西園寺保探偵事務所1 名探偵「翔太」【後】
それから10分ほど皆で紗由を探したが、紗由は見つからなかった。
「どこ行っちゃったのかしら…」
リビングにいったん戻った周子が、疲れたようにソファーに座り込む。
「響子さんも夕紀菜さんも、ごめんなさいね」
「どこに隠れちゃったのかしらね…」
「和江さんに内玄関も外玄関も閉めてもらったし、入り口付近も大垣さんと佐治さんに探してもらったんだし、お屋敷内にいるのは確かだから…」
「そうよね。だって子供たちが遊びに来るときは、他の部屋は鍵かけてあるんでしょう。隠れるって言ってもねえ…」
響子と夕紀菜が周子を慰めるが、幼い子供にとっては家の中といえども安全とばかりは限らない。やはり心配なことには変わりはなかった。
「見つかった?」賢児と玲香がリビングに戻って来た。
「…まだなの」
「大丈夫だよ、かあさま。もうすぐ見つかる…多分ね」
しばらく目を閉じていた龍が、目を開くと周子の手を握った。
「賢児さま…翔太も姿が見えません」
「あれ。本当だ」
賢児が辺りをキョロキョロと見回すと、翔太がドアを開けて入ってきた。太郎を抱きかかえている。
「たろうちゃん! さゆちゃんをさがして!」奏子が太郎のところへ走っていく。
「まりりんのせいだ…」ぽろぽろと涙を流す真里菜。「しょうたくんのおよめさんになれないって、いったからだ…」
次第に大声で泣き出す真里菜に近づくと、周子は彼女の頭を撫でた。
「大丈夫よ。真里菜ちゃんのせいじゃないわ」
「まりりん。さいおんじたもつたんていじむしょでさがそう!」奏子が真里菜に声を掛ける。
「でも…」ぐすんぐすんと泣き続ける真里菜。
「まりりんのせいじゃないから、泣かないで」龍が真里菜に声を掛けた。
その傍らで、翔太は抱いていた太郎を床に降ろした。尻尾を振りながら部屋の隅のロッキングチェアーに駆けて行く太郎。翔太はその様子をじっと見つめている。
「さがすの、やめよ」
「え? 何言ってるの、翔太」
「みんなでおやつ食べよ。紗由ちゃんのぶんも、全部食うてしまお」翔太がソファーに腰掛ける。
「ちょっと、翔太…」玲香が焦る。
翔太が一点を見たままでいるのに気づいた奏子が、その方向に目を向けた。「あ」と小さく叫び、翔太のほうを見る。さらにその様子に気づいた龍も翔太を見る。二人に向かってニッと笑う翔太。
奏子は、翔太に向かってこっくりと頷くと、大声で叫んだ。
「さゆちゃん! いないから、さゆちゃんのおやつ、ぜんぶたべちゃうよ!!」
奏子が大声を出したことに、びっくりする一同。
「ど、どうしたの、奏子?」
すると、部屋の中から声が聞こえてきた。
「たべちゃ、だめ…」
皆で部屋の中を見回すと、ロッキングチェアーでブランケットにくるまった紗由が、ゆっくりと体を起こした。紗由の上には太郎が乗っかって、尻尾を振っている。
「紗由!」すぐさま駆け寄る周子。
奏子と真里菜も走っていく。
「さゆちゃん!」
「んもう、どこ行ってたの…」周子が紗由を抱きしめる。
「ずっと、ここ…」
「ずっと? だってあなた、すごいスピードでお部屋の外に駆けて行ったじゃないの」
「そうだよ。俺たちが廊下に出たとき、もう姿がなかったよな」賢児も不思議そうに言う。
「賢ちゃん。よう考えたら、いくら紗由ちゃんが足速いいうたかて、こーんな長い廊下の向こうまで、すぐに行けるわけないんや。俺がさっき、端っこまで走るにも、えらい時間かかったで」両手をいっぱいに広げ、廊下の長さを表現する翔太。
「それはそうだけど…実際問題として、紗由ちゃんの姿は見えなかったわよ」
「周子はんが部屋出て、玄関のほうに走ったから、皆一斉にそっちに向かって行ったやろ。だから、わからんかったんや」
