偽善者とひなまつり 2020
3月3日はひなまつり!
ただし、今回はちょっと子供たちとは別のお話を
ひな祭りとは何なのか。
それを問うた結果、第一世界では子煩悩たちによる『うちの娘1グランプリ』が開催されることになった。
去年は子供たちで『ひなあられ』を作り、親にプレゼントしている。
その結果、親……というか子煩悩たちが悶え、うるさいと怒られる日になった。
──では、今年は何をするのか。
◆ □ ◆ □ ◆
第四世界 イベント迷宮
「──さぁ、野郎ども! そして、女性の皆さん! ようこそ、我が迷宮へ!」
とても煌びやかに飾られたその迷宮には、まだかまだかと唸る男女が集っている。
彼らに深い仲などあまり存在しない、しかし共通の目的が存在していた。
「ここ、ひな祭り限定迷宮では特殊なアイテムがドロップされる! より奥に居る個体ほどそれを落とし、必ず君たちが欲する品になると約束しよう!」
『ウォオオオオオ!』
「男には実利を、女には恩恵を! さぁ、進め若人よ! すべてを片付けねば、破滅の未来が待ち受けると思え!」
『キャァアアアアア!』
迷宮を起こし、魔物たちを動かす。
和服を着た男女は手にした楽器や武器を使い、彼らを襲い始める。
しかし、当然黙ってやられるようでは、この第四世界でやっていけない。
探索者たちは迷宮で得てきた武器を使い、反撃を行い始める。
……時折見たことのある武器が目に映るのは、きっとレンに頼まれて作ったロマン武器が混ざっているからだろう。
「──メルス。これっていったい……」
「見た通り、リアルひな人形VS探索者」
「じゃねぇよ! というか、どうしてこんなに人が集まるんだよ……」
ツッコミ兼現代人であるカナタは、彼らの心情を計り知れていないようだ。
俺はやれやれと肩を竦め、懇切丁寧に説明していく。
「すべては……俺が原因だった」
「ああ、それは分かる」
「……。ひなまつりは女の子のイベント、カナタも前にお雛様の恰好をしたからそれは理解しているだろう?」
「コアが無理やり着させたからな。つぅか、お前があれを用意したって聞いてるんだからな。おい、こっちを見ろ!」
コアさんめ……そこは裏取引なんだから内緒にしておいてくれって言ったのに。
くっ、やっぱりコアさんへのサプライズに協力したのが不味かったか。
「こ、コホンッ! ともかく、ひな祭りが本来誰を祝うモノか……そしてこれまで、誰を対象に行っていたのか分かるだろう?」
「…………ああ、そういうことかよ」
「正解。無いモノを欲し、彼らは今日ここに集まった。本能だよな……ぜひとも、戦い抜いて頑張ってほしい」
それすなわち──子供。
正確にはその過程、結婚やモテなどを彼らは求めてここに集まった。
迷宮にはお内裏様やお雛様、五人囃子やその他のひな祭り関連の魔物や食べ物型のオブジェクトが配置されている。
それらからメダルを集め、今日限定の交換システムでアイテムを手に入れれば……モテること間違いなし。
有識者に協力してもらったプラン、またはそのまんまハーレムを体験させる予定だ。
純愛を望むか淫欲を満たすか……夜のひな祭りは、ひっそりと幕を開ける。




