ーおまけ2の2
ーおまけ2の2
地下鉄から地下街に出て、階段を登る。
上にテレビ塔が見える。
左手にギターケース。
背中にバックパック。
中には、フェンダーMD20ミニデラックスのミニアンプとシールドなどなど…が入っている。
天気は良い。
でも寒い。
クリスマス明けの日曜日の朝8時。
誰もいない。
「まぁ。初心者は朝9時くらいから始めて、午前中に終わった方が良いね。人が居なくても始めて、セットリストが終わったら撤収って感じ」
常連さんがアドバイスしてくれた。
ギターとアンプをセットして、チューニングする。外は音が抜ける。
アンプのボリュームを上げる。
U2の約束の地のイントロを弾いてみる。
冬の空気に吸い込まれるようにピッキングされた音が拡がって行く。
あまりに良い感じなので、歌に入って行く。
THEエッジ最高っ…………
フイニッシュして顔を上げると、人が居た。
若い男の子が立っていた。
首が太くて、肩が張っている。丸っこい顔の丸っこい目が、美里を見つめている。
一瞬で恋に落ちた。
私は一生この人の傍にいるんだろうと思った。
見つめ合って10秒後に彼は我に返った。
「すまない」
そう言って拍手した。
美里はおじぎして、セットリストと歌詞のコピーを差し出した。
彼はザッと見て微笑んだ。
美里も照れ笑いした。
「美里です。今日初ライブです。よろしくお願いします」
彼は拍手した。
通行人も居ない。二人きりの間を冷たい風が抜けて行く。
「1曲目行きます!」
セットリストの5曲を、彼だけに歌った。
「アンコールをリクエストして良いですか?」
「どうぞ」
「セットリストにないんですけど。最初に歌ってた英語の歌をお願いできますか?U2の約束の地を」
「良いですよ」
美里は少し考えた。
「自分で日本語に訳したバージョンが有るんです。それを歌って良いですか?」
「それ聞きたいです」
彼の目が輝いた。
「行きます。まだ名前のない通りで…」
曲が終わった。
彼は拍手した後言った。
「そのストラトキャスターとミニアンプは、美里さんが選んだんですか?」
「楽器屋さんの店長に選んでもらいました」
「美里さんの曲に合ってますね。音色が。エフェクターを噛まさないで正解です。楽器が持ってる本来の一番良い音をしっかり引き出してる。その店長さんは本物を知ってます。楽器については、任せるべきです。
声も良い。歌が上手い人はたくさんいる。声が泣いてる人も少ないけどいる。美里さんは、それプラス華が有る。薄紅色の可憐な華がね。」
美里は少しポカーンとした。こんなに褒めてくれた人は居ない。




