ー6話スタンビート
4人手を繋ぎ上に上げて喜びを表現した。
観客のほとんどがスマホを上げて写真を撮ると、あらゆるSNSでコメントを付けて送信を始めた。
ステージ袖に固定マイクが有り、場内アナウンスが出来るようになっている。ちいさな窓で場内を見れる。姿が観客席から見れないので、影アナとも呼ばれる。その影アナから声が流れた。
「業務連絡。業務連絡。SNS拡散により、外部半径5㎞を埋める群集がステージに押し寄せる模様。お客様をステージ階段経由厨房に誘導。厨房機器搬入出扉を解放し新宿より脱出誘導を要請する」
落ち着いてよく聞き取れる声だった。店全体から従業員が素早く展開して、場内から人を退去させた。
そして、10分後。
外の群集が押し寄せて来た。
4人を従業員が腕を組んでフェンスになり、立ち止まらないように促して流した。明け方の4時に最後の1人が通過して、ライブは終了した。
疲労困憊した従業員に、なんと山谷さんがお茶とおにぎりを配ってきた。
美里もお茶とおにぎりを受け取って言った。
「なんで山谷さんが?」
「まだメイクダウンが終わってません。それまでヒマなので手配しました。請求書は後日送付します」
表情ひとつ変えずに言う彼女に、思わず笑ってしまった。
「すごいね。山谷さん。前のバンドのマネージャーもそういう人だった。いつも、私よりも先でトラブルを回避してくれた。音楽を続けられたのは彼のおかげ。言ってたな…音楽に選ばれた奴だけが生き残れる。ファンは知っていて、押し上げようとするから。俺もファンだからっって言った後、大笑いすんだよ。ひどい人」
山谷さんはじっと私を見詰めて言った。
「じゃあメイクダウンしましょう」
山谷さんは不思議な人だった。




