偽善者とひな祭り 2021
※ひな祭り? と思う方も、どうか温かい目で見守ってください
ひな祭り(以下割愛)。
前回、ひな祭りを婚活に使ったことで少々クレームが入った……いや、ちゃんと成果もあったからこそなんだが。
自由世界で人攫い……じゃなくて、奴隷解放運動をしている俺なので、どんどん人が増えていくし、希望者に行っている転生も行われるので少子高齢化の心配もない。
要は自分たちもやりたかった、似たようなイベントは無いかというクレームだ。
……いかに偽善者な俺とて、結婚をどうにかしてください、というのは困った。
そこで原点に戻り、ひな祭りとは何のために行われるのかを洗ってみる。
祈念者にそれらを任せたところ、それらしい一番最初は禊のようなものだったらしい。
□ ◆ □ ◆ □
第四世界 イベント迷宮
集められた若人たちは、俺の静かな雰囲気に戸惑っている。
前回同様、迷宮の中に集められた人々に向けて俺は言い放った。
「ええ。皆さまが婚活を求めていたことは理解しております。しかし、今回はそういったイベントはしません」
『えぇ~~~!』
「気持ちは分かっています。しかし、思い返してください。本来このイベントは、子供たちに関するもの。古来、ひな祭りとは死を迎えてしまう子供たちへの禊のため、行われてきたものなのです!」
『…………』
テンションはだだ下がり。
まあそうだ、子孫繁栄のために頑張ろうとしているというのに、いきなり『死』なんてワードを出したわけだし。
「まあとはいえ、だから今回はお葬式風のひな祭りにしたいわけじゃありませんのでご安心を。外で子供たちが楽しんでいるように、ひな祭り自体は楽しみますよ」
なんというか、じゃあ何なんだよ……みたいな感じの視線が向けられてくる。
予想していたことだ、彼らの【希望】を圧し折ろうとしているのだから。
「──さて、ここからが本題です」
『っ……!』
「皆さまが求めているのは、新たな出会い。ええ、否定する方もおいででしょう。しかしながら、この場に居る時点でそれを否定することはできません!」
少なくとも、こちらに来ているのだからそれは間違いない。
恥ずかしそうにしている草食系な男女、ならどうしてここに来ているんだよ。
「というわけで、今回は人生相談のような時間としました! なぜか、なんて無駄な質問は要らないでしょう! 何人か呼んでおいた先達の人々が、君たちを明るい未来に導いてくれるでしょう!」
ある程度自由にはなったが、貴族やら村人やら階級制度が少し残っている。
たとえそれが失われようと、そう簡単に価値観というモノは変わらないだろう。
招いたのは無数の既婚者。
事前に事情を説明して、若人たちに助言してもらうために呼んだのだ。
「相談会を終えた後は、いちおうパーティーが開かれる予定だから、そちらに参加してもらっても構わない……学んだことを生かすのも、また一興じゃないか?」
まあ、そんなこんなでひな祭りに若人たちは学んでいった。
そのうちホワイトデーもあるし、ぜひとも頑張ってもらいたいよ。




