ある春の日、公園の小さな救出作戦
これは私の昔の実体験をもとに比喩とか事実を改変したり名前を変えたり出来事を少し付け足したりして作ってます。ずいぶん昔なので曖昧なところもあるかと思いますがご容赦ください。
これはある春の日、卒業式を終えた小学六年生たちの話である。桜が満開になり、新たな学校生活の始まりを実感させる。翔太が言った。
「なんか、小学校って意外と短いな」
それに対し奏斗はいつも通りの声で返した。
「俺一年生のころの記憶ねーわ。あ、公園もう見えてきたぜ」
踏みなれた公園の土は、なぜか卒業前よりも固く感じた。
「何して遊……」
「お! やっほー!」
翔太の声をさえぎって、四人の三年生が元気よく言った。公園に先にいたのだ。いつも、約束をしてるわけじゃなくても自然に一緒に遊ぶことになる。
「遊ぼ! この前やった泥団子投げやろ!」
翔太は言った。
「えぇ……服汚れてお母さんに怒られたからもうやりたくねえんだけど……」
三年生たちは少し残念そうに溜息をついた。奏斗が言った。
「そうだ! 俺、家に水風船あんだよ。それなら投げ合っても大丈夫でしょ! それもってくる!」
「賛成!」
翔太が水風船を投げられてずぶぬれになったり、試しに水風船で野球しようとしたりして爆発したりした。賑やかな公園に笑い声が響き渡る。
卒業式を終え、ほぼ中学生のはずなのに、その瞬間だけは自分が小学生のままみたいに感じた。
しかし、それはすぐに打ち破られた。一人の三年生、春樹によって。春樹は割れた水風船のゴミを、わざと水道の中に捨てたのだ。翔太は言った。
「やめろよ! もし海に流れて魚が食べたらどうするんだよ!」
皆が口々に注意するが、春樹は悪びれもせず
「魚が死んでも俺は生きられるし」
と言った。苛立ちすぎて、持っていた水風船を握りつぶしてしまって自爆した。
いつもならみんな爆笑するはずだったが、しなかった。翔太が言った。
「環境汚染で魚が食べたりしたら死ぬんだぞ!社会の授業で習うだろ!」
「別にいいし!」
翔太は試しに嘘を吹き込んでみる。
「水風船が海水に混ざると爆発するらしいよ」
「嘘だろ、わかってんだよ。」
さすがに見抜かれたか。春樹は抵抗し続ける。
俺たちは説得は無理だと判断し、ゴミが水道の奥深くに入ってしまわないうちに、発生した問題の解決に急ぐことにした。
まずは太くて長い枝を使って取り出そうとするが、うまくいかない。枝にうまく絡まらない。絡まったとしても、取り出す直前で落ちる。悪質なクレーンゲームをやっているような気持ちになった。
それでもなんとか一つだけとれたが、ペースが遅すぎる。でも時間は十分にある、根気よくするだけだ。そう思っていた矢先、頭上に冷たい水が降り注いだ。
春樹が、ペットボトルに水を入れて俺たちにかけてきたのだ。それなら別に無視でいいのだが、次に起きた出来事に俺たちは憤怒した。
せっかく取り出すことができたゴミを、もう一度水道に入れなおしたのだ。先ほどの努力が水泡に帰した。たった一人にここまでイラついたのは久しぶりだ。
「クッソ……!」
「もうあきらめるか……?」
皆が言う中、翔太は言った。
「ここで諦めてどうする、魚という一つの命を無駄にするわけにはいかない」
「……わかった」
俺たちは妨害に屈さない。しかし、屈さないとは言ったができるとは限らない。何度も繰り返される妨害。取れたゴミをみんなで監視して守っているが、春樹はわざわざご親切にほかのお菓子のゴミなどを見つけてきて、水道に入れる。
このままだと一生終わらないだろう。出すペースより入れるペースの方が圧倒的に多い。「帰る時間」というタイムリミットも迫っている。奏斗が言った。
「俺、おとりになってくる」
翔太は心配そうに言う。
「え……危険じゃ……?」
「大丈夫」
その一言だけで、翔太は納得した。奏斗は春樹に見ているだけでイラつく動きとともに、ありとあらゆる罵詈雑言を発し、煽り倒した。春樹は無事、と言っていいのかはわからないけど、闘牛のように奏斗へ向かって突進していった。
三年生の一人が言った。
「とりあえず邪魔は入らなくなったけど、ぜんぜん取れないよぅ……」
悩んでいると、颯真が言った。
「そうだ!あれを見て!」
視線の先には、ベンチに座ってコンビニ弁当を食べているおじさん。
「え? なんで?」
「あの人、箸を使ってるでしょ? あんなかんじで、枝で挟めば簡単に取れるはず!」
なるほど!名付けて「日本人魂作戦」だ。
「拾ってきたぞ!」
奏斗が会話を聞いていたのか、春樹から逃げながら細い枝を何本か持ってきてくれた。颯真と翔太は、今まで日本で生きてきた経験を生かして器用に次々とゴミを取り出す。ただの枝で拾う方法を悪質なクレーンゲームだとすると、二本の枝で挟むのはお弁当を食べることより簡単だ。
無事にすべてのゴミを外に出し、海の命を守り抜いた。この協力により、仲間たちの絆はより深まった。最初は水風船を握りつぶすほど嫌いだった春樹にも、絆ができたという観点では感謝している。帰り道、奏斗が息を切らしながらに言う。
「あー、疲れた」
「奏斗でも疲れるんだな」
「俺を機械かなんかだと思ってる!?」
柑子色に染まった夕焼け、小学生のころと何も変わらない会話をした。
「じゃあ、また明日。」
中学生になっても、この関係が続くといいな。
読んでいただきありがとうございます。
今考えれば水道に流れたゴミは結局は下水処理場でとられるはずなのであんまり意味はなかったかもしれません。それでも、絆は深まったのでOKです。




