お姉ちゃん
ルミナリアはフィアナへと心を開いていきます。
フィアナはだんだんと歯止めがきかなくなっていきます()
それでは第11話です。どうぞ。
「ん……」
ルミナリアは、自分を包む柔らかな感触を感じながら目を覚ました。
「あれ……朝……?」
「おはよう、ルミナちゃん」
「むぎゅっ!?」
ルミナリアが目覚めたことに気がつき、先に起きていたフィアナがその胸にルミナリアを抱き締める。
「ふぃあなはん!? ならひれふらはいー!! (フィアナさん!? 離してくださいー!!)」
フィアナの柔らかな胸に顔を密着させられてしまったルミナリアがもごもごと叫び声をあげる。その顔は見えないものの、真っ赤になっていることだろう。そんなルミナリアに、フィアナが頭を撫でながら優しく語りかける。
「昨日も言ったけど、ルミナちゃんがは一人ぼっちなんかじゃないんだからね? 今から私がルミナちゃんの家族に……お姉ちゃんになってあげる。だから、大丈夫よ。ルミナちゃんが困ったときや悲しいときは素直にお姉ちゃんを頼りなさい」
ルミナリアが、フィアナの顔を見ると、その瞳は真剣な色を帯びていた。早くに母を亡くし、長男として育ったルミナリアには、頼れる身近な女性がいなかった。しかし、今、目の前に頼ってくれてもいいと本気で言ってくれる人がいる。ルミナリアはそんなフィアナの本気に答えようと心を決めた。
「僕は、フィアナさん……ううん、フィアナお姉ちゃんに会えて本当によかったって思ってます。ありがとう!」
ルミナリアが、フィアナの胸から少し顔を離し、フィアナに答える。その目元に光るのは、昨夜のような悲しみの涙ではなく、嬉しさに溢れ出した涙だった。
フィアナが真面目な顔でいられたのは、ルミナリアのその表情を見るまでであった。急にフィアナの顔がにへらと緩む。
「あぁールミナちゃーん!! もうなんてかわいいの! うふふふふふ」
「おへーひゃん!? (お姉ちゃん!?) ひゃああああああああ!?」
再びフィアナの胸に沈むルミナリアなのであった。
それからしばらく後。
「じゃ、ルミナちゃん、朝食にしましょう。先に下で待ってるわね」
楽しげにフィアナが部屋を去って行ったが。
「ひゃい……」
そこには、虚ろな目をしたルミナリアが取り残されていた。
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ルミナリアとフィアナは、朝食を食べた後、着替えがないと困るルミナリアだったが、フィアナが洗っていたため、昨日と同じ白いワンピース姿であった。
「お姉ちゃん、ありがとう。よく乾いたね?」
「そこはほら、炎でちょちょっと……ね?」
乾燥は荒業だったようだが。
「そうだ、ルミナちゃん。今後は自分のことは私って言いなさい。僕って言ってるルミナちゃんももちろん可愛いんだけど、やっぱりうるさい人っているのよ」
「え……うん、わかった……」
(父さんが電話越しに自分のこと私って言ってたし、特におかしなことでもないし)
自分の事を私、と呼ぶことには特に抵抗はなかったため、すんなりと受け入れるルミナリアであった。
「さて、じゃあそろそろ出発しましょうか」
「うん、またあの人混みを歩くの……?」
昨日の人混みで苦労したことを思い出し、げんなりするルミナリア。
「大丈夫よ、今日買いに行く服や小物なんかは別の通りで揃うから、昨日と違って普通に歩けるわよ」
「あ、そうなんだ……よかった」
昨日ほど苦労せずに済みそうだとほっと息をつくルミナリアであった。
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「まずは、必要そうな小物とかを揃えていきましょう。洋服を見るのはそれからね」
「うん……なんだか、いろんな人から見られてるような……?」
二人は様々な商店が並ぶ通りを歩いていた。そんな中、ルミナリアは、すれ違う人々に視線を向けられていることに気が付いた。周囲を見てみると、やはりルミナリアを見ている人々がちらほらと見受けられる。
「ふふ、ルミナちゃんの綺麗な銀髪は珍しいうえに、こんなに可愛いんですもの。しかたないわよ」
「えっ……えっ!?」
自分がまさかそんな視線にさらされる日が来るなんて、と顔を赤くしておどおどしてしまうルミナリア。そして、ルミナリアは周囲を見ながら気づいた。自分以外に銀髪の人など誰もいないことに。
「お……お姉ちゃん……」
「うぐっ……大丈夫よ。悪いことしてるわけじゃないんだし、少しは慣れていかなきゃ!」
ルミナリアの自覚なしの上目づかいにダメージを受けながらも、義姉としての威厳を何とか保ったフィアナだった。これが二人きりの時であったならば、朝と同じことになっていたであろうが。
「お姉ちゃん! 早くいこう!」
「はいはい、こっちよ」
真っ赤になったルミナリアに急かされ、足早にその場から離れる二人であった。
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二人が必要な小物を買い揃え、荷物の配達してもらうよう依頼し終わった頃には、午前中が過ぎてしまっていた、喫茶店のような場所で軽食を取った後、洋服店にやってきていた。
