表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/82

不穏な山へ

第50話です。


最近更新間隔が開いてしまっていてすみません……

 ルミナリア達が入浴を終え部屋に戻った後、グリムによって食堂に呼び集められバルドの話を聞いていた。


(ハニーベア……はちみつ熊……なんか思い浮かべそうな……黄色くて……赤い服……)

「ルミナ、どうかした?」

「い、いや、なんでもないよ!」


 ルミナリアが説明を聞きながらどうでもいいことを考えそうになっていた。


「黒いハニーベア、ね……鹿が林にいたのはその黒いハニーベアがいる場所から逃げてきたからかもしれないってわけね。で、そいつを倒すために私達の力を借りたい、ということね?」

「ああ、そうだ。治療までしてもらったってのに、その上こんな頼みをするのは悪いとは思っている……だが俺はあいつをこのままにしちゃおけねえんだ……!」


 怒りと悔しさに震えるバルド。そんな中、一番に言葉を発したのはアルルメイヤだった。


「ん、ルミナはどうしたい?」

「私は……」


 ルミナリアは、何故か今回の一件を放置していてはいけないという予感を胸に感じていた。


「そうだな、こんな言い方はあれだが、俺たちの中心はルミナだろうし、お前が決めるのが一番だろうな。アルルも言ってたろ? お前はどうしたいんだ?」

「それは……」


 ルミナリアがバルドの方を見る。バルドは静かに俯いていた。


「聞いて欲しいことがあるんだけど……今回のこと、何故かわからないけど放って置いちゃいけないって思うんだ。理由を説明しろって言われたら困っちゃうんだけどね……だから……バルドさんを手伝おう」

「ふふ、なら決まりね!」

「ん、ルミナならそういうと思ってた」

「だな」


 ルミナリアの言葉に三人が頷く。俯いていたバルドは、顔を上げ全員へとしっかりと頭を下げた。


「すまない……いや、ありがとう……」


 こうして、ルミナリア達は黒いハニーベアを探しに行くこととなった。


(今思えば……あの傷を見たときからかな……嫌な感じがする……)


 ルミナリアは、この予感が杞憂であればいいと思わずにはいられなかった。






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






 翌日、準備を整えた一行は早くから宿を発ち、バルド達が黒いハニーベアと遭遇したという場所へと向かっていた。


「もうすぐ目的地だ」

「目的地だって……本当に近かったんだな」


 バルドの言葉にグリムが驚くのも無理はなかった。宿場町から馬で出発したのは僅か一時間ほど前のことでしかないのだ。


「町が近いのが心配ね、その黒いハニーベアが町のすぐ側まで行かなければいいけど」

「ああ、それを防ぐためにも……やつを必ず仕留める……!」


 バルドが決意を表明している一方、ルミナリアは言葉を発することなく落ち着かない様子でそわそわとしていた。


「ルミナ、どうしたの?」


 ルミナリアのすぐ側にいたアルルメイヤがルミナリアの様子に気がつき声をかける。


「え? あぁ、なんだか変な感じがして……」

「変な感じ? どんな?」

「うーん……なんだろう……」


 ルミナリアが曖昧な返事をしながら目的地である山を見る。


「なんだかぼんやりとだけど嫌な感じがするんだ。まるで豊穣祭の時みたいな」

「それって……!」


 以前戦った黒い怪物を思いだし、アルルメイヤが驚く。


「はっきりとはわからないけどね、でもあのときみたいな強烈さはないと思う」

「ん、それでも気を付ける必要があると思う」

「うん、何もないといいんだけどね……」


 それから少し歩みを進めた一行は、狩人達の使う小屋に馬を繋ぎ、山へと入っていった。山の中は、木漏れ日の降り注ぐ穏やかな雰囲気だった。暫くの間山道を歩き続け、気がつけば太陽はほぼ真上の位置まで来てしまっていた。


