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第一話 変わりたいって思うから


「野々花、一緒に行こうか? 高校からは共学になるんだろ? 3年のハンデって、ののかが考えてるよりも結構あると思う。俺一人だけと話していても、男子慣れするまでは大変だと思うし」


 大好きなお兄ちゃんは、小学校の時からずっと優しい。年の差の関係で一緒に通えたのは、小学校の時だけだった。だけれど、家にいればいつでも会えて話が出来て、仲はずっと良くて大学生となった今でもお兄ちゃんはわたしを守ってくれている。


「ううん、もう高校生だから。お兄ちゃん、わたし変わりたいの。そうじゃないと何も変わっていかない気がするし。でも、途中までついてきてくれたら嬉しいけど」


「だと思った。野々花が変わるのは俺が送ってからってことで、そろそろ出ようか」


 いつまでもお兄ちゃんに頼りたくなくて、強気なことを言ってみたけれど、やっぱり簡単じゃない。だけど、教室に入って何日も経てばきっと……そうして気づけば数か月は経ってた。


「なぁ、風岡かざおかってフリーなん? 特定の奴いないんなら……」


「フリーだけど、そんな気はないし。っていうか、星空セナが思いきり睨んできてるよ? 彼女大切にしたら? わたしは別に、裕翔ゆうとに構わってもらわなくても泣かないし」


「ホントか? 風岡って、人恋しいじゃん? 彼女がいても構ってやる俺って優しすぎる!」


「さっさと行きなよ。後で彼女に愚痴られるのは、わたしなんだしさ」


 学校に通うまでしばらくは、途中までお兄ちゃんに送ってもらっていたのは事実。それがいつの間にか、教室でもお兄ちゃんみたいな男子が何人か出来ていた。同じクラスの男子は中等部から彼女持ちが結構いたりして、そのまま上がってきたみたいだった。


 だからなのか女子に優しい奴が多くて、多いのはいいけれど、余計なおせっかい男子はわたしみたいな大人し系にちょっかい出しまくりだった。単にわたしがお兄ちゃん離れ出来ずに、ずっと窓から外を眺めていただけなのだけれど、切なさ全開の表情にツボったらしく、何故か彼女持ちの男子に同情されて仲良くなっていた。


 いつもわたしのことを気にかけてくる男子は、セナという綺麗すぎる彼女がいながら、わたしが飽きるまで話しかけるのが日課の裕翔だ。そんな感じで近づいて来られたせいで、わたしは自分の”恋”をどこかに置きっぱなしにしてしまったみたい。


 同じ学年の男子はいい意味で軽くあしらえる関係が出来上がっていた。散々お兄ちゃんには、「変わりたいから」などと何度も言ってきたのに、わたしの想いの色は未だにどの色にも染まることが出来ないでいる。


「野々花、うちの裕翔(ばか)がいつもごめんね。悪い奴じゃないけど、アレを見本にしたらいい恋なんて出来ないと思う。アレはともかくだけど、好きな人いないの?」


 裕翔の彼女のセナは、彼氏が迷惑をかけまくった女子に対して、必ず謝ってくるというとてもいい人だった。特にわたしは裕翔に何度も構われていたせいか、彼女のセナもいつの間にか友達になっていた。


「何か、恋を想うよりも馴れ馴れしく構われすぎて、好きって気持ちは何だったのかなって思ってて……わたし多分だけど、誰かを好きになったことないかも」


「え、そうなの? ウチも裕翔もまだ野々花のことあんまり知らない時に、いつも外を見ながら誰かを想ってた野々花のため息説は無さげなの?」


「そんな風に見られていたの!? や、あれはお兄ちゃんのことを思ってただけだからね?」


「お兄ちゃんって、途中からいつも迎えに来てるイケメンの?」


「イケメンかどうかはさておいても、お兄ちゃん、わたしのこと好きだから。わたしもずっとお兄ちゃん離れが出来なくて。だから多分それ」


 自分で言ってて恥ずかしいって思うのに、それでもわたしの中ではまだお兄ちゃんが一番のままで、その地位はなかなか崩れる気配を見せようとはしなかった。


「分かった! 野々花、年上がいいんだ? そりゃあ、裕翔みたいなガキにはときめかないわけだ」


「えと、ごめん?」


「謝るのは違うでしょ。好みとかタイプの問題だからね。裕翔いい奴だけど、野々花の彼氏ってタイプじゃないよね~……分かってないのはアイツだけ。兄貴ぶって野々花の面倒を見てるって自慢してるけど、逆だったわけか」


「弟なんていないけれど、裕翔はそんな感じで楽かな」


「実はさ、ずっとアイツと付き合ってると飽きるっていうかさ、一緒にいすぎても続かないから、別れの期間があってもいいかなって思ってたの。あいつフリーにして、野々花に試しでもいいから付き合ってもらおうかなって。でもガキだから無理っぽいね」


 だからわたしに「フリー?」なんて聞いてきたんだ。本気じゃないにしても、別れて友達と付き合わせようとか、彼も彼女もおかしい気がする。そういうのじゃなくて、何かこう、動悸が激しくなりそうなそんな男子がいたらいいのにって思う。


「わたしはまだそういうの、早いんじゃないかな」


「野々花は可愛いのに! 部活の先輩とか紹介しよっか?」


「んー、先輩だからどうなるものでもないと思うよ? でもいつかはそんな想いになれたらいいかな」


「いつかはって……マイペースすぎるよ、それ」


 何でかは分からないけれど、少なくとも同じ学年の男子にはそんな想いになることは無くて、ドキドキもしない。それってやっぱり、ずっとお兄ちゃんが近くにいたからなのだろうか。


 そんなこんなで、わたしは少し……ううん、かなり恋の方角へ進むには遠いみたいです。

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