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呪われた音色

上島凪は、廊下を歩いていた。微かに音色が聞こえてくる。

誰かがピアノを弾いている?

凪は、音楽室の扉を開けた。

誰?

凪は、ピアノを弾いてる女子生徒の背中を見ていた。突然、音色が消えた。ピアノを弾いていた女子生徒が立ち上がった。そして、凪のいる出口の方に歩いてきた。凪は、顔を見てやろうと思ったが。前髪が女子生徒の顔を隠している。

「あの、ちょっと」

凪が、女子生徒に声をかけた。

女子生徒は、黙ったまま出口へ向かった。そして、開いた扉をすぅっと抜けていった。凪は、返事がなかったことに腹を立てたが、すぐに疑問が浮かんだ。

あの人は、何を弾いていたんだろう?

凪は、この高校ではピアノの得意な女子生徒として知られていた。コンクールにもいくつか入賞しているし、小さい頃から多くの曲を弾いてきた。凪は、さっきの女子生徒が弾いていた曲を聴いたことがなかった。

「いいか、別に」

凪は、気にしないことにして部屋の扉を閉めて放課後のピアノの練習を始めた。凪の弾く音色が、静かな廊下に微かに響いた。


次の日も、凪は学校の放課後にピアノの練習のため音楽室に向かった。また、あの音色が聞こえてきた。凪は、足早に音楽室に急いだ。凪が音楽室に入ると、昨日いた女子生徒がピアノを弾いていた。凪は、女子生徒が弾いてる曲を聴くことにした。聴いていると、凪はだんだん重苦しい気持ちになった。その音色に、不安や恐怖を感じた。女子生徒がそれを弾くのをやめるのを待ったが、ずっと弾き続けている。凪は耳を塞いだ。だけど、耳にその音色は聞こえてきた。

お願い!もう弾かないで!

凪は耐えられなくなり女子生徒の肩を掴んだ。急に女子生徒は、ピアノを弾くのをやめて立ち上がった。凪は驚いて後ろに退く。女子生徒は凪の方へ振り返った。昨日と同じで、顔は前髪で隠れて見えない。二人の間に沈黙が流れる。女子生徒がゆっくり出口の方へ歩いていく。

「あなたが弾いてるその曲ってなんか不気味だわ」

凪が女子生徒に向かって話すと、相手は足を止めた。

「何て曲なの?あなたが弾いているの」

凪がそう言ってからしばらく相手は黙ったまま立っていたが、扉を開けて出ていってしまった。それから、その女子生徒は音楽室に来なくなった。


次の日、凪は放課後の音楽室で女子生徒が弾いてたあの曲を無意識に弾いていた。凪は弾き終わると、

あれ私、今何弾いていたんだっけ?

自分が弾いた曲を思い出せない。

凪は、ふと後ろに気配を感じた。だけど誰も居ない。

今日の私なんか変だ

凪は、もう一曲だけ弾いて終わることにした。しかし、弾き終わると何を弾いてたか忘れている。とてつもない不安を感じた。凪は早くに片付けを済まして音楽室を出た。この日から、凪は放課後の音楽室で無意識にあの曲を弾くようになった。弾いていると、音楽室の扉が開いて胴体の無い両腕だけが這うように入ってきた。凪は気にせず弾き続ける。それから、女性の頭部だけが転がるように入ってきて胴体の無い両足も走って入ってきた。そして凪の周りを囲む。凪は弾き続けた。今、部屋に入ってきた両腕と両足は凪の演奏を聴いて踊っていて女性の頭部は楽しそうに笑っている。やがて、演奏が終わると凪はピアノにぐったりとした。次の日も、その次の日も凪は放課後にあの曲を弾いた。音楽室の扉が開き、最初に入ってきたのは骸骨。体からカタカタと音を出して入ってきた。次に女性の幽霊が浮遊しながら入ってきた。女性の幽霊が入ってくると、辺りに風がヒューと吹いた。他にも、凪の弾く音色に導かれるようにして目玉だけがミミズのように動きながら入ってきたし、髪の毛だけが不気味にカサカサと音を出して入ってきた。それからも奇怪な客がどんどん入ってくる。凪の演奏で客達は踊り始めた。凪は無意識に弾き続ける。やがて日が落ち始めて外は暗くなった。夜の学校で、音楽室だけに照明がついていた。演奏会はずっと続いた。       終

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