「この先に少しだけ開けた場所がある。少し休憩をとるか」


 バルドの提案に賛同した一行が辿り着いたのは、色とりどりの花の咲くまるで小さな広場のようになっている場所だった。


「綺麗ね……」

「ん、これはすごい」

「確かにこりゃすげえが、気を抜きすぎんじゃねえぞ?」


 フィアナとアルルメイヤがその景色に表情を和ませ、グリムが警戒を怠らないよう注意を促す。和やかな空気が漂う中、ルミナリアはどこか難しい表情をしていた。


「ルミナリア、どうしたんだ?」

「バルドさん……実は心配なことがあって……うん、これは一度ちゃんと皆に話しておこうと思います。みんな、ちょっと話があるんだけど、いいかな?」


 ルミナリアに広場の中央へと呼び集められた一行は、ルミナリアが先程から嫌な気配を感じていること、その気配は以前の戦った黒い怪物の物と似ていること、そして、その怪物が恐ろしく凶悪な存在であったことを説明した。

 バルドは最初こそ半信半疑といった様子だったが、ルミナリアの言葉を信用することにした様子だった。


「なるほど、つまり俺達を襲った黒いハニーベアがその黒い怪物に関連した何かかもしれない、というわけか……」

「もし本当にそうだとしたら……厄介な相手になるかもしれないわね」


 フィアナが思い浮かべるのは、炎の柱にその身を焦がされながらも倒れることのなかった黒い怪物のことだった。


「そんな化け物が相手なら、なんとか俺達が先に見つけて一気に仕留めたい所だが……ルミナ、そこんとこどうなんだ?」

「それが……嫌な感じはしてるんだけど、それがどこなのかははっきりわからないって感じで……ッ!!」


 話の途中、ルミナリアが突然振り返った。今までの話から全員が状況を察し、臨戦態勢となる。同時に、全員が見ている方向から紅い目をした巨体、黒いハニーベアが身を屈めて今すぐにでも飛びかかれるような姿勢になっていた。


「すぐ側にいるみたい! 気づかなくてごめんなさい!」

「いや、ルミナが気付いたから準備できたようなもんだ、むしろありがてえ!」


 実際、ルミナリアが気付くことが出来ていなければどれ程の被害が出ていたか。グリムは背中に冷たいものを感じながらルミナリアに感謝した。


「あの目……あのときのことを嫌でも思い出させてくれるわね…先手をとるわ!」

「ん、今回は負けない!」


 黒いハニーベアが撃ち出された砲弾のような勢いで一行の前へと飛び出す。しかし、フィアナとアルルメイヤが、威力よりも速度を重視した炎球と雷球を数発ずつ放ち、その全身に攻撃を加える。


「グォォォォ!」


 しかし、勢いの乗ったその巨体は怯むことなく即席の弾幕を突破して走り込み、その爪を振り上げる。


「任せろ! うおおおおおお!」


 バルドが両手に持っていた斧を目前に迫る腕へと叩きつける。


──ドッ!!


「グォォ!?」

「おおおおらあああああ!」


 両者の勢いの乗った斧がハニーベアの手首辺りに食い込み、鮮血を散らしながらその腕を跳ね上げる。しかしその腕が斬り落とされることはなかった。


「頑丈なやつめ!!」


 バルドが斧を振り切りながら悪態をつく。その横から風の魔導器である魔剣を構えたグリムが飛び出す。 


「ふっ!」


──ヒュヒュヒュッ!


 薄い緑色の風の刃を展開した剣が素早く三度ハニーベアを斬りつけ、剣閃と共に血が舞う。


「グリム! 下がって!」

「おう!」


 グリムがその場からバックステップすると同時にルミナリアの創り出した三本の槍がハニーベアへと迫る。しかし。


「グオオオオオォォ!」


 ハニーベアは槍を右肩に受けながらも、左腕を迫る槍へと叩きつけ、そのうち二本を叩き落としてしまった。


「グウゥゥゥ……!」


 槍が刺さった位置から白い煙が上がる。それは以前の黒い怪物との戦闘と同じものだった。


「あっ!」


 直後、ルミナリアの魔法に危険を感じ取ったハニーベアはその身を翻し、再び木々の間へと飛び込んでしまう。


「気配がわからなくなった……逃げちゃったみたい……」

「そうか……」


 再び気配が消えたことを聞き、バルドが肩を落とし、フィアナとアルルメイヤが追撃のために詠唱していた魔法を中断する。


「とりあえず、あいつも手傷を負ってるはずだ。すぐには襲ってくることはないだろ。俺達も一旦休もうぜ」


 こうして、ハニーベアとの緒戦を無事切り抜けた一行は、広場で休憩をとって再び捜索を始めるのだった。







感想やご意見、誤字脱字の報告等ございましたらよろしくお願いします。

では、また次回で会いましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