「あ…もしかして…」玲香は小走りにドアに向かいドアを開くと、いったん廊下側に出た。「やっぱり」
「何がやっぱりなの?」賢児が玲香のほうへ行く。
「ドアの後ろ側の隙間ですよ。外開きですから、ここに隠れられます」
「なるほどね! 玄関のほうへ向かうと、この陰は見えなくなる。大人が入るにはそれなりの角度が必要だけど、紗由ぐらいの薄さなら、気になるほどではないしな」
「翔太くん名探偵だね」龍がにっこり笑う。
「いつ気がついたの?」玲香が聞く。
「つい、さっきや。太郎を連れてこよ思うたから、玲ちゃんたちより、ちいと戻るのが遅うなったやろ。玲ちゃんが開いてたドア閉めるの見て、あの後ろなら隠れられるなあ、思うたんや」
「紗由はふてくされると、すぐに寝ちゃうんだよなあ。ロッキングチェアー、もっと早めに気づけばよかった」龍が腕組みをする。
「ところで翔太、何で太郎ちゃんを連れてきたの?」
「紗由ちゃんが言うとったんや。太郎とかくれんぼすると、すぐに見つけられるて。そやから、あちこちに太郎を放せば見つかるかなあ思うて」
「ありがとう、翔太くん」
お礼を言う周子に、にいっと笑うと、翔太は厳しい顔で紗由に言った。
「みんな、えらい心配したんやで」
「ごめんなさい…」か細い声で言う紗由。
「まあまあ、もう、いいじゃないの。無事見つかったんだから」
夕紀菜が言うと翔太はさらに厳しい顔になった。
「あきまへん。まりりんちゃんは、自分のせいや思うて泣いとりました。ちゃんと話せえへんと、探偵事務所がばらばらになります。間に入った奏子ちゃんも大変です」
「そうよね。真里菜ちゃん、すごく心配してたのよ、紗由」周子が紗由の頭を撫でた。
「まりりんのせいじゃないよ…」
「紗由ってば、断っちゃったの、後悔してるんだよね」
龍が紗由の頭を撫でると、紗由はキッと唇を結んで龍を見上げ、床に降り立った。
「まりりん、かなこちゃん、さいおんじたもつたんていじむしょのひみつかいぎの、つづきをはじめるよ。ひみつきちにしゅうごうだよ!」
紗由がドアに向かって走り出すと、二人もその後を追う。
「ごめん。紗由、すねちゃったみたい」龍が肩をすくめる。
「お、おい、紗由!」
賢児が追いかけようとすると、周子が言った。
「大丈夫よ。行き先は、じいじの部屋だから」
周子は軽く溜め息をつきながら、壁に掛かっている子機を取り、保の部屋へ電話した。
* * *
電話を置いた保が、申し訳なさそうな顔で有川に言う。
「どうやら、秘密会議の2回目が始まるらしい」
「探偵事務所は大忙しだなあ」
有川が笑っていると、ドアの外から紗由の声が聞こえてきた。
「いちご!」
「ほら、西園寺。合言葉返せよ」
「おまえ、ものすごく楽しそうだな」眉間にしわを寄せる保。
「いちご!!」さっきより大きな声で紗由が言う。
「だいふく!」
保がやけ気味に大声で答えると、3人がぞろぞろと部屋に入ってきた。
「ふう。ぶじにもぐりこめたねえ。…じいじ、さゆたちがここにきたのは、かあさまにないしょだよ!」
「あ、ああ…」
「ふたりとも、はやくまほうのシートにのって」
紗由が手招きをすると、二人は急いでスリッパを脱いでシートに座った。
「それでは、2かいめのひみつかいぎをします」
「はんにん、きめるの?」
奏子が首をかしげると、紗由が大きく頷いた。
「はんにんは、にいさまです」
「ええっ。…かなこ、そんなのいやだ。りゅうくんを、はんにんにしないで」泣きそうな顔をする奏子。
「そうだよね。こんやくしゃがはんにんじゃ、いやだよね」真里菜が奏子の肩を持つ。
「おい。龍くんと奏子ちゃん、婚約してるのか?」有川の目が輝く。
「初耳だが…」答える保。
「でもなんで、にいさまがはんにんなの?」真里菜が紗由に確認する。
