85 静かな決意
バレンタインデーから二週間が経ち、二月の最後の日。二月だけ28日までしか無いのは一体なんでなんだろうな?
あれから、雨笠は上手くやっているようだ。自分を無理に変えようとせず、自然体のままでいること。それが一番大事なんだってことに改めて気付かされた。
どこかのマンガに書いてあったセリフなのだが
『変に気負い、自分のギアを変えようとするのはNG、自分らしくあれば、ギアはおのずと噛み合う』
仮面をかぶって仮初の自分を演じるのが得意な人もいるだろうが、俺や雨笠のタイプは、間違いなく苦手な方だ。だからこそ、自分らしくある必要がある。
最近可愛くなった雨笠と、元よりとびきり可愛かったあるまのペアは、前に話した頃より、繋がりはより強固なものになっている。前は、あるまと話していることをよく思ってない人も居たらしいが、今では尊いとも言われている…ということをあるまから聞いた。
「あれから少しは自信付いたのかな」
そう思っていると、雨笠から連絡が来る。前は、雨笠の方から連絡を送ってくることはほとんどなかったのだが、最近はこういうことが増えてきた。これも、少しずつ自信がついてきたってことなのかな。
雨笠:今日、放課後話しません?
藍星:いいよ
少しずつ、変わってきている。彼女の内にあるものが。
「あ、やっと来ましたか、先輩」
「ちょっと、用事があったんでな」
「それで…先輩に伝えたいことと、確認したいことがあります」
「ん?、確認したいこととは」
一体何を確認することがあるというのか?
「私が変わるきっかけだったり、色々手伝ってくれた、あるまさんの先輩が居たんですよ」
「優しい人もいるもんだな」
「あれ…、藍星先輩…ですよね?」
「………………」
「沈黙は肯定と受け取ります」
…どこかバレる要素あったか?、え?、いや、マジでわからん。
「なんでバレたのかわからないって顔してますね、いや、私も最初は確証が無かったんですよ。でもあるまちゃんの接し方とか…、あと女性ものの服選ぶ時にお店に入りにくそうにしてたり…あと話し方にも、ちょっと面影を感じました。でもあそこまで変えられるのはすごいと思いますよ?、多分普通の人なら気付きません。」
「……バレてるのは意外だったわ」
「あまり私を舐めないでほしいですね」
……なぜこうもバレるのだか、好き好んでやってるわけじゃ無いというのに。
「……まぁそれはいいんです、本題は別であります。あの先輩がそうなのだとしたら…一度聞いてますよね…」
「…なんのことだっけ?」
「私は先輩のことが好きってことです!!!」
………
「……私は、本当になんの取り柄もない、クラスの端に誰にも気づかれず座ってる根暗な陰キャでした。でも、先輩と関わっていったことで、今はこうやって話す人もできて、少しずつ学校にいるのが楽しいと、そう思えるようになってきました」
「…それは、良かったな」
それが目標ではあったからね、一応。
「そのきっかけ、そうですね、私が変わろうと思えたのは…いわば先輩のおかげなんです!!!」
「…ありがたい話だね」
「見ての通り今では、周りもたくさん可愛いと言ってくれるようになりました、あるまちゃんの近くにいても、後ろ指刺されないようになりました。少しずつ、自信も持てるようになりました」
そこまで言うと、彼女、雨笠 雫はこっちを見上げて、どこか悲しそうな表情でこう言った。
「私は、藍星さんのことが、大好きです」
「……俺は」
「…言わなくてもいいですよ、わかってます、わかってるんです、結構悩んだんですよ?、藍星さんにあるまちゃんが居なかったら、私が付き合えてたのかなって、でもあるまちゃんが居なかったら、きっと私はこうやって楽しく学校に来れては居ないでしょう。だから、感謝してると同時に、悲しくも、そして羨ましくもあるんです」
「…そうか」
そこにあるのは、雨笠の静かな、それでいて確かな決意と、どこか寂しげな微笑みだった。




