4話その3
「じゃあ~バイトさん。制服を着てもらおうかな?」
美里は怪訝な顔をした。
「何それ」
「ちょとカワイイ系の服なんだけどぉ」
エリアは段ボール箱をテーブルの上に置いた。
出てきたのは、時代劇に出てくる将軍やお局の世話をする腰元の着物だった。
「ベースじゃなくて、ショートコントやるの?」
「ガチロックバンドです。やめる?」
「バイトだからやるよ。でもなんで腰元?」
「バンド名がフィメールサーバントバンドだから」
「お笑いグループにしか聞こえない。吉本でメジャーデビューすんの?」
「ガチロックバンドです!」
「とにかく着て、サウンドチェックしましょ」
見た目は仕立ての良い着物に見えるが、ストレッチ素材のワンピースだ。頭から被ると、本物の着物をきちんと着ているように見える。
「背中の帯の御太鼓のとこにスイッチ有るから、入れてみて」
美里は手探りでスイッチを入れた。
「あぁ涼しい。ファンがついてるんだ」
「それで、あとヘアメイクね。山谷さん入って」
エリアが階段下に呼び掛けると、デニムにマチバヤとプリントされたTシャツの女性が上がってきた。
首が太く、肩も張っているが、顔は美人だ。
「本日はマチバヤヘアメイクサービスをご用命頂きありがとうございます。これからライブパフォーマンス仕様ヘアメイクをさせて頂きます」
か奈美んちょが聞いた。
「それは汗が流れても落ちないってわけ?」
「ライブパフォーマンス仕様クレンジング及びシャンプー以外では、崩れる事もありません。タワシで擦っても落ちません」
「ほぼ装甲だね。弾丸も通さなかったり!」
「通しません」
「マジですか?」
「衝撃は吸収しないので、皮膚と骨は破壊されます。打撃には何の効果もないのでお気を付け下さい。では始めます」
山谷さんは速かった。メイクとヘアセットに10分かからなかった。
それもそのはず、スプレー缶の先に付いたノズルを調整して、エアブラシで絵を書くように仕上げて行く。正確で口紅も一切はみ出さない。
髪も透明なクリームで揉んだ後、櫛とヘアブラシで瞬く間にセットした。
髪留めは飾りで、無くても崩れない。
「プラスチックの桶程度の防御力は有ります。でも、何か飛んで来たら避けて下さいね。それから市販のあらゆる物では落とせませんから、黙って帰らないようにお願いします」
全員ヘアメイクを終えて、ステージに降りた。




