:序章
ホラーです。
平凡な日常とは、実に平和の象徴である。
これは持論だ。
しかし、どうもこの平凡な日常は、平和であるが故に、実に退屈である。
この思考に行き着くのは、
私、千影 藤九郎だけではないはずだ。
特に勉強に打ち込んだ訳ではない。成績上、教師に良い子ちゃん顔を貼り付けて優等生を装い、普通に皆勤賞を目指して真面目に授業を受けていたのだ。
しかし、その優等生が公にされる瞬間を迎えてしまった。
定期テストの結果。
私は、そのテストで『普通』に全教科トータルスコアを叩き出した。私の周りには、様々な目が向けられるようになった。
実に胸糞が悪い。
私の中に、憎悪や人への嫌悪感が生まれた。
力のある者に人が集まるとは、本当の事だと実感した瞬間であったと同時に、私の名は、全国に知れ渡ってしまった。
−−−あぁ、本当に……本当に……。
平凡な日常とは、実に平和の象徴である。
これは持論だ。
しかし、どうもこの平凡な日常は、平和であるが故に、実に退屈である。
この思考に行き着くのは、
私、立氷 維咲だけではないはずだ。
私は、代々、帝に仕えてきた武士家系の出である。しかし、今のご時世、帝と言えば天皇を指す。ただの都立大学の三回生である私が、天皇の下に仕えるなどあり得ない。当時は名を轟かせた『立氷』の名も、今はただのレッテルに過ぎない。
私は家柄、武道という武道を習ってきた。空手、柔道、殺陣、薙刀、剣道、弓道、カリ、合気道、コンバットサンボなど。おかげで、異性には遠い目で見られたものだ。
同性からは、ちやほやされ、崇められる。告白もされた。
そして皆、似たような事しか言わない。
お世辞も崇めるのも甚だしい。
−−−あぁ、本当に……本当に……。
平凡な日常とは、実に平和の象徴である。
これは持論だ。
しかし、どうもこの平凡な日常は、平和であるが故に、実に退屈である。
この思考に行き着くのは、
僕達、瀬能 奏と、瀬能 肆揮だけではないはずだ。
僕達はいつも一緒だった。感性の良い子供に育ってほしいと、音楽を通じて身を結んだ両親は、小さい頃から、俺達二人にクラシックを聴かせてくれた。
そんな僕達も影響されて、僕、奏は、母親と同じ、ヴァイオリンを。弟の肆揮は、ピアノを弾き、父親と同じコンダクターを。
実力が認められ、両親の薦めでコンサートなどを行うと、皆褒め称えてきた。
しかし、無垢な少年時代などない僕達にとって、皆、金に群がってきた汚い大人にしか見えなかった。
まだ何十年も生きていける上等な株を手元に置こうと、汚い手を伸ばしてきた。
伸ばしてきたから、全ての手を叩き返し、両親の前から姿を眩ました。
−−−あぁ、本当に……本当に……。
平凡な日常とは、実に平和の象徴である。
これは持論だ。
しかし、どうもこの平凡な日常は、平和であるが故に、実に退屈である。
この思考に行き着くのは、
私、桜庭 弥做だけではないはずだ。
私にとっての平凡な日常とは、目覚めてから就寝まで、視界に異形が映る事だ。
私の家は神社で、私は巫女の仕事もしているのだが、その家柄のせいか、幽霊が常に周りを漂っている。絡んでくる霊はいないものの、いい気分ではない。
クラスメイトに憑いている霊も多い。怪我をさせないように、忠告するも聞かない者が当たり前で、忠告した通り怪我をすると、私を気味悪がった。
しかし、それでいい。私は更に人を遠ざけようと、鈍い光を目に宿らせ、忠告をし続けた。
しかし、駄目だ。つまらない。
−−−あぁ、本当に……本当に……。
平凡な日常とは、実に平和の象徴である。
これは持論だ。
しかし、どうもこの平凡な日常は、平和であるが故に、実に退屈である。
この思考に行き着くのは、
俺、××××××だけではないはずだ。
今回も、かなり面白い連中が巻き込まれたらしい。
……あぁ、また一つの都市伝説が動き出した。
……あぁ、また一つの能力が生まれようとしている。
だけど駄目。駄目だ。
平凡すぎる。
−−−…あ、もう時間だ……。
−−−あぁ、本当に……本当に……。
−−−あぁ、本当に……本当に……。
−−−何か、想像もしないような、突飛な出来事でも、起きてくれないだろうか…………。