5話その2
2部の為の入れ替えの間、緞帳の降りたステージで待機になった。
「この騒ぎ~仕掛け人がいるみたいですよ~」
レスターか奈美んちょがチューニングを直しながら言った。ゴトコットンがうなづく。
「どんなやつ?」
美里が聞く。
「ライブ完全コピー動画馬之助。馬の被り物で私達のライブ完コピでした。あれ見たら、本物のか奈美んちょもライブに行きたくなりました」
エリアが首を振って言う。
「本物は行っちゃダメ。トリニティは完全営業妨害だし、新宿は完全機能停止だし。逮捕されるかもよ?馬之助さん」
ゴトコットンが口を開いた。
「あの馬之助さ。今井さんに似てない?ほら、美里、恭之助さんの友達。スタジオミュージシャンのジョージ今井さん」
「ほう!か奈美んちょビビっときましたよ。ギターソロの後、鼻触って、その手で指パッチンしてました。ジョージ、謀ったな!」
そこで、影アナが2部の開始を告げた。
緞帳が上がる。
レスターか奈美んちょのアルペジオで2部が始まった。観客席は暴れん坊将軍と腰元で埋まっている。
美里はそのアルペジオに聞き覚えが有った。
歌が始まった瞬間悟った。
「私の歌じゃない!」
ソロ動画アップ時代のオリジナルナンバー。
レスターか奈美んちょは、美里のクセまで完コピで弾く。ゴトコットンは当時のリズムボックスの感じを出す。
エリアは当然、美里の声で歌った。
観客も気付いた。
右手で美里を示す3本指を出し、左手で44を示す4本指を掲げた。
そして、CDにもなっていない、楽曲配信もされていない歌を観客が合唱し始めた。
か奈美んちょがエンディングを決めると、美里コールが始まった。
エリアが言う。
「もっと大きな声で呼んだら、美里が戻ってくるかもしれないよ!呼んで!美里を呼んで!」
帰ってこい!が交錯する。バンドは2曲目を始める。
美里は涙でぐしゃぐしゃになりながら、ステージ奥の薄明かりの中、噛みしめるようにベースラインを刻んだ。
5曲とも美里の曲だった。
緞帳が降りる。
暴れん坊将軍と腰元が連呼する声が緞帳を突き抜けてくる。
「帰ってこい!美里!帰ってこい!美里!」
緞帳が上がった。
「聞いて下さい」
エリアが言うと観客は静まり返った。
「今日も含めて3回、サポートでベースを弾いてくれた美里さんです」
スポットがベースを持ったままステージに崩れ落ちている美里を照した。
3本指が掲げられる。
「美里をフィメールサーバントのベースとして、正式メンバーとして迎えたいと思いますが?」
エリアは美里を見た。
「入ってくれる?」
「私はみんなにとって必要?」
エリアは観客席に向いた。
「みんなどうなの?」
必要だの声が飛ぶ。
美里は涙を拭って言った。
「コールオブデューテイ。要請に応えます」
美里は戦場に復帰した。




