4話その2
トリニティブルーは3つの青い輪が、三角に重なったマークだけしか店頭に掲げていない。
電話を掛けると、
「3つの青い輪です」
と店員が言う。
それを言えないアメリカ人客が、トリニティブルーと便宜上言ったのが広まって通称になった。
美里は新宿が嫌いだ。
日本人より外国人の方が多い。まるで無国籍な街で、外国に居るような孤独感に襲われる。
1階がレストランバーで、地下がライブハウスになっている。1階の奥に楽屋が有り、別階段がステージ脇に繋がっている。ステージはクラブテラより若干広い。4人編成バンドにキーボード、さらに3人編成ブラスが乗れる。
厨房に入って行くと、顔馴染みの店員やコックが声を掛けてくる。必ずこう言う。
「お帰り。生きてたね!」
こう返す。
「ただいま。なんとかね」
よけいな事は言わない。観光客と買い物客に酔っ払い以外、新宿に居るのはみんな訳有りだ。生きてれば、それ以上はラッキーだ。
楽屋には、すでにメンバーが揃っていた。
3人とも同じ時期にユーチューブに動画を上げていて、知り合った。
エリアは、あらゆるジャンルのボーカルの完コピ。本名は有村絵里でアエリでは語呂が悪いのでエリアにした。
レスターか奈美んちょは、携帯から箱系面の有る物にデコレーションする動画を上げていた。バックに自作のギターサウンドBGMを流しながら。レスターはイングランドのサッカーチームの名前。か奈美んちょはバンドメイドのリードギターの名前をスマホで打つと誤変換で出てきたそうだ。本名は岡崎司。レスターシティでプレイする岡崎慎司と一字違いで、友達から1つ足りないね…じゃあレスターと呼ばれていた。
美里の誕生日にサプライズでギターケースにデコレーションした動画を上げている。
ゴトコットンはマキシマムザホルモンのドラムの追っかけをやっていた。ファン愛が過ぎて、同じドラムセットを購入し、5ヵ月間布で磨きながら眺めていた。そしてドラム教室に行く事を思いつき、ドラムのみの完コピ動画を上げるようになった。本名は後藤琴子。バンドでは叩かない事で有名だが、エリアが説得したんだろう。




