4話その4
美里はいわゆるサポートなので、3人より下がった場所でスポットライトも当たらない。
チューニングやアンプのチェックをする。
「なんかやる?」
エリアがマイクで言う。
「はいっ!」
「じゃあ~か奈美んちょ」
「メイドさんのノンフィクションデイズ!」
ゴトコットンがイントロのスネアを始める。
44で音合わせに使っていた曲なので、美里はイタズラで前ノリにしたり後ノリにしたりしてみた。
ゴトコットンの口が
「コラ~」
と動いた。しかし、美里のノリに付いてくる。
「おぉ!わたしも~」
か奈美んちょがレスポールで暴れ始めた。こうなると、普通ボーカルは歌えない。しかし、エリアは平然とボーカルアレンジで合わせてくる。
もはや原曲がなくなって、フィニッシュする。
エリアが笑いながら言う。
「バイトの子?お転婆すぎ。うちのバンドに入らない?」
「考えとくわ」
「美里さん!考えるな感じろ!ですよ!」
美里はノンフィクションデイズを、か奈美んちょが選んだのが偶然ではないかもしれないと思った。
ライブは淡々と進行した。観客席を見ると44のファンが居る。向こうからは、美里の顔は見えない。着物でしたことのないアップヘアでは美里である事は判らない。
アンコールが終わって、お辞儀をしていると、スッと体が横に引っ張られた。自分が居た場所にライトが
ドンッ
と落ちた。
言葉を失って、引っ張られた方向を見たが誰も居ない。
ステージの袖奥に、山谷さんが見えるだけだった。