「だって、いじわるいったもん。しょうたくんのぷろぽーず、ことわったの、こうかいしてるって、いったもん」今度は紗由が泣きそうになる。
「ちがうの?」奏子が尋ねる。
「ちがわない…」
紗由はそう言うと、下を向いてしょんぼりしてしまった。
「ああ、そうか。紗由ちゃんは、例の翔太くんて子が好きなんだな。プロポーズされたのに断っちゃったから、今さら好きって言えないんだ。あるある。あるよなあ」
「おまえ、なんだか久我夫人みたいになってきてるぞ」苦笑する保。
「ねえ、それってさあ、しょうたくんが、なんどもぷろぽーずしないから、いけないんだよ!」真里菜が怒ったように言いだした。
「そ、そうだよね。そしたら、さゆちゃん、いいよっていったのにね」龍への批判をかわすために、奏子も同意する。
「共通の敵を作って話をそらすっていうのは、手法としては間違ってないな…」有川がつぶやく。
「図星を突いた龍のツメが甘かったんだろうにな。…翔太くんが気の毒だなあ」
「じゃあ、しょうたくんがはんにんだね」
真里菜が言うと紗由がぷーっとふくれる。
「ダメ! しょうたくん、わるくないもん!」
「…うーん。じゃあ、だれにする?」真里菜が困ったように言う。
「じゃあ、たろうちゃんにする? くっきー、たべたよね」紗由を見る奏子。
「わかった。たろちゃんできまりだね!」紗由がきっぱりと言う。
「奏子ちゃん、さっきと言い分が違うぞ。太郎と龍くんを天秤にかけて彼氏を取ったんだな」
「まあ、ありがちな展開ではあるな。とりあえず翔太くんが救われてよかったよ」
「でもさあ、しょうたくんが、もういっかいぷろぽーずしないと、じけんはかいけつしないよねえ」腕組みをして二人を見る真里菜。
「おおっ。まっとうな展開を見せるのか?」身を乗り出す有川。
「まあ、犯人だけ増えてもなあ…」
「どうして、もういっかいしないんだろう」
奏子が言うと、真里菜は得意げな顔で言った。
「それをちょうさするのが、たんていじむしょよ」
「うわあ。ちょうさだねえ」うれしそうな奏子。
「まわりのひとに、はなしをきくの。おばあちゃまとママがいっつも、そうしてる」
「久我家自体が探偵事務所なんだな…」
「まあ助かってはいるけどね。彼女らの情報収集力のおかげで」
「まわりのひと? しょうたくんにきかないの?」奏子が不思議そうに尋ねる。
「ちょうさっていうのは、まわりのひとにするのよ。おばあちゃまが、そうしてる」
「じゃあ、さゆ、れいかちゃんにきいてみる」
「そうだね。かなこちゃんは、りゅうくんにきいて」
「はい!」
「さゆちゃん。あと、しょうたくんとなかよしなのは、だれ?」
「うーんとね…けんちゃんと、ひろゆきさんと、すずねさんと、みつひこさんと、なみちゃんと、つるこおばちゃん」
「じゃあ、けんちゃんには、まりりんがきいておくね。でも、ほかのひと、わかんないなあ」真里菜が困ったように言う。
「しょうたくんのおうちのひとたちだよ」
「それだと、しずおかだね。ちょうさにいくのは、むずかしいねえ…」
「じゃあ、しょうたくんに、きいておいてもらうよ」紗由が答える。
「わかった。それでいいね」
真里菜が言うと、奏子がうなづく。
「…それでいいのか?」有川が保に尋ねる。
「うーん。難しいところだな」
「じゃあ、じけんはかいけつしたので、ひみつかいぎをおわります」
紗由はこくんと頷き、二人がシートから降りると、今度はていねいにシートを畳んで脇に抱えた。
「おじさま、さようなら」
「あ、ああ。さようなら…」
紗由が有川にお辞儀をすると、二人も続いて頭を下げ、3人は部屋を出て行った。
「いいな、いいな。毎月あるんだろう、これ?」
「…何なら、有川建造探偵事務所にしてもいいぞ」
「可愛いなあ、紗由ちゃんたち。うちは皆、男だし、孫も男だから、ああいう可愛さは経験がないんだ」
