ー第1話クラブテラ
ー第1話クラブテラ
メンバー四人がなんとか収まる狭いクラブテラのステージ。
美里はレスポールでリフを弾きながら観客を眺める。
ダイブやサーフで押し合いへし合いしている様は、実家の愛知県国府宮のはだか祭りを見るようだ。観客の上に乗って転がっているファンが居る。ヨーロッパのライブ映像を忠実に再現しているのだ。
批判は出来ない。
このギターリフも流行りのラインだ。
ファンもバントも永遠にヨーロッパを追い越す事はない。
4(ホォウ)フォウデイメンション。ファンは44と表記してホォウフォウと呼ぶ。このバントの名前で、美里はリードギターでリーダーだ。ユーチュブで見て誘ったボーカルのリリアと、その友達のベースとドラム。
インディーズで5年、メジャーデビューか解散の分岐点に直面している。
正直。新しい事にチャレンジしないメンバーに、美里の熱は覚めつつある。伝統芸能保存会ではないのだ。しかし、ファンとロックスターごっこは愉しく、麻薬性がある。松屋のバイトで生活しているロックスター。それが美里の現実だ。
「ラストォーッ。全力で掛かってこいやっー」
リリアが叫ぶ。お約束の煽りで観客は跳びはねる。美里も前に出て観客を煽る。
異常に長いドラムロールはリョウコボーナムの癖だ。メンバーも観客も左腕を挙げ腕時計を見るホーズをする。ベースのミキポールジョーンズがスティックを奪うと、手品のようにスティックを取り出して叩き続ける。美里が腕時計を叩くポーズをすると、やっと決めになり終わる。
アンコールを2回やり楽屋に戻る。
廊下でスタッフを突破してきたファンが美里の腕をつかんでワメく。
「ミサトォー。今夜お前を抱くぜ!」
「事務所通してくれる?」
「俺の愛は事務所なんかフリーパスだっての!」
「そうでもないみたいよ?」
後ろを指差す。
気付いたスタッフに羽交い締めにされて、出口に消える。
なにもかも予定調和、お約束でライブは終わる。




