光の翼
戦いの決着です。
第38話です。どうぞ。
「はぁ……はぁ……」
満身創痍のルミナリアは、身体の奥底から溢れる力の奔流に戸惑っていた。
(まだ、頭がぼーっとする……そうだ、腕、怪我してたんじゃなかったっけ……)
ルミナリアは、ぼんやりとしたまま、左腕を見る。そこは、未だに傷が塞がらず、血を流し続けている自分の腕があった。
(治さなきゃ……)
ルミナリアが、左腕に魔力を集中する。すると、光が腕を包み、すぐさま傷が塞がってしまった。
「あの傷を一瞬で!?」
その様子を見ていたアルルメイヤは、先程までの治癒の進まなかった状況を知っているだけに驚く他なかった。
(これで……いいよね……?)
「ルミナ!」
「ヴゥゥゥ……」
「え? あ……!!」
ルミナリアは、アルルメイヤと黒い怪物の声を聞くと、段々と今の状況を思い出した。そして、同時に違和感を感じた。足元にあるはずの地面の感覚がないのだ。
「わわっ!? ちょ!?」
ルミナリアが、その場でじたばたともがく。しかし、あるのは今だかつて感じたことのない浮遊感。
「足が着かな……落ち………ない……?」
「ん、ルミナ、自分で気付いてないの?」
「え……?」
そのとき、ルミナリアは、自分の周りに美しい白い羽が舞い散っていることに気がついた。
「これは……」
ルミナリアが羽の出所を探して肩越しに後ろを見る。そこには、まるで芸術品を思わせるかのように美しい、一対の光の翼があった。そして、同時に気がついた。自分の後ろでフィアナが倒れていることに。
「お姉……ちゃん……?」
怪物に吹き飛ばされたフィアナは、ぐったりと力なく地面に横たわっていた。
「お姉ちゃん!」
「ぐ……ぅぅ……」
フィアナがルミナリアへと返事を返すことはなく、ただ苦しげな声が聞こえてくるだけだった。
「早く治さなきゃ……!」
「ルミナ、待って! この黒いのをどうにかしないと!」
フィアナの治療に向かおうとしたルミナリアは、アルルメイヤの声に引き留められた。
「ヴゥゥゥ!」
「そうだね、まずはそっちから、だね」
黒い怪物は、ルミナリアへと飛びかかろうと身を低くした。
「ん、させない!」
アルルメイヤが雷球を連続で放つ。しかし、身を低くしていた怪物は、鬱陶しそうに腕を払うと雷球はあっさりと消滅してしまう。
「ヴァァウ!」
攻撃の邪魔をされながらも、ルミナリアから視線をそらさない怪物。
「ん、やっぱり全然効いてない……」
「大丈夫、私に任せて! ……理由はわからないけど、ルミナスブランドならダメージを与えられるみたい」
「ルミナ……わかった、お願い!」
ルミナリアが意識を集中させ、目の前に創り出したのは強い光を放つ三本の剣。その剣それぞれが、今までに作り出した武器とは比べ物にならないほど圧倒的な存在感を放っていた。
「これで……もう終わってよ!」
ルミナリアが右手の杖を振り、三本の剣を放つ。だが、身を低くしていた怪物は、その場からジャンプし、剣を回避する。いや、しようとした。剣は空中でぴたりと動きを止め、その切っ先を空中の怪物へと向ける。
「逃がさないよ!」
ルミナリアの澄んだ碧眼が怪物を見据える。空中という身動きのとれない牢獄に自ら逃げ込んだ怪物に、飛来する剣を回避する方法などもうなかった。
――ドドドスッ!!!
「ヴゥゥゥァァァァァァァ!!!???」
三本の剣が、怪物の腕や足、背中に突き刺さる。じたばたと動くも、空中で固定される怪物。突き刺さった箇所は、白い煙どころか、真っ白な炎が上がっている。
「これで……とどめだよ!」
ルミナリアが、もう一本剣を創り出し、怪物へと放つ。その剣は、真っ直ぐに怪物の胸へと向かって進み、抵抗などないかのようにその身体に突き刺さった。
「ヴァァ……」
怪物がついに動きを止める。その途端に、怪物の全身が一気に燃え上がる。それはまるで、夜を照らす白い太陽のようだった。燃え上がること一分ほど経つと、太陽は徐々に高度を下げていき、やがて、ルミナリア達から少し離れた地面に落ちると共に燃え尽きた。
「ん……おわった……の?」
その様子を静かに見守っていたアルルメイヤが呟く。同時に、ルミナリアは、感じていた嫌な気配がなくなったことに気が付いた。
「うん、もう大丈夫みたい」
ルミナリアは、そういうと翼をはためかせてフィアナのもとへと向かう。どういうわけか、その翼はルミナリアの思った通りに動かすことができた。
「お姉ちゃん……私のために、ごめんなさい。ううん、ありがとう……すぐに私が治すから……」
ルミナリアが地面に倒れていたフィアナの横に座り、その身体を抱き締める。ルミナリアの背中の翼がフィアナとルミナリアの姿を覆い隠すと、優しい光が二人を包み込んだ。
「ん、すごい魔力……ルミナは一体……」
アルルメイヤは、今までにこれほどの魔力を扱える人に出会ったことなどなかった。魔法の扱いに長けた宮廷魔術師や、王家の人間にすらこれ程の魔力を扱う者は存在しない。ルミナリアが放っている魔力はそれほどまでに壮絶なものだった。
やがて、ルミナリア達を包んでいた光が徐々に薄れ始めた頃、フィアナの瞼がゆっくりと開かれた。
「ぅ……」
「お姉ちゃん!」
「ルミナ……ちゃん……?」
目を覚ましたフィアナは、自分がルミナリアの腕に抱かれていることと、自分達を美しい翼が包んでいることに気が付いた。
「よかった……」
「これは……?」
フィアナが、身体を起こし、薄れていく光の翼に触れようとするが、その手は翼をすり抜ける。ルミナリアは、フィアナが無事だったことに安堵すると、急激な脱力感に襲われた。
「うん、もう大丈夫……だね……」
ふらりと、座っていたルミナリアの身体が傾いでいく。
「ルミナ!?」
「ルミナちゃん!?」
(あれ……力が……抜けていく……)
ルミナリアの身体が力を失い、地面に倒れると同時に、その背にあった美しい翼もまた宙へと融けていった。
ルミナリアの背中に現れた翼は……?
そして再び倒れてしまったルミナリアは!?
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では、また次回で会いましょう。




