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プロローグ
チガウ…コレハ、コノ感情デハナイ、コノ涙デハナイ…ナゼ泣ケナイ…私ハ!
彼が死んだ。
その日は雨が降っていた。
工事中のビルから落下してきた鉄骨から私を守って、私の変わりに彼が死んだ。
私はきっと泣いていた。
でもチガウ。
私は彼の死を嘆いた訳ではないのだろう…いや、ある意味そうかもしれない。
私は彼と付き合っていたが、私には彼への好意が無かった。
しかし、そんな私に好意を向けてくれる彼を見て、私も彼といれば好意が、恋が、愛がわかるかもしれない。
そう思っての関係だった。
そんな彼が、私の一筋の希望が死んだ。
消えてしまった。
私はきっと、その事実に失望し泣いているのだろう。
この日私は泣いていたのだろうか? 雨でそれが涙であったかもわからない…。
ただ、彼が死んだ。
私はきっと、それを容易に受け入れた。
少女は願う。
感情が欲しいと…少女は祈る。
自分が彼を愛しているようにと…少女は思う。
自分は何者なのかと…。