告白!
皆さんはこんな経験ありませんか?
俺は通学途中、下を向いていた顔を上に向けた。
ふと気になる奴の、いや、気になる奴らの話し声が聞こえたからだ。
北田一郎、次郎兄弟だ。
「加藤は残念だったな。」と一郎。
「まぁ、しょうがないよ。」と次郎。
「でも兄貴がまさか・・・う・・・ぐすん。」
「泣くな、一郎。兄貴ならしょうがないよ。それじゃ、今日は開き直って―――
そんなに簡単に開き直るのか。まぁ、彼氏いる奴にしつこくするやつもどうかと思うが。
でもこいつら、結構いい奴だな。潔いっていうかなんか、うん。
――兄貴を恨むか。」
前言撤回。何なんだよこいつら。いや、正確には次郎。何が今日は開き直って。だよ。
全然開き直ってないどころか恨むなよ。お前と違って兄貴イケメンだろ。
そんなことを思っていると、横を男子生徒が通り過ぎた。ヘルメットを被って。マウンテンバイクに乗って。うちの生徒だ、制服からして。でも、黒人だ。転校生だろうか。俺の学校に今は外国人何ていなかったはずだ。それにしても、恐ろしい転校生だな。登校初日まさかの自転車登校。いや、事情があるやつは別に自転車登校してもよかったはずだ。が、マウンテンバイクはダメだろ。ダメというか、こんなこと過去に例がないだろう。
「あいつ、馬鹿だな。」
あいつを見た全生徒が思うことだろう。
光が学校についたとき、何だか目にしたくないやつが眼中に入ってきた。
あ、目が合ってしまった。そいつはこっちに近づいてくる。当たり前だが、もうヘルメットはしていない。
「スイマセーン。ショクインシツ、イッタイドコネー?」
ヤバい、殴りたい。
でもこいつ、自転車置き場の場所がわかって、職員室の場所がわからないとは、矛盾していないだろうか?
「エット、コッチネー!」
バキッ
殴られた。
喋り方を真似したら殴られた。
「オウッ、ソ~リ~。ナンカ、ムカツイタネ。」
そっくりそのまま返そうじゃないか。
「えっと、職員室こっちです。」
光は丁寧に外国人を職員室まで誘導した。
「ここだよ。」
「オウ、サンキュッベリマッチ!」
ヤバい、蹴りたい。
だが光はその気持ちを抑えつけて、自分の教室に向かった。
「皆さん、今日は新しい転校生が来ました!」
本村先生が楽しそうに喋りだす。
へー、転校生ね。どんな奴だろう。男か?女か?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
何だろう。今回やけにスポットライトを浴びていたキャラがいたと思う。
いやいや、でもでも、そんなフラグが立つわけない。だって、主人公の初恋の相手が第二部で転校したり、主人公の第二の恋の相手が第二部で転校したり、幼馴染の女子は、俺に惚れていて毎日弁当作ってくれる訳でもないんだ。ばんばんフラグを潰すこの小説にそんなありきたりのフラグが立つわけない。
「なんと!また外国人です!」
いやいやいやいやいや。たまたまだ。あいつじゃない。あいつじゃない。あいつじゃない。あいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃない
「どうぞ!入ってきて!」
あいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつ@!♯$#?m9(^ω^)
「オウッ!ミーノナマエワボブネ!ヨロシクネ!」
はぁ、今日はついてない。今月一ついてない。
「えっと、ボブ君の席は・・・・田中君の横でいいよね!」
「オウイェイ!」
はぁ、今日はついてない。人生一ついてない。
「田中君。ボブ君に教科書見せてあげてね。」
はぁ、今日(中略)人類一ついてない。
それから、大変だった。教科書を見せたり、教科書を見せたり、教科書を見せたり教科書を見せたり。
光は昼食を終えて、廊下に出ていた。
「今日は風が騒がしいな。」
ふっと呟いてみた。
「でもこの風少し泣い
「乗らんでいい。」
横を見ると加藤美月が立っている。
「どうしたの?いつも教室にいるのに。」
「いや別に。てか、なんでいつも教室にいること知ってるんだよ。」
「別に~」
「で、何か用か?」
「いや別に、何もないけど~」
うざっ
「じゃ、私はこれで。バイバイ、非リア充君。」
ああ、そういうことか。
美月が走っていくほうを見ると、北田一郎、次郎から今日も大変恨まれている北田太郎先輩がいるではあるまいか。要するに、美月は見せびらかしに来たのだ。自分が彼氏とラブラブなところを。
「っけ」
光は自分の教室に戻った。
五限目が始まり、光は机に手を突っ込んだ。
くしゃっ
何かが軽くつぶれる音がした。光はそれを手にして、引っ張り出す。
こ・・・これは!!