「いらっしゃいませ、これはフィアナ様。本日はどのようなものをお求めですか?」
「こんにちは。今日はこの子の服を探しにきたの」
入口の扉をくぐると、女性店員が気さくに話しかけてくる。ここはフィアナがよく利用している店だったのだ。
「あら、可愛らしい子……それに素敵な髪ね……こんにちは、お名前は?」
「こんにちは、ぼ……私は、ルミナリア、です」
僕、と言いそうになってしまったが、言い直したルミナリア。女性店員には特に違和感を持たれなかったようだ。
「ルミナリアちゃんね、よろしくね。いくつなのかな?」
「そういえば私も聞いてなかったわね」
「14歳です」
そういえば自分の年齢を伝えていなかった、と考えたルミナリアは、かわってしまった今の年齢を答えた。
「「え?」」
「え!? なにか……変でしたか!?」
ルミナリアの年を聞いた瞬間、フィアナと店員の声が重なる。何か言っただろうかと戸惑うルミナリアは知らなかった。この世界での14歳の女の子の身長は155cm程であるが、それに対し、ルミナリアの身長は140cm前後しかなかったのだ。
「ルミナちゃん……ホント……?」
「え……だってバングルにそう書いてます……けど……」
「今までずっと11、2歳くらいだと思ってたわ……」
「えー……確かに私はちっちゃいですけど……」
「あはは……と、とりあえず服を見に行きましょう」
「ご、ごゆっくりどうぞー……」
気を取り直した二人は店内を歩き始めた。
店内を歩き始めてすぐ、ルミナリアは、ここは女性向けの服や下着しか売っていないことに気が付いた。
「ルミナちゃん、下着も買わないとね。特にブラも用意しないと」
「え!? 私いいよ!」
「だーめ、いくらまだ小さいからって、しっかりブラもつけておかなきゃ形が崩れちゃうわよ?」
「そんなぁ……」
ルミナリアはフィアナに手を引かれ、試着室に連れて行かれた。そこでワンピースを脱がされ、胸のサイズを測られた。ルミナリア本人は胸のサイズなど全くわからなかったが、フィアナは。
「ふむふむ……ちょっと待っててね」
と言い、試着室から出て行ったかと思うと、いくつかのブラジャーを手に戻ってきた。
「ルミナちゃんのサイズならこのくらいね、着け方わかる?」
「どうしてもつけなきゃ……だめ?」
「そ……そんな目をしてもだめなんだから! はい! じゃあもう私がつけてあげるからちゃんと覚えてね!」
「うぅー!」
どうしてもつけたくはなかったが、最後はフィアナの手によってブラジャーを着けさせられてしまうのであった。ブラジャーのつけ方を教え込まれ、今までなかった締め付けられるような感覚にもそのうち慣れなければならないのか、と大きなダメージを受けるルミナリア。
「じゃあ次は洋服ね、ルミナちゃんは可愛いからどんな服でも似合いそうで楽しみね!」
下着は仕方ないとして、出来れば普段から着る服くらいは、スカートや可愛らしすぎるデザインを避けたいルミナリアは、それを提案するためにフィアナへ話しかける。
「お姉ちゃん、私はできればズボンみたいな動きやすい服が……ひっ……」
その言葉を最後までいう事は出来なかった。
「大丈夫、お姉ちゃんがルミナちゃんのために可愛い服を選んであげるからね? ふふふふふふ……」
フィアナが、ルミナリアの髪を整えた時と全く同じ目をしていたからである。瞬間的に悟ってしまった。
(これは……もう逃げられないね、うん……)
それからは、一方的だった。いつしか先ほどの店員も参加して、二人でいろいろな服を持ってきては虚ろな目をしたルミナリアに服を着せていく。ルミナリアは言われるがままに身体を動かすのみであった。
「あぁ……ルミナちゃん! ルミナちゃん! 見て!」
「ふぇ……?」
しばらく虚ろな目をしていたルミナリアは、嬉しそうに呼びかけてくるフィアナの声で我に返った。そして、目の前に置かれた姿見に映っているものを見て、思わず息をのんだ。
「わぁ……」
フリル付きの大きな黒いリボンがルミナリアの綺麗な銀髪を飾りつけられ、バングルに巻かれていた以前のリボンも外され、そこには可愛らしいフリル付きのリボンが巻かれている。着ている服は、リボンと同様の黒を基調とした、たくさんのフリルがついたロリータ服だった。ルミナリアの白い肌と黒い服の美しいコントラストは、まるで精緻なビスクドールのようであった。
「ふふ、どうかしら? 気に入ってもらえかしら?」
「うん……綺麗……」
思わず返事をして思い出す。それは他人ごとではなく自分の姿なのだという事を。
「じゃあこの服もお願いね!」
「あ……待って!? 今のなしで!! お姉ちゃーん!!」
ルミナリアの悲しみの叫びは、喜んで会計へと向かうフィアナの耳に届くことはなかった。
女の子の服って難しいです!
コーディネートってどうしていいかわからないのです……
今後違和感のある場所があったりしたら教えていただけると助かります。
では、また次回で会いましょう。




