初めての戦い
更新まで日が空いてしまいました!すみません!
出掛けたり、短編書いたり、風邪引いたりしてました……
さて、今回はついにルミナちゃんたちの初陣です。
第23話です。どうぞ。
ルミナリア達が戦い方の確認をし、移動を再開してから一時間。一行は、ホリティア近くの森の入り口に到着していた。この森は、薬草や木の実が自生しているため、それを目当てに冒険者がよく訪れる場所だった。
「よし、今日はこの森で角兎を探すぞ」
そう、今回ルミナリア達が戦う相手は、あの角兎だった。先日、討伐以来が出され、数は減ってきたものの、元々繁殖力が高く、今でもよく見かける魔物だった。
「角兎って……あのときの……だよね? 大丈夫かな?」
「まぁ駆け出し冒険者が相手にするには少し厄介な部類ではあるけど、今日は私たちもいるから大丈夫よ」
「厄介?」
ルミナリアが以前見た角兎は、フィアナとグリムがあっさりと倒していたように思えたため、厄介な、と言われてもピンと来なかった。
「でもお姉ちゃんたちはあっさり倒してたよね?」
「そりゃあれだ、あのときの角兎はルミナを狙って動きが止まってたからな。本来なら小さい上に素早いもんで、魔法も武器も当たりづらいんだよ。それでいてあの角での一撃は当たり方が悪けりゃ鎧ごと串刺しだ」
グリムのその説明を聞き、ルミナリアはプロテクションの向こうから角を突き立てていた角兎のことを思いだした。もし、あのときプロテクションが使えていなかったら、あの角は間違いなくルミナリアの身体を貫いていただろう。
「そういえば、私たち、いつもよりは動きやすい服だけど、普段とあんまり変わらない格好だよ……?」
「それは動きやすくするためよ。ルミナちゃんとアルルちゃんはいきなり重い鎧なんて着て動ける?」
「ん、間違いなく無理。というかやだ」
アルルメイヤが、ぶんぶんと首を振る。
「でしょ? 動けなくなるくらいなら、なるべく動きやすくして攻撃されないようにした方がいいのよ」
「そうなんだね……」
「ま、それも人それぞれだ。で、この角兎を倒せるようになるのが冒険者の第一歩とも言われるんだよ」
「大丈夫かな……」
「ははは、だから俺たちが一緒にいるんだよ。最初は俺たちと一緒にだが、最終的にはお前たち二人で、出来れば一人で勝てるくらいにはならないとな」
「ん、がんばる」
「う、うん……」
ルミナリアの横で、アルルメイヤがいつものように頷くが、ルミナリアの表情は冴えなかった。そんなルミナリアの手を、アルルメイヤがぎゅっと握る。
「ルミナ」
「アルル?」
「二人で一緒に、がんばろ?」
「……ありがとう。がんばろうね!」
「ふふ、あの娘達なら大丈夫そうね」
二人の様子を見ていたフィアナは、優しく微笑んでいた。
「よし、じゃあ探索開始だな」
「ええ」
「うん」
「おー」
ルミナリアたちは、森の中へと進んでいった。
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心地よい木漏れ日が降り注ぐ、明るい森を歩いていると、先頭を歩いていたグリムが突然立ち止まり、身を低くするよう手で合図を出した。
「……いたぞ」
ルミナリアたちが、グリムの指差す方を見ると、一匹の角兎が草を食んでいた。
「まだこっちには気付いてないみたいね……グリム、どうする?」
「よし、ルミナ、アルル、俺たちがサポートに回るから、思ったように動いてみろ。危ないときは助けてやる」
「……わかった」
「ん、いこう」
ルミナリアとアルルメイヤが、その場で立ち上がると、それに気づいたのか、角兎の耳がピクリと動き、ルミナリアたちの方へと不気味な赤い目を向けた。
「ブーッ!!」
角兎は、その身を低くし、警戒するように鳴き声を上げ始めた。
「気付かれたぞ! 近づかれる前に魔法で攻撃しろ!」
「う、うん! ……いけ!」
