-幕間-夢
数日たったある日の深夜のこと。セレンは部屋で魔法の勉強をしていた。
「セレン…入っていい…?」
「クレア?いいよ」
セレンは魔法の本を急いで片付けて部屋のドアを開けた。そこには寝間着姿にケープを羽織ったクレアがいた。
「どうぞ」
「うん…おじゃまします…」
そう言って入ってくるクレアの表情はとても暗かった。
「なにか飲む?」
「ん…飲む…」
セレンは自室の小さなキッチンで自分は紅茶、クレアには暖かい蜜入りのミルクを作った。
「はい。クレアこれ好きだよね?」
「うん。ありがとう」
2人は静かに飲み始めた。クレアのカップが半分くらい空になったところでクレアが話し始めた。
「…夢をね、見たの」
「夢?」
「うん…」
「どんな?」
「……人が沢山いて、とっても綺麗な女の人がいて、みんなその人の方を向いて何か言ってるの。何言ってるかわかんないけど…女の人は笑顔で手を振ってて…で、急に場面が変わってその女の人が……」
「…うん。」
「その女の人死んでたの…そこで目が覚めたんだけど…なんか生々しくて、本当にあったんじゃないかって…私…セレンに拾われる前の記憶ないから…私が」
「違うと思うよ。大丈夫。」
「でも…!」
「私たちくらい魔力が多いとね、未来視とか異世界を覗いたりとかそういうことが出来るの。けど未来とか異世界なんて知る必要は無いって無意識にセーブされてるんだ。きっとクレアが見たのは異世界の話。クレアとは全く関係ないと思うよ」
「そう…かな…」
「うん。きっとそうだよ。だから怖がらなくていいんだよ」
セレンはクレアを抱きしめた。
「うん…でも、もうそんな夢見たくないから、セレンの所で寝てもいい?」
「うん。いいよ。久しぶりに一緒に寝よっか」
セレンがクレアを拾った頃、クレアはよく悪夢にうなされていた。悪夢にうなされないようセレンは一時期クレアと一緒の部屋で過ごしていた。成長して悪夢を見ることは少なくなったのでクレアは自室で寝るようになった。
(きっと、その夢は…)