女の子って大変!
さて、今回の話で町に向かう予定だったのですが・・・
だ、第3話どうぞ・・・(汗)
「ん……」
毛布に包まっていたルミナリアは昇り始めている朝日の中目を覚ました。
「いたた……そっか、昨日はあのまま寝ちゃったんだっけ……」
草原で眠っていたため身体が少し痛んだが、疲れは十分に取れているようだった。
「2人はどこだろう?」
周囲を見てみると、少し離れた場所でグリムが木に寄り掛かった姿勢で眠っていた。フィアナはすでに起きているようで、近くの岩に座り、町、ホリティアが見える方向を見つめていた。おそらく夜中にグリムと交代で番をしてくれていたのだろう。
ルミナリアはあくびをしながら畳んだ毛布をその場に置き、フィアナに近づいて行った。
「おはようございます。フィアナさん」
「あら、おはよう。どう? よく眠れた?」
「はい。おかげさまでよく休めました」
「それならよかったわ」
眠たそうなルミナリアを見ながら微笑むフィアナは、すぐ傍まで近づいてきたルミナリアの頭に手を伸ばし。優しく撫でる。
「わ……」
「寝癖が残ってるわよ? 鏡と櫛は持ってないんだったわね……貸してあげるから整えちゃいなさい。せっかくのきれいな髪なんだから綺麗にしとかなきゃね?」
ルミナリアの頭を撫でていたフィアナが傍に置いていた小物入れの中から手鏡と櫛を取り出し、ルミナリアに渡した。
「髪の毛の手入れの仕方も教えてあげた方がいいかしら?」
「いえ、たぶん自分でできると思います」
ルミナリアには、かつて妹の優羽の髪の手入れをしてあげていた経験があるのだ。まさか自分の髪で実践する日が来るとは思ってもみなかったが。
(そういえば今自分の顔がどうなっているかなんて見てなかったな……)
そう、このとき、和希は自分がルミナリアとなってから初めて自分の顔を見ることになるのだった。和希は恐る恐る手鏡を覗き込んだ。そして、息をのんだ。
そこには朝日を受けて煌めく美しい銀髪と、宝石のように綺麗な眼をした可愛い顔が映っていた。
(これが僕……!?)
「ルミナちゃん? やっぱり手伝ってあげた方がよかった?」
「いえ! だ……大丈夫です……」
変わってしまった自分の姿を改めてみたルミナリアは衝撃を受け、固まってしまったが、横からかけられたフィアナの声にハッとなり髪の手入れを始めた。
(今までは優羽の髪の手入れをしていたとはいえ、自分の髪となるとまた変な感覚だな)
今までは、髪の毛も短かったため、そう気にしたことはなかったのだが、いざ自分の髪を櫛で梳くとなるとまた違った感覚であった。
鏡を見ながら眠っている間にはねてしまった銀髪を整えていく。その櫛は髪の根元から毛先まで、一度として止まることなく流れ続ける。
(これは……ちょっと気持ちいいかも……優羽が髪を整えてもらいたがってた気持ちがわかった、うん)
髪の手入れはさほど時間をかけずに終わってしまった。
「ん、よし。これで大丈夫そうですね。ありがとうございました」
ルミナリアがそう言って鏡と櫛を返そうとフィアナを見ると。
「うぅー……ルミナちゃん! ちょっとその綺麗な髪、私に任せてみない!? いや任せて!!」
目を輝かせるフィアナがそこにいた。
「えぇ!? でももう寝癖なんて……」
「違うの! せっかく! 目の前に! 間違いなく輝く! 原石が! あるのに! そのままになんて! できないの!!」
ルミナリアの言葉をさえぎるようにして話すフィアナ。ルミナリアから見た彼女は軽い恐怖の対象であった。
「大丈夫! 怖くなんてないから……ふふ……ふふふふ……」
「ひっ……!」
ガシっとルミナリアの両肩に手をかけるフィアナ。そんな彼女から逃げ切ることなど、ルミナリアにできるはずもなかった。
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「おはよーさん……なんかあったのか?」
目を覚ましたグリムが見たのは、頬を赤くしたルミナリアと、やけにつやつやした様子のフィアナだった。
あれから1時間ほどフィアナはルミナリアの髪を弄り回していた。様々な髪型を試されたルミナリアだったが、最終的には悩みに悩んだフィアナの手によってツインテールになっていた。その少しあとになってグリムが目を覚ましたのだった。
ルミナリアは最初こそフィアナの迫力におびえていたが、フィアナに髪を解いてもらう感触が気持ちよく、途中からは夢中になってしまっていたという事実を受け入れていいものかと悩んでいた。
「なんでもないわ♪ さ、朝食を食べたら出発よ!」
「……ハイ」
「あ……あぁ……」
朝食用に残していた昨日のスープを食べ終わり、片づけをするルミナリアたち。そんな中、ルミナリアは下腹部からの耐え難い感覚に襲われていた。
(おしっこに……行きたい……!)
