72 導きの手引き②
「どうにかして美容院とか行かせて、みりにやったように化粧品類とか洋服とか色々買って、それで綺麗になったことを実感できたらいいんだけど…」
「化粧品って結構お金かかるから買えるかどうか…」
「ちょっとそこがネックかもね〜」
あるまと俺の母さんは仲がいいから、先に事情を話してお金をもらってたみたいだけど、雨笠の場合はそうもいかない。
「…私にちょっと考えがあるんだけど、いい?」
「聞かせてもらおうか…」
〜〜〜
次週の土曜日、俺はまた女装をしていた。
あれからあるまに女声のレクチャーを受けていたのだが…
『ボイチェン使わなくても女性Vtuber名乗って活動出来るんじゃないの?、いや私の教え方が上手いのはそうなんだけど…飲み込みが早くて逆に怖い…、え、やったことある?』
と言われてしまった…実のところを言うと昔興味があってやったことはあったのだが…、結構出せるようになってきたところで、鏡の前で男性が女声を出すという、なんと言い表せばいいかわからない地獄を感じてからやらなくなってしまったのだ。あと単純に喉が疲れるからあんまやりたくないと言うのもある。
「で、今日は何をするのかしら?」
「…自分で言っておいてなんなんだけど…みりの女の子の声なんだか落ち着かない」
「じゃあその時になるまでは普通に喋るわ」
「うわ!、急に戻さないでよ!、びっくりした!」
「どっちやねん」
「ていうかさっき話したけど聞いてなかった?、今日何するのか」
「完璧に聞き流してた」
「もー!」
怒られてしまった。
「…今日は色々あるまちゃんの相談に乗るの、それで、イメチェンをどういう方向性にしようかなとか考える」
「なるほど」
「この前一緒に買い物してた子と相談聞くって言ってるから大丈夫だよ〜」
待ち合わせ場所はとあるカフェ。待ち合わせ時間の20分前には着いて待っておく。そうしていると、
「…なんか周りにキョロキョロしながら入ってるの、あれ雫ちゃんじゃない?」
「ほんとだ」
「声変えといてね」
「了解、ア、ア、ア、よし、OKよ」
「…手慣れてるね…」
こんなの役立つ場面あんまないからね?
「あ、その、お久しぶりです!!!」
そうこう行ってるうちに雨笠がテーブルの方にやってきて座っては挨拶をした。
「あら、お久しぶり、この前の服屋で見かけて以来かしら」
「は、はい!、きょ、今日は色々相談を聞いてくれると、き、聞いて!」
「色々聞かせてね」
「は、は、は、はい!」
あるまがジト目で見てくる。喋り方変えると自分の中でスイッチが入って別人を演じることができるんだよ、そう言うものなんだ、細い目で見てこないでくれ。
「まぁそう言うわけだから!、なんでも話してね!」
それからコーヒーを飲みながら、少しずつ話を聞き出していた。
「私は…昔からそうなんです。ずっと自分なんてどうでもいい人間だと思ってて…そんな自分が人なんか好きになっていいのかよくわかんなくなって。だから、なんで人気者になれたんだろうって思って、藍星先輩に聞きに行った…と言うのが二学期の頃の話です…」
「なるほどね…、続けてちょうだい」
「藍星先輩は、それからも私の相談によく乗ってくれましたし、放課後に時間も取ってくれました…行けないってわかってるのに、好きって思ってしまったんです。」
その瞬間、あるまからものすごい覇気というか、威圧が放たれた。
「ふーん、放課後に何回も時間使って話聞いてあげてたんだ〜、後でじっくりそれについて説明してもらわなきゃね〜エッヘヘ〜」
「…………」
あるまが俺にだけ聞こえるように小声で呟いた。さぁてどうしたものか…
「でもダメなんです、藍星先輩には、その…あるまちゃんが居るじゃないですか…優しくて、一途で、尽くしてあげてて、それにみんなの人気者で…とても私には勝てません、でも、もうどうすればいいのかわかんなくって…ごめんなさい、こんな話をしちゃって、あるまちゃんもあんまり聞きたくなかったでしょう、私はこれくらいで」
「待って」
また、この前図書館で話したときのように、荷物をまとめて帰ろうとしたから慌てて呼び止めた。
「きっと、あなたの気持ちは伝わってる。人を好きって思う気持ちがだけなわけがない。人の幸せを祈って…願ってあげられるあなたの心は、とっても美しいものよ」
「…!」
「あなたは自分に自信がないだけ…ねぇあるま、あと雨笠ちゃん、来週時間あるかしら?、色々連れてってあげなさいよ」
「時間は…ありますけど」
「全然大丈夫だよ〜」
自分に自信がないなら、自信を持てるように、変えてあげる、ただそれだけだ。きっとそれだけで、雨笠は次の一歩を踏み出せる。それだけで周りからの評価を変えられる。自分を卑下する必要なんて一つもない。君が俺に人気者になりたいと言って聞きにきたんだろう?、お望み通り、人気者になるための手助けをしよう。さぁ、あとは君次第だ、雨笠。




