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最後の五分
空が見える。
嫌な天気だと思った。
あの子の声が聞こえる。
何か叫んでいるみたいだ。
周囲が騒ついている。
あの子が駆け寄ってきて、自分の隣に座った。
どうしたのだろうか? とりあえず動かなければ…ダメだ。
動かない。
ナゼだろう? 脇のあたりが焼けるように痛い。
瞼が重い。
少しずつ背中に感じているコンクリートを感じられなくなっている。
そもそも、ナゼ自分は仰向けに寝ているのだろう。
思い出す。
あぁ、そうか、自分は死ぬのか。
ナゼだろうか、瞼の裏が熱い。
もっと一緒にいたかったな…。
そう思った。
胸が痛い。
鉄骨が刺さった脇腹なんかよりもずっと。
ただ、胸が痛かった。
薄れていく意識の中、水滴が頰に当たった気がして、眠い目を開いた。
あの子が泣いているのが見えて、はっとなった。
その時、自分は救われた気がした。良かった…あの子に怪我が無くて。
良かった…自分の死を泣いて悲しんでくれる人がいて。
ありがとう。
そしてさよなら…
「…雪菜。」