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偽善者とこぼれ話 番外月  作者: 山田 武


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20/72

偽善者とこどもの日 2020

誰得? な入浴回となります



 こどもの日。

 今回は──菖蒲の湯についでだ。


 古代中国において、邪気を祓うために菖蒲が使われていた。

 香りが邪気を祓うとのことで……この世界でも、似たような効果を持っている。


 さて、そんな菖蒲の葉を、鎌倉時代から江戸時代位に端午の節句に使っていた。

 名前が『ショウブ』なので、勝負やら尚武という言葉に掛けていたらしい。


 当時の武家社会からすれば、そういう言葉は男の子が逞しく成長することを祈る意味も持ち合わせていたのだろう……今では湯につけて利用している。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 第一世界 イベント会場


「とは言っても……子供たちは全然こういう湯には漬からないよな」


「まったくですな」


「だから遊べるようにしたんだが……こっちががら空きになっちゃったよ」


「ははっ、騒がしい湯というのもたまには良いのではないですか?」


 こどもの日だというのに、この場所には成人済みの男性ばかりが集まっていた。

 少し離れた場所にはレジャー施設のような設備が整っており、そこに子供たちが居る。


 一方、俺が居る場所は戦闘……じゃなく、銭湯に特化した場所だ。

 電気風呂、サウナ、水風呂……あんまり多くは無いが、それなりに広さはある。


 今回のためだけに用意したのだが、やはり有料にしたのが悪かったのだろうか?

 まあでも、実際に客は来ているわけで……こどもの日は他にもできることが多いしな。


「菖蒲の葉も配布しちゃっているし、わざわざここに来る必要もないわけだし。家で湯に漬かる方がいいのか」


「いえいえ、メルス様。子供たちも喜んでおられるではないですか。こうして皆で共に湯へ入り、経験を共有する……それはとても喜ばしいことですよ」


「そういうものかねぇ……」


「メルス様も子を持てば、分かることでしょう。ただ見ている、それだけで得られる幸せもあるということに」


 妻子持ちだった隣の客が、そんなことを言い出す。

 俺にはミントが居るのだが……今はこの場に居ないから、そう思えないだけかな?


「息抜きも必要なのでは? メルス様が用意してくださったこの湯は、心を落ち着かせてくれます」


「そういう効果もあるからな……リラックス作用に血行促進、肩凝りや腰痛の予防なんかにも効くときた。そこに加えて、破邪もあるわけだな。湯に漬かって子供の健康を祈るのも、こどもの日の目的になっているぞ」


「そうでしたか……では、子供の健康を祈って──乾杯!」


『乾杯!』


 周囲で話を聞いていた者たちも、その手にしていた銚子に入れたお酒──『菖蒲酒』を掲げて盛り上がる。


 一番子供たちがここに居ない理由は……酒臭いから、だったな。



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