単なドッキリを用意してみました。シー、頼む!」
「う、うん──“種族変更”!」
事前の協力者であるシーに合図を送り、魔法を発動してもらう。
対象は眷属たち……その変化は、すぐに彼女たちも知ることになる。
「ケモ耳、エルフ耳、ドワーフボディ、精霊ボディ……まあ、何でもござれだな。こういうジミーな感じでいいんだよ、この日の嘘ってのは」
最初は驚いていたようだが、すぐにそれも慣れる。
獣人になった眷属は、鋭すぎる五感に若干戸惑っているようだが。
そこは元獣人の眷属がカバーし、感覚への慣れ方を教えている。
うんうん、なんとも微笑ましい光景だ……しかしまあ、なぜかジト目を喰らっていた。
「シーさんや、どうしてこっちに?」
「ごめんね、メルス君。みんながやれって言うから──“種族変更”!」
『──!』
俺が変身させられたのは、人型ではなく魔物……しかもスライム。
転生していないんですけど……そんな主張も、今の体では届かないのだった。
この後、転生していないスライムが無双したとか夢想したとか……




