偽善者とクリスマス 2019
メリークリスマス!
クリスマス。
嗚呼、思い返すは現実での日々。
外に出ることを怯え、それでも勇気を振り絞り……後悔したあの頃。
リア充たちは意味もなく外を彷徨い、自分たちの愛について語り合う。
それだけでもSAN値チェックが入るというのに……奴らはさらに仕掛けてくる。
そして、俺たちは──
◆ □ ◆ □ ◆
「魔導解放──“移りゆく天なる意気”!」
魔法で雪を降らすこともできたが、ここは世界そのものに雪を強要する。
魔導は一度発動してしまえば、俺が望むままに雪を降らす……その方が都合がいいし。
「さぁ、この祭りを楽しもうじゃないか!」
『わぁあああああ!』
去年のようにイルミネーションが光り輝く街の中、特設ステージで俺は叫ぶ。
サンタ風の恰好……は前回やったので、今回はトナカイ風の衣装に身を包んでいる。
「前回はプレゼントをブリッドの上から配る仕事だったけど……今回は、別のやり方で楽しもうと思います」
「わーい、パパといっしょだー!」
「俺とミント、二人でプレゼントを選ぶんだぞ。誰が一番いいプレゼントを見つけられるのか、今回はそういうコンテストだからな」
「はーい!」
予め用意しておいたアイテムが、クリスマス用にデコレートされた街のどこかに無数に隠されている。
子供たちは大人と協力し、プレゼントを見つけて会場に持っていくのだ。
まあ、外身はカプセルで中に紙が入っている……あとはそれを開けるだけ。
「要するに抽選なんだけどな。ちなみに、眷属が喜びそうなアイテムもこっそり混ぜているから楽しみにな」
「えー、どんなのか教えてー」
「ふっふっふ、ダメだぞ。こういうものは開示しないで、ちゃんと後のお楽しみにするのが定番なんだ」
危ない危ない、ミントの純真な目を見ているとつい話しそうになってしまう。
もちろん武具などではなく、子供たちが手に入れても困らないアイテムだぞ。
「パパのけちんぼ」
「うぐっ……と、とにかくだぞ、大人の中には協力者がいて、隠している場所を教えてくれるゲームをやったりするんだぞ」
「それは面白そう! パパ、パパ。早く行ってみようよ!」
「分かったよ。じゃあ、いろんな場所でプレゼントを探してみようか」
この後、ミントといっしょに街を巡ることになるのだが……眷属たちと遭遇し、いろいろと揉めるのだが──それはまあ、別の機会になるだろう。
「パパ、メリークリスマスだね!」
「おっと、忘れてた──メリークリスマス」
国民のみんなが楽しんでくれている。
そうだ、俺のような不幸せ者が生まれない国であろうと励ませてもらおうか。




