冬
ぱらぱらと雪が舞うはずの季節、冬ですが、僕が住む地域では雪が振りません。残念です。シロップをかけて頂こうかと思ったのですが。
「でも、いざ雪が降って食べようとしたらお母さんが止めるんですよね」
「それはそうでしょうが。雪や雨って空気中のホコリやゴミが核になって出来てるのよ?汚いじゃない」
「僕は気にしませんが」
いいじゃないですか、見えないんですから。
「お母さんが気にするのよ」
「そうなんですか。なんだか、お手数おかけします 」
「いいのよ、やらないでね?」
「ええ、しませんよ。これからはね。」
「そう、いい子ね」
そう言って僕の頭を撫でてくれた。なんだか久しぶりのような気がした。
「まあ、とにかくあなたはまた少し賢くなったわね」
僕もそうですが、あなたもそうじゃないですか?
「で、その手に持っているものは何ですか?」
「え?スマートフォンよ?」
「…そうですか」
僕のお母さんはこんな馬鹿だったのでしょうか。まあ、想像が違うのも無理はないでしょう。
「それで、お母さん」
「なあに?」
「お父さんは何時頃帰ってきますか?」
時計が19時47分を指している。
「そうね、もう少しね」
とある冬の出来事である。