表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

リバウンド

作者: 誰化

 ぼくはバスケをしていた。好きなわけではなかったのかもなしれない。練習はきついし、上手くなって、花形の選手になれることもなかった。でも、練習はさぼらなかった。ただ一つ得意だったのは、リバウンドをとることだった。バスケをはじめるきっかけになった漫画の主人公が、リバウンドをとって走っている姿にあこがれた。


 高校生になり、バスケを続けるつもりはなかった。アルバイトをして、じいさんの助けになりたかった。でも、アルバイトをするつもりだと言うと、おまえが働くなんて、まだ早い。バスケでもして、走りまわっていろ、と言われた。

 バスケを続けることに、抵抗はなかった。やっぱり、じいさんの言うとおり、バスケをしていることのほうが似合っていたのかもしれない。

 高校でも、リバウンドだけは誰にも負けたくなくて、練習が終わって、体育館が使えなくなったあとも走りこんだりしていた。身長は、一般の高校生としては高かったけど、バスケ部としては、特別高くはなかった。でも、くらいつくように、走って、飛び回って、リバウンドをとっていた。

 1年の秋、3年生が引退した後、ユニフォームをもらった。15番だった。じいさんに話すと、その日焼肉に連れていってくれた。そして、ぼくは3年間、自分の意思で15番をつけ続けた。


 物心がついたときには、じいさんと2人で暮らしていた。親の顔は知らなかった。でも、それで困ったことはなかった。じいさんは、学校におにぎりをたくさん持っていかせてくれた。バスケは体がでかくないといけないから、とか言っていた。


 練習試合には出たり、出なかったりでいたが、2年の秋からはスタメンだった。そのころには、身長が180を超える程度には伸びていた。

 公式戦はいくつかしたけど、一つ勝てればマシなほう、くらいだった。

 3年になり最後の夏、いくつか勝ってから、最後の公式戦になった試合、ぼくはリバウンドの自己最高記録をだした。そして、試合には負けた。

 水道で頭から水をかぶり、泣かないようにしていると、後ろから、

「ナイスガッツ。」、と声をかけられた。知らない女の子だった。ジャージを着ていることから、バスケの選手だということはわかった。

 「去年も15番つけてたよね。けっこう他の学校からも目立ってたみたいだよ。」

ぼくは自分の意思で3年間同じ番号をつけていたことを話すと、

「3年間ユニフォームをもらえない人からすれば、ぜいたくな話かもね。」

たしかに、3年間ユニフォームを着続けられたことは、幸運だったかもしれない。でも、同時に、

「それだけ努力してたってことでもあるよね。」ぼくと同じことを女の子は思っていてくれたようだ。

「これから試合なんだ。握手してくんない?リバウンド、たくさんとれるかもしれないから。」

そして、ぼくは女の子と握手をして、女の子は会場に向かった。ぼくはチームメイトにひやかされた。

 それから、ぼくは女の子の試合を見ていた。女の子はうまくて、点もたくさんとっていた。そしてリバウンドもとっていた。

 

 ぼくはバスケ部を引退したあとも、女の子のチームの試合を観戦しに行っていた。そのことに女の子は気づいていたらしく、試合のたびに手をふっていた。試合の後、話をする時間が少しとれた。女の子の学校は、ぼくの学校のそばだったらしく、会う約束をした。それからは女の子の練習が休みの日には会うようになった。

 女の子のチームは勝ち続け、準決勝まですすんだ。そして負けてしまった。女の子は、もっとリバウンドがとれていれば勝てたのに、と泣いていた。

 次の日、女の子もチームから引退したらしく、女の子の最後の夏も終わった。


 バスケを引退してから、ぼくと彼女は、しょっちゅう会うようになった。

 ぼくと彼女の高校バスケは終わったけれど、高校3年の夏は始まったばかりだった。彼女とたくさん遊ぼうと話をした。受験勉強は、遊んでから考えようとか言っていた。

 そのことをじいさんに話すと、一度彼女に会わせろと言いだした。さらに、そのことを彼女に話すと、喜んで会うと言い出した。


 今年の夏は、バスケをしていたときよりも、なかなかにぎやかな夏になりそうだった。

 そしてそれを喜んでいるぼくがいた。


                    Fin


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