「予測不可能で、それこそ地球外生命体だぞ」
「女が予測可能な生き物だったら、男は生きてる楽しみがなくなるさ」
「確かにな」
二人は楽しそうに笑った。
* * *
リビングに戻った紗由と奏子と真里菜の3人は、さっそく調査に取り掛かった。
紗由は玲香を、奏子は龍を、真里菜は賢児を部屋の隅に呼び出す。
「ねえ、彼女たち、今度は何が始まったのかしら」
翔太と響子が楽しげにしゃべっている傍らで、夕紀菜が周子に耳打ちする。
「さあ…」
「そないでっか。じゃあ今度、翼くん連れて来てください。僕の自転車のサイドカー乗せたりますさかいに」
「本当? 翼、喜ぶわあ。あの子ね、乗り物全般大好きなの」
「でも、名前からすると飛行機がいちばん好きそうですなあ」
「そうそう。そうなのよ。うちには飛行機のプラモデルだらけよ」
「りゅうくん。きいてもいい?」奏子が言う。
「うん。何?」
奏子は、向こうでソファーに座って自分の母親と歓談している翔太のほうを、ちらりと見た。
「なんで、いっかいしか、ぷろぽーずしないの?」
「…えっと…何度もするものなのかな」さすがにプロポーズは初めてだった龍は、女の子なりの常識というものが理解できずに確認した。
「したほうが、いいことだってあるとおもうの、かなこは」真剣な顔で龍を見つめる奏子。
「あ、うん。わかった。奏子ちゃん、お嫁さんになって」
「え?」びっくりする奏子。見る見るうちに、目に涙が溢れてくる。「かなこがなるの? なんで?…りゅうくん。きらい!」
奏子がぽろぽろと泣き出す。
「え? え? 何で? 奏子ちゃん!」わけがわからぬ龍。
「かなこは、りゅうくんのおよめさんになりたいのに、しょうたくんのおよめさんになってっていった…」
「どうして翔太くんが出てくるの?」
「しょうたくんが、さゆちゃんに、もういっかい、ぷろぽーずするはなしです」しゃくりあげながら、龍を見上げる奏子。
「…奏子ちゃん、翔太くんと紗由のことだなんて言ってなかったよ」
「え? え?」
「だから、もう一回、僕が奏子ちゃんにプロポーズしろって話かと思った」
「あ…まちがえました」手で涙を拭いながら、真っ赤になってうつむく奏子。
「奏子ちゃん、けっこう、おっちょこちょいだね」龍がくすりと笑う。
「ごめんなさい。ごめんなさい…」
「お嫁さんになってくれたら、許してあげるよ」
「なります。ぜったいに、なります!」
きゅっと唇を結ぶ奏子の手を、龍はふんわりと包み込んだ。
「ねえ、けんちゃん、ほんとは、さゆちゃんがすきだったんでしょ」真里菜がにやりと笑う。
「え?」
「だいじょうぶ。ひみつにしといてあげるから。でも、けんちゃんは、れいかちゃんのほうがすきになって、けっこんするんだから、さゆちゃんとしょうたくんのこと、きょうりょくしてね」
「は、はい…」返事をするものの、何となく腑に落ちない賢児。
「なんで、しょうたくんは、さゆちゃんに、もういっかい、ぷろぽーずしないのかしら?」腕組みをしながら、賢児を見上げる真里菜。
「うーん。普通はプロポーズっていうのは、一世一代の勝負なわけでさ、断られたら潔く引き下がるんじゃないの」
「でも、いまなら、おっけーなのよ。なんで、2かいめをしないの?」真里菜が怒って賢児に詰め寄る。
「今がOKなんて、翔太にはわからないよ。紗由の勝手な言い分だろ。結婚したいなら、紗由からプロポーズすればいいじゃない。まりりんから、紗由にそう言ってよ」
「だめだめ!」真里菜は頭をぷるぷると振った。「おんなのこからすると、うちのママとパパみたいになっちゃうもの」
「夕紀菜ちゃんと瑞樹、どうかしたの?」
賢児が小声で尋ねると、真里菜はさらに声を潜めながら答えた。
