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第三話 ウワサは一人で歩いていく?


「ののたん、どしたの?」


「ウワサを聞きたいなぁ、なんて」


「ののたんも光琉に告られちゃった?」


「告白はされてないけれど、されかけたのかな? それがウワサの真相?」


 放課後になったので、星空が言いかけた瀬木谷くんのウワサを聞くために、新聞部のさくらちゃんに真相を聞いてみた。告白がウワサにどうつながるというのだろうか。


「えと、光琉はね、彼氏がいなさそうな女子に告りまくって、それでその子がフリーかどうかを調べてるってウワサなんだよね。いないかどうかなんて、反応とかで分かりそうなものだけど、ののたんも調べられそうになったんだ? や、これ自体は悪いわけじゃないんだけど、彼自身が彼女を求めているわけじゃないみたいなんだよね。だから、詳しくは分かってないの」


「告白しまくりがウワサ? それだけ聞けば、確かに悪い人には思えないけれど。彼女が欲しいわけじゃないとかって、どういう意味なんだろう」


 よくウワサって最初の出どころから、段々とありもしないことにひとり歩きしていくって聞くけど、彼もそんな感じで言われているのだろうか。見た感じは悪そうな人には見えなかったけれど、気にすることでもないのかもしれない。


 星空セナの言った通り、そこまで悪そうなウワサでもなかった。だけど、脈なしで告白をされたら傷つくし、恋とかをしたいって気にはならないはず。どうしてそんなことをしているのか、それだけは気になった。


「野々花、どうだった? 大したウワサでも無かったでしょ? 本人に聞いてみないと分からないけどさ、ウワサなんて結局のところは、告られただけで何も無かった女子たちが流してるだけかもね。野々花は未遂に終わってるし、そんな気にすることでもないっしょ」


「うん、何でそんなことをしてるのかなってくらいは気になるけれど、瀬木谷くんのことよく知らないし。わたしが気にしてもどうしようもないよ」


「だよね。もっとも、野々花に告白したところで何にも得られないわけだし。聞く女子ミスったんじゃない?」


「そうだよね。フリーはフリーだけど、何にも変わらないし。傷つきもしないから、そういう意味じゃごめんって感じかな」


 もし、ちょっとでも瀬木谷くんのことを知っていて、恋の意識でも感じていたとしたら、単に人の気持ちも知らずに聞かれただけってなって、心が傷つくかもしれない。でも、わたしはまだ、そんなことにはなっていないから、それだけは良かった気がした。


 恋をすること、それはどんな想いを抱くのだろうか。わたしもいつかは、小学生の時に微かながらに感じた憧れを、誰かに抱いて恋を感じていくことになるのかな。どうすればそんな気持ちが芽生えるんだろう。


「野々花、帰ろ?」


「裕翔は――や、何でもない。帰ろう、星空」


 身近な星空の彼氏でもある裕翔ですら、今は別れるかどうかの関係になっているみたいだし、友達がそんな風になっているのに、わたしが恋をするだなんてそれは何だか違うような気がした。


「野々花は気にしなくていいからね?」


「え?」


「気を遣われてるの、すぐ分かるし。野々花が誰かのことが気になって、そこから恋していくんならウチは応援するし。裕翔とか、それは気にしなくていいからね」


「うん、ありがと」


 友達が彼氏と疎遠になっていて、別れそうになっている。何だかそれを見ているだけで、自分もそうなってしまうのが怖いとさえ思えた。そうなるくらいなら、初めから恋を知るとか必要じゃないかもしれないとさえ、勝手に思っていたけれど、知らないままで思い込んでしまうのもわたしの悪い癖なのかもしれない。


「ほら、お兄ちゃん来てるよ? イケメンなのに惜しいなぁ。彼女さんとかいないのかな?」


「え、どうだろ。そんなの気にしたことないけれど」


 わたしのお兄ちゃんは大学生。結局のところ、かなりわたしに対して過保護の域を超えている。いつも通学路の途中から迎えに来てくれているし、朝だって途中まで送ってくれる。これって、わたしにもお兄ちゃんにもいいことなのだろうか。


「野々花~!」

「うん」


「野々花のお兄さん。こんにちは。いきなりなんですけど、彼女いないんですか?」


「俺? いや、俺は野々花が心配だから、それは無理っていうかね」


「それ、世間ではシスコンって言いますけど、野々花の為にしてるっていうなら、いい加減離れた方がいいのかなって思うんですよね。野々花だって、彼氏欲しいと思うし」


「そ、そうなの? 野々花、好きな奴出来たのか?」


「えと、好きな人はいないけど、気になってる人ならいるような、いないような? あ、あのね、いつも送り迎えは嬉しいの。だけれど、わたし変わりたい。だからお兄ちゃんも、一緒に変わっていけたらわたしも安心出来る気がするの。駄目、かな?」


 いつも当たり前のように送迎してくれているお兄ちゃん。これは単に、兄と妹の二人兄妹の絆ってだけかと思っていたけれど、時々は心配になっていた。星空が言ってくれなかったら、お兄ちゃんも気づけなかったんじゃないのかな。変わりたいって思っているのは事実だし、まずはわたしから変わらなければ。


「そ、そっか。俺、シスコンだったのか。土岐ときちゃん、ありがとな。俺も変わることにするよ。彼女はいたことはいたけど、野々花が心配過ぎて……まぁ、そんな感じ」


「あ、そうなんですね。お兄さんならまたすぐに出来ますよ。それよりも、野々花の面倒見てあげるのってどうなんですか? 野々花も大概、お兄さん離れ出来てないので。だったら、大学の誰か知ってる人紹介とかも良さそうですけど」


「せ、星空。そんな急に言われても……大学生だと、みんなお兄ちゃんに見えそうだし。相手にされなさそうだし」


 星空に言われて首を傾げていたお兄ちゃん。それでも、誰か心当たりでもいたのか、小刻みにひとりで頷きながら、「先に戻るけど気を付けて帰って来いよ」なんて言い残して、どこかに行ってしまった。


「誰かいそうじゃん? 良かったね、野々花。お兄さんも」


「ん、うん。こういうのって誰かに言われないと気付かないものなんだね。何かありがと」


「いいよ、大したことしてないし。お兄さんも野々花も心配だったから。余計なお世話かもだけど、成功したっぽいし。期待しとけば?」


「あ、心当たりの?」


「そう、それ! もしかしなくても、知り合いが野々花のこと気になってる人いたかもしれないよ? だけど、お兄さんがガードしてたんじゃない? やっぱシスコンってことになるけど」


 星空に言われて気付く、わたしとお兄ちゃんの関係性。本当にたまたま、気になったことを聞いただけの星空のおかげで、急に動き出した感じがする。わたしも、お兄ちゃんも変わっていけるのかな。

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