グリムの声を受けるまで固まってしまっていたルミナは、慌てて魔法を発動させる。目の前に三本の矢を造りだし、杖を角兎へと向け、その矢を真っ直ぐ放った。空を裂く鋭い音と共に飛翔する矢。しかし、角兎はその場から素早く動き、三本の矢をあっさりと回避してしまった。
「避けられた!?」
「シャーッ!!」
矢を回避した角兎は、ルミナリアにその角を向け、距離を詰めようと地面を蹴り出した。
「ん! させない! スパークボール!」
アルルメイヤは、ルミナリアの魔法が外れたときのために、空中に待機させていた雷球の光魔法を飛ばした。先程のルミナリアの矢ほどの速さは無いが、雷球は正確に角兎へと飛んでいく。
「んっ!」
「ギィィ!?」
勢いをつけ、真っ直ぐ突き進んでいた角兎は、その雷球を避けようと身を捻ったが、アルルメイヤは雷球を方向転換させ、角兎の身体に直撃させた。雷球を受けた角兎は、勢いを殺しきれず、地面を転がる。
「ルミナ、お願い!」
「うん!」
雷球によって動きを止められた角兎は、身体が痺れているのかその場から動けずにいるようだった。
(あのときは何も出来なかった……ただ偶然発動できた魔法に守られて、お姉ちゃんとグリムさんが助けてくれた。でも、今は違う! もう、何もできないなんて嫌だ!)
ルミナリアが、碧い瞳で、角兎を真っ直ぐ見つめる。
「次は……外さない!」
ルミナリアは、先程より多い八本の矢を造り出すと、角兎の方へと放った。
「おいルミナ!? どこ狙ってんだ!?」
グリムが思わず声を上げたのも無理はないだろう。その矢は一本も角兎に当たるように飛んでいないのだ。
「大丈夫!」
ルミナリアの放った矢は、角兎の周囲でピタリと動きを止めると、その先端を角兎に向けた。角兎は、身体は痺れ、八方から矢が狙いを定めている状況のため逃げることができなかった。そして───
「いけぇぇぇぇ!!!」
ルミナリアが杖を振ると共に八本の矢が角兎に襲いかかる。角兎はその矢を完全に避けきることが出来ず、六本の矢がドスドスと鈍い音を立てて角兎の身体に突き刺さった。
「ギィィィ……」
その矢を受けた角兎は、ふらりとよろけると、ゆっくりと地面に倒れていった。
「やった……の……?」
「あぁ、おつかれさん! いきなり二人だけで倒すとはな! 初めてにしてはよくやったじゃねーか!」
グリムが嬉しそうに二人を誉めると、ルミナリアとアルルメイヤは、緊張の糸が切れ、その場にしゃがみこんでしまった。
「よかった~……」
「ん、なんとかなった……」
「アルル、ありがとう! あはは!」
「ルミナも……ありがと。ふふ!」
ルミナリアとアルルメイヤが笑いあっていると、フィアナが後ろから二人を抱き締めた。
「ルミナちゃん! アルルちゃん! 二人ともお疲れ様!」
「お姉ちゃん、ありがとう! でもまだまだこれからだよ!」
「ん、私もがんばる」
こうして、ルミナリアとアルルメイヤの初めての戦いは終わったのだった。
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ルミナリアたちが戦いを終えるのと同じ頃。同じく近郊の森の奥で呆然とする二人組の冒険者がいた。
「なぁ……ここの森に……こんなことができるような魔物……いたか……?」
男が目の前の光景に信じられないといった様子で呟く。
「いや……そんな話知らないぞ……これは急いでギルドに知らせた方がよさそうだな……」
「あぁ……と、とりあえず街に戻ろう!」
その二人組は、慌てた様子で来た道を引き返していった。あとに残されたのは、一直線に木々がなぎ倒されている光景だけだった。
こうして、ルミナちゃんたちは、初めての戦いを無事に乗り切ることができたのでした。
しかし、どうやら不穏な影もあるようです…
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では、また次回で会いましょう。




