秋
少し肌寒くなってきた今日この頃。余談ですが 、季節は秋ですが秋空というものが何なのか理解しにくいです。単純に、秋の空なのか、何かを示す名称なのか。個人的には 前者だと思うんですが。
「どっちだと思いますか、お母さん」
「そうねぇ、秋の澄み切った空のことを秋空というから、強いて言うなら両方じゃないかしら」
ふふん、と褒めなさいと言わんばかりに胸をはる。その胸囲では悲しくなるだけですよ、お母さん。あと、その手に持っているスマートフォンがなければもっと良かったと思いますよ。
「そうなんですか。てっきり知らないかと」
「嫌ねぇ、あなたのお母さんは博識で若くて美しいのよ?誇りなさい。あがめてもいいわよ」
博識は、手に持つスマートフォンで否定され、若さは、苦労の跡であると主張している刻まれた皺で否定され、美人なのは……まあ認めてやってもいいでしょう。黒髪のロングという僕から見た 、大和撫子であるための最低基準を満たしていますし、全体的なパーツのバランスも良く、鼻筋もスラリと美しく目もぱっちりと開いている。
「よく見てみると、誰だこの美人!僕の母親がこんなに美人なわけがない!」
「もしかしたら違うのかもしれないわよ?」
「え?」
「嘘ですよ。あなたは私がお腹を痛めて産んだ子供ですよ?そこは誇りに思ってもいいんですよ?」
そう言い、くすりと笑った。
いつかの秋の日の出来事である。