偽善者と節分 2021
3日が2日になったということで……間を取って正午に更新です
※訳:0時更新、間に合いませんでした
節分。
基本的に行われるのは春分である2月3日なのだが、地球の公転周期による日数の僅かなズレで一日早まることがある。
俺の知っている限り、一度として2日に豆まきをしたことはない。
とても稀有なイベントであり、ただ一日早いだけということでもある。
日付に依存するわけではないからこそ、取り上げられるほど話題になる節分。
……果たして、大人になってからも豆を撒いている大人がどれだけいるのやら。
◆ □ ◆ □ ◆
なんてことを思うが、俺たちは俺たちで節分を楽しみます。
まあ、俺の世界に季節の節目はさほど関係ないんだけども。
春夏秋冬、それらを固定した迷宮なども配置しているからな。
節分を行う意味合いが、豆まきの方に比重が傾いていますよ。
「鬼も福も、何でも来いやー!」
『ウォオオオオオ!』
「バカの一つ覚えみたいに叫びやがって! ほら、この福豆を食べやがれ!」
誰に需要があるのか分からない罵倒を、しろと事前に言われていての言動だ。
……他意は無いんです、言われたからやっているだけなんです。
「その豆には、俺が籠めた魔法が施されている! 食べれば一日幸運に、そして投げれば当てたヤツを外に追い出せるぞ! 嗚呼、それはお前らも対象だからな! しっかりと受け取らないとお前らも飛ばされるぞ!」
国民には悪いが、魔物も人族も関係なく豆に当たると追い出される。
元は魔物だけを吹き飛ばす仕様だったんだが……改造して、そういう仕様にした。
「育てても育たないからな! さぁ、拾えや食べろや楽しめや!」
『掃除はメルス様の眷属たちで行います。なので皆さん、思う存分メルス様に当ててみてください。景品は──』
「あ、あれ……?」
たしかに俺は、アンに掃除のことを言っておいてくれと言った。
だが、景品の話や俺を当てることなどは聞いていなかったのにな……。
ちなみに景品は定番の武器や魔道具、食糧の他に俺の世界の通貨みたいなポイント、あと珍しい物だと、俺の一日を眷属のように見る権利らしい。
絶対要らないだろ、と言いたいが……この世界には信者がいるからな。
信仰……もとい妄信者たちが、盛り上がっているのが隠れていても聞き取れた。
『なお、メルス様が隠れている場所は、随時マップに表示されます。前回のようなミスは致しませんのでご安心ください』
「チッ、マジか……」
『居たぞ、こっちに──メルス様は内!』
「そんな言葉聞いたことねぇよ!?」
飛んできた豆を回避し、上空へジャンプ。
隠れていても分かるなら、豆が当たらない場所へ逃げるしかない。
畜生、絶対に生き延びてやる!