ハートマークのシールが貼ってある手紙。これが噂のラブレターというやつか。
わが世の春が来たーーー
と、一瞬叫びそうになった。内容を見てみると。
私はあなたのことが好きです。
放課後、体育館裏に来てください。
とだけ書かれていた。
クラスの奴の冷やかしではないだろう。
俺は男子としか仲が良くないし、
男子にこれだけ字がきれいな奴はいない。
ということは。
春が来た。
光は、放課後がとても楽しみになった。
放課後になり、光は体育館裏に向かう。
今日で俺は、リア充になるかもしれない。
もう美月にも馬鹿にさせないようなラブラブカップルが成立するかもしれない。
そんなことを思っていると、あっという間に体育館裏のすぐそこまで来た。あとは左に曲がるだけだ。
光は唾をごくりと呑み込み、左へ曲がった。そこには。
長身ですらりとした体型のあの子が立っていた。
俺はこいつのことをよく知っている。多分、俺がクラスで一番よく知っているだろう。多分。
俺には男の友達しかいないし、そいつらは皆、字が汚いためこんな字がきれいな冷やかしの手紙が書けない。あっている。大正解だ。だが、こいつは。例外というか、想像もつかなかった。
そう、皆さんの予想通り、この手紙をくれた人は。
「オ、オウゥ・・・キテクレタノデスネ・・・」
皆が大嫌い。そう、男の制服を着ている外国人なわけです。
「ええっと・・・何これ?」
「ジツハデスネ、キョウアナタニ、ヤサシクシテイタダイテ、ソノ・・・コ、コイニ、オチチャッタノデスヨ。」
「俺が何したよ!?」
「ミチヲオシエテクレタリ、キョウカショヲミセテクレタリ、キョウカショヲミセテクレタリ、キョウカショヲミセテクレタリキョウカショヲミセテクレタリ・・・。」
「いえいえいえいえいえいえいえいえいえ。当たり前のことをしたまでですよ!?」
汗が止まらない。
「トニカク!ボ、ボクト、ツキアッテクダサイ!!」
――間0.02秒―――
「ごめん無理。」
「ジャ、ジャア、セメテ、キスダケデミ!ソレデアキラメマス!」
――間0.002秒―――
「無理だわ。」
「オウ!センキュッ!」
「え?え?え?」
ボブが歩み寄ってきた。
人間という生き物は、精神的窮地に追いつめられると、記憶を書き換えてしまうしてしまう生き物らしいんだよ。
つまり。
がしっ
掴まれた。
ぶちゅうっっ
キスされた。口と口で。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
目が覚めると、ベッドの上。
「な、何だ。夢か。」
右手のほうを見ると、薬品が色々置いてある棚。
左手を見るとボブが椅子に座っている。
「ふう。」
もう一度右を見る。薬品が色々置いてある棚と先生が一人。あれは保健の先生だ。
左を見ると、ボブ。笑ってこっちを見ている。歯が肌の色とは逆にとても白い。
「ふう。」
皆さん。暫くお付き合いください。
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」