「パパがうわきしたかもしれないの。でも、そんなことしてないぞーって、パパがすんごくおこって、そしたら、おばあちゃまがおこって、りこんとどけをもってきたの」
「うわ。ドロドロだな…」
「そしたらね、おにいちゃんがおこって、おばあちゃまはくちをだすな。でも、ママをだいじにしないパパはいらないから、せつめいできないなら、でてけっていったの。ちゃんとせつめいしろって」
「大地が?」
真里菜の兄の大地は、どちらかというと、へらへらした感じの子供だったので、賢児はそれを聞いてびっくりしたのだ。
「うん。だれがどうであっても、ママとまりなは、ぼくがまもるって」
「かっこいいなあ。うん、すごいよ、大地。…で、瑞樹はどうしたの?」
「りこんはしないんだって、ママがいってた。でもね、ママはときどき、さみしそうだよ。…だから、まりりんは、うわきするひときらい」段々と真里菜の声が小さくなる。
「わかったよ、まりりん。俺から瑞樹に聞いてみる。ほら、浮気っていうのも誤解かもしれないしな。でも…偉いなあ、まりりんも、大地も。…うん、夕紀菜ちゃんもだ」
賢児が真里菜の頭をなでると、真里菜は目にうっすらと涙を浮かべて、賢児を見上げた。
「だからね、おとこのこがぷろぽーずしないと、だめなんだよ…」
「れいかちゃんは、ぷろぽーずされたことある?」紗由が玲香に尋ねる。
「え?…えーと、賢児さまにされました」
「いっかい?」
「ええ」
「いっかいなんだ…。わかった」
玲香の返事に、紗由はしょんぼりして、くるりと背中を向けた。
「紗由ちゃん…?」
紗由は響子と話をしている翔太のところへいき、隣に座った。玲香もその後を追ってやってくる。
「ねえ、玲香さん。ドレスは洋子先生がお作りになるんでしょう?」
「は、はい。そうです」響子に話しかけられた玲香は、響子の隣に座った。
ドレスという単語に反応したのか、周子と夕紀菜も玲香たちのところへやってきたため、翔太は周子たちに席を譲り、紗由を連れて窓のほうへ行った。
「紗由ちゃん、どないしたん? なんや、元気ないな」
翔太が心配そうに紗由の顔を覗き込むと、紗由は翔太を見上げて聞いた。
「ひろゆきさんと、すずねさんと、みつひこさんと、なみちゃんと、つるこおばちゃんに、きいておいて」
「何を?」
「しょうたくんは、どうして1かいしか、さゆにぷろぽーずしないのか、きいておいて」大きな目で翔太を見上げる紗由。
「…俺に聞けば、ええんでないかい?」首をかしげる翔太。
「ちょうさは、まわりのひとにするんだって、せくしースパイのまりりんがいってた」
「そないなもんかのう」
「まりりんの、おばあちゃまも、ママも、ちょうさがじょうずだから、まちがいないとおもう」
「なるほどな。んで、紗由ちゃんは、もう一回プロポーズしてほしいん?」
「うん」
龍が奏子にプロポーズしたせいで、紗由は自分もプロポーズしてほしくなったのだろうと翔太は思った。プロポーズしたらしたで、どうせすぐに断るのだろうが、紗由がそれで満足するなら、まあいいかと、さらっと2度目のプロポーズをしてみた。
「じゃあ、紗由ちゃん、俺の嫁さんになってや」
「うん」
「ああ、やっぱりそう来ると……え!? 今、うんて言うた?」意外な展開に驚く翔太。
「うん」
「で、でも紗由ちゃん、嫁はん行くとこ、決まってるんやろ?」
「どこなのか、わかんないから、しょうたくんのとこにする」
「わからんの?」
「かみさまが、おばあさまに、さゆはおよめさんにいくとこ、きまってるっていってたの。でも、どこかわかんない…」
「そっか…。なら、早いもん勝ちや。俺んとこにしい」
翔太が満面の笑みになると、紗由も顔をくしゃくしゃにして笑い、事件は無事に解決したのだった。
* * *
番外編 西園寺保探偵事務所1 名探偵「翔太」 終
続いて 番外編 名探偵「にいたん」へ




