最終話その2
テーブルを挟んで、向い合わせにベージュのソファーが有る。
その向こうにオーディオセットが有り、床から天井まである棚にアナログレコードがびっしり納められている。
右からエリア、か奈美んちょ、ゴトコットン、美里の順で、4人は入口側のソファーに座った。
しばらくして、オーナーに案内されて、3人のビジネスマンが入って来た。見ていると、その最後尾に山谷さんが居て、オーナーは出て行ったが……山谷さんは美里の隣に座った。
驚いている内に、握手になり全員立ち上がった。
「DDアメリカのジョンネズミスです」
ハリウッド映画に出てくるカウボーイのような紳士が笑顔で言った。
「エリアです。日本語がお上手ですね?」
「慶應の卒業生なんです。アジアプロモーション担当CEOも兼任してます。この二人は日本語は話せませんので、私が進めさせて頂きます」
手で横の二人を示した。
契約条件が読み上げられて行く。
美里は隣の山谷さんを見た。何故か英文の契約書を見ている。
ジョンCEOがしゃべっているので、問いただせない。
「……最後に。松沼美里さんを正式メンバーとして加入する事。山崎恭之助氏をマネジメント担当とする事。以上。」
美里は驚いてジョンCEOを見詰めた。
「美里さん。スフィア前会長の件について、DDアメリカは謝罪します。許して頂けますか?」
「それは、もう何とも思ってません。むしろ、暴力を働いた山崎を許して頂けるんでしょうか?」
「山崎さんの行動は当然の行為と、個人的に理解しています。事を公にせず和解したいのがDDアメリカからの提案です。受け入れて頂きたい」
「その提案を受け入れます。でも、山崎恭之助は今現在行方不明です。」
「それは問題ない。そうですね?山崎さん」
美里は何の事か解らずに、ジョンCEOが見ている方を見た。
山谷さんが英文の契約書を置いて、髪を後ろに束ねた。そして、ライブパフォーマンス仕様クレンジングスプレーを顔に噴射し、布で拭いた。
「?……恭之助?」
見慣れた恭之助が現れた。
「フィメールサーバントバンドのマネジメント担当として、英文日文の契約書について、合意しサインする事に問題有りません」
美里はメンバーとDDアメリカの3人を見た。
「みんな。知ってたの?」
エリアが済まなさそうに笑った。
「今日ね。でも、最後の契約条件と和解の話は知らなかったから…美里ごめん」
美里の目に涙が溢れてきた。
恭之助の手が伸びてきて、布で涙を押さえた。
「サット。涙を止めないと契約書にサインできない。こらえろ」
「約束。守ってくれたんだ」
「俺が約束守らなかった事が有るか?」
「ない」
「サット。世界に行く。グラミー賞を取りに行く。ジョークじゃない。俺は本気だ」
人前で恥ずかしかったが、美里は恭之助に抱きしめられた。




