偽善者とバレンタイン 2020
バレンタイン
リア充たちの集い、勝者……そして商社だけが利益を得る、とある偉人の誕生日。
AFOにおいても、その文化は伝わっており……運営がイベントを行っている。
祈念者、自由民問わず楽しめるようになっている……曰く、帝国も運営神の指示で参加しているんだとか。
このイベントも毎年行われ、祈念者たちも多く参加している。
たとえ非リアであろうとも、いちおうの利益が存在しているのだから。
運営がチョコをドロップさせることで、祈念者だけでなく自由民も喜べる。
完成品のチョコがドロップするのだ、子供たちも挙って狩りをしているぞ。
──さて、今年もそんなバレンタインのイベントが幕を開く。
狩りは狩りでも、リア充狩り……ふふっ、盛り上がるな。
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アニワス戦場跡 死者の都
祈念者が誰も近づかない瘴気に満ちた都。
そこの主であるアイドロプラズム、通称アイの居る礼拝堂を訪れる。
喪服のようなドレスを纏った、少女の姿をした『超越種』。
彼女に近づいた俺は……バレンタインらしいアイテムを手渡す。
「ハッピーバレンタイン! アイちゃんにプレゼントを持ってきたよ!」
「メルちゃん……嬉しいです!」
「喜んでくれると私も嬉しいよ!」
ちなみに、チョコは手作りである。
材料のチョコは、この世界をゲームだと割り切って犯罪行為を勤しむ輩から奪い取ってきた代物です。
「ところでメルちゃん……その、どうしてここに来てくれたのですか? メルちゃんたちの世界では、『ばれんたいん』という日にお祝いをするのは知っていますが……」
「うん、バレンタインは女の子が好きだって思いを伝える日。好きにもいろんな好きがあるし……アイちゃんへの好きって思いをチョコとして届けに来たんだ」
「そうなのですね……では、私の何か用意した方がよいのでしょうか?」
「えっと、ならいっしょに作らない? アイちゃんの手作りチョコなら、きっとみんなも喜んでくれるよ」
美少女のチョコというのは、それだけで価値と需要が生まれるものだ。
俺も見た目だけは美少女だし、アイも人々の需要に合わせて目見麗しい姿である。
「そう……でしょうか?」
「うん、間違いないよ! 私もアイちゃんのチョコが貰えるなら、絶対に欲しいもん!」
「……分かりました。メルちゃん、よければ私に作り方を教えてくれないでしょうか?」
「うん! アイちゃん、あとでチョコの交換とかしようね?」
この後、アイのお菓子作りを手伝い都の住民たちに配ったりした。
……メシマズということもなく、むしろ昇天しかける輩が多かったということだけ、予め記しておこう。