そう、ルミナリアは尿意に襲われていたのだった。男だったころならば、少し離れた場所で済ませていただろうが、今はそうはいかない。なんせ今の和希は女の子なのだから。
(うぅ……! どうしよう! どうしよう! このままじゃ……)
なんとか耐えているルミナリアだったが、その我慢はもはや決壊寸前であった。そのため、恥ずかしさをこらえ真っ赤になりながらフィアナに話しかけることにした。
「フィアナ……さぁん……」
「ぐっふ……!? ってどうしたのルミナちゃん!?」
涙目、頬染め、上目使いのコンボ再び。フィアナはその破壊力にやられながらも、様子のおかしいルミナリアに何とか返事をした。
「うぅ……」
「どこか痛いの!?」
「―――っこに……」
「え?」
「おしっこに……いきたいんです……」
「あああああああちょっとまって!! これあげるから! ほら! 向こうの草むらの裏なら大丈夫だから!!」
「あ……ありがとうございます……!」
フィアナが荷物から取り出した紙を受け取り、ルミナリアは慌てて向かっていった。
「えっと……えっと……パンツを脱がないと……」
なんとかたどり着いた草むらの裏でルミナリアは新たな葛藤に襲われることになる。
そう、下着だ。自分の服は確認していたルミナリアだったが、服の中を見るのには抵抗を感じ、見ていなかったのだ。
「仕方ない……だって汚したりなんてできないし……」
着替えも持っていない現状なのだ。それに尿意はいつ決壊してもおかしくはない。
――覚悟を決めるしかない。
そして、ルミナリアは自分の下着に手をかけた。するするとおろされた下着は、今着ているワンピースと同じく純白だった。ルミナリアはそれを視界に入れ、真っ赤になりながらその場にしゃがみ込む。
緊張から解放されていく下腹部に安心すると同時に、恥ずかしさを感じるルミナリア。
事を終えて、フィアナからもらった紙を使用し後処理をしたルミナリアは、今後はこれに慣れなければならないという事実を受け止めながら下着を着け2人の元へと戻っていった。
(こんな調子で僕やっていけるのかな……)
フィアナは戻ってきたルミナリアの様子を見ると話しかけてきた
「えっと……ルミナちゃん大丈夫……?」
「はい……なんとかなりました……」
「よかったわ……」
ほっと安堵の息をつく2人にグリムが、声をかける。
「よし、こっちは準備できたぞ、出発するとしようぜ」
「そうね、私もいいわ、ルミナちゃんは?」
「僕も大丈夫です。持ってる物なんてこの杖くらいですし、いつでもいけます。……見ず知らずだった僕のために、一緒に町に行ってくれるなんて、すみません……」
「ははは! 気にすんな気にすんな! どうせ向かう先は一緒だし、そんな状態のお前を置いていくなんて選択肢なんてないってもんだ!」
「ふふ、そうよ? 気にする必要なんてないんだから!だからそんな悲しそうな顔しないで? ルミナちゃんが笑ってくれてる方が私たちもうれしいわ」
「……はい。ありがとうございます!」
自分のために同行してくれるという2人に申し訳なさを感じていたルミナリア。しかし、2人はそんなこと気になどしないと笑ってくれた。そんな優しい2人に今のルミナリアができることは、フィアナの言うように笑って感謝を伝えることだけだった。
(いつか、ちゃんとお返しができるといいな)
ルミナリアは心の中でそうつぶやき2人の後について、近くの木に結ばれていた馬のような生物に近づいて行った。
「グリムさん、この生き物はなんですか?」
「ん? こいつか? こいつは馬だぞ?」
「これが馬ですかー……」
この見た目は馬に近く、足が蹄ではなく、犬や猫などのように爪と肉球になっている生き物は、この世界での馬であったらしい。
「よし、ルミナ、おまえはフィアナの馬にいっしょに乗せてもらえ」
「わかりました」
軽々と馬に跨るグリムとフィアナ。乗馬の経験などなく、そのうえ身長の低いルミナリアは悲しいかなうまく乗ることができず、最後は見かねたグリムに抱えてもらい、なんとか跨ることができたのだった。
「うぅ……」
「ルミナの身長ならまぁ仕方ないな! はははは!」
「ふふ、そんなしょげないの!そのうちちゃんと乗れるようになるわよ」
ホリティアへ向かう道すがら、2人に笑われ、励まされるルミナリアなのであった。
前回確かに言いましたよね。「町に向かうことになる」って!!!!
書きたい事書いてたら出発するまでで今回終わっちゃいました!!!ホントにごめんなさい!!(泣)
次回こそ町に向かいます・・・