偽善者とバレンタイン 2021
ガールズサイド(?)な話となります
バレンタイン
改めて考えてみると、それは男だけでなく女にとっても戦いの時なのだろう。
男がただ数と質(欲しいヤツのかどうか)で争う中、女もまた競っているのだから。
──無論、それは質限定。
バレンタインは主に与える側の彼女たち、男と違って圧倒的優位な立ち位置に居る。
与えるという権利を有し、そのうえで与えたい人物に渡せるかどうか……戦いだ。
有象無象に配る感じで、意中の相手に渡すも良し。
こっそりと間接的に渡すのも、真っ向から渡すという手段もある。
──まあ、いずれにせよ渡さないと意味が無いわけだな。
◆ □ ◆ □ ◆
始まりの街 クランハウス エニアグラム
メルの姿をして、エプロンを着込む俺。
小さな拳を高く掲げ、周囲の者たちに宣誓する。
「それじゃあ、お菓子作りを始めよう!」
『…………』
「あの、師匠……いろいろとツッコミたいんだけど、まず一つ。どうして師匠、こっち側で参加しているの?」
「ふっふっふ、それは今年のバレンタインイベントが、主に男に貢がせるイベントだったからだよ! わざわざそっち側にならなくても、自分でやれるんだからこっちをやるに決まっているじゃん!」
分かりやすく言うと、そんな感じだ。
男だけがドロップするチョコを、女が加工してそれを渡す。
なんというか、リア充しか得をしないようなイベントである。
まあ、自由民に依頼して作ってもらうこともできるので、なんとかなるだろう。
基本的にこのイベント、現実の会社とコラボしている感じなので、昔からプレイしている連中は新規のアイテムが出たらその分を交換するだけでいいので、だいぶ楽だ。
ただまあ、今回はそういう感じなので……作るだけでいい女側で参加していた。
あっ、チョコは普通に売っているから、女側も貰えないという心配はないぞ!
「たしか、チョコはなんだか独自の判定で品質が決まるんだよね? うん、みんなで誰が一番美味しいチョコを作れるか……やってみない?」
「師匠って、いっつも生産神の加護があるって自慢しているよね?」
「あー、自信が無いんだー。今回は特別、どの神様の加護も使わないよ。正々堂々、私の力で勝負してあげるから」
「──いいわ、乗ってあげるわよ。どんな勝負でもまず一勝、あんたを負かせてやるわ」
俺の挑発に乗るのは、やはり彼女。
ツンデレ……というか、ツンドラの敵意を放つツインテールガール。
そんなこんなで、俺たちはチョコづくりを始めるのだった。
かといって、ボーイズサイドがあるわけでもありませんが
ホワイトデーはどういう話にしましょう?




