70 可愛い女の子②
『奥のボックス席へどうぞ〜』
ナンパ騒動を終え、やっとカフェに入り席につけたところだ。
『ご注文が決まりましたら、またお申し付けくださ〜い』
「ありがとうございま〜す」
持ってきてくれたお冷を飲みながらあるまが口を開く。
「さっきはありがとね」
「いや、俺は何もやってないよ」
「ナンパ男に絡まれた時、自分が声出して追い払おうとしたでしょ?、私を守ろうとしてくれたこと、とっても嬉しかったよ、でもダメ」
「だめ?」
「今はみりは女の子なんだから、女の子のままで居て欲しいの。それにあー言う人の対応は、もう慣れてるからさ、だから私に任せなさい!」
そうか、あるまはすごく可愛い。だからこれまでもきっと、たくさんナンパとかに絡まれてきたんだろう。あるまは男性に対しては、基本塩対応で返す。それにあるまは表面の外観しかみない人を嫌う。だからナンパしてくる人は、総じて大嫌いなんだろうな。
「それに私も、守られるだけの人じゃないんだよ?、最近結構護身術も頑張ってるんだからね?」
「確かに、さっきの流れは綺麗だった」
あるまを掴もうとした人の腕を掴んで、捻って、呻き声を上げたところに、そのまま振り回して地面に叩きつける…この一連の流れ。
「何かあったら、私がみりを守ってあげるんだから!」
「ずっと守られるだけと言うのは、男のプライドに響くから」
「みり、女の子」
「生物学的には男なので」
「これ以上言ったらつねるよ?」
「スミマセンデシタ」
はい、諦めて今日は女の子になります。
カフェを出て街をぶらぶらすること一時間、
「女の子同士じゃないとできないことしたいね〜」
「たとえば?」
「たとえば……なんだろ?、わかんない!」
わからないのかよ…俺もそう言うことはよく知らないけども…
「ねぇみり、あそこに居るのって…」
考え事をしているとあるまが話しかけてきた。
「あそこに居るのって雨笠さんじゃない?」
「一人で何やってんだ…」
服屋に入ろうとして、でも一歩前で止まって下がってを繰り返している。
「よし!、話しかけに行こう!」
あるまが小走りで雨笠の元まで行ってしまったから仕方なくついていく事にする。
「雨笠さ〜ん、なにやってるの〜?」
「あ、宵闇さん、き、奇遇だね」
「なにしてるの?」
「あ、いや、その、なんでもないよ」
「ふーん、そうなんだ〜」
特に隠すことでもないと思うのだが、言わないと言うことは触れてほしくないのだろうか。
「それで…その後ろにいる方は…」
おっと、流石に俺…私の存在に気づいたようだ。
「私の知り合いだよ?、今日は一緒に買い物に来てるの!」
「珍しいですね、藍星先輩と居ないなんて」
目の前にいますよーーーその藍星先輩は。
「恋人だからって、ずっと毎日一緒にいることなんてないよ!」
嘘である、とナレーションを入れたくなるような場面だな。
「さ、あっちの店行こ!、じゃ!、また学校で!」
腕を引っ張られて別の場所に連れて行かれる。
「は〜、まさか知り合いに会うなんて…」
「休みだから仕方ない部分もあるのかもね」
「今のみりは喋っちゃったらバレちゃうからね〜、女声の練習もしないとね!」
まだ色々させられそうなんですけど???
〜〜〜
「もうそろそろ家帰る?」
「…あ、そうだね、もうこんな時間だ」
時間は五時を過ぎて、このまだ冬の時期、外が暗くなり始める頃…それに、
「それに帰って俺…私のメイクも落とさないとじゃん」
「え?、そのままでもいいと思うけど?」
「だって俺よくわかんないもん!」
「そっかそっか〜、私がついてないと何も出来ないもんね〜」
ニヤニヤしながらこっちをジッと見てくる。
「大丈夫!、私が手取り足取り一から教えてあげる!、みりは全部私に任せてくれたらいいんだよ?」
「その表現語弊を生みそうなんだよなぁ?」
「何が〜?、あるまわかんな〜い」
小悪魔みたく笑いながら言われても説得力がないって!
「ほら、そういうのいいから帰ろ!」
あるまと手を繋ごうと手を伸ばすと、あるまは驚いたような表情を浮かべた。
「え、なに、どうしたの?」
「いや…、みりの方からそういうことするの、結構珍しいな〜って思って」
「…たまにはやりたい時もある」
「そっかそっか〜、私はみりの彼女なんだもんね?、手を繋ぎたくなることもあるよね〜、ずっと握っててあげる!」
いつもならあるまは人を弄る時、そっかそっか〜を枕詞にしないと始められないのかとツッコミを入れるところなのだが…今はそれを言うよりも、
「あったかい、好き」
「……え!?!?、どうしたの!?、熱とかないよね!?、大丈夫だよね!?」
「何をそんなに驚いてるんだ、帰るよ」
「急に冷静にならないでよ〜!」
手を繋いで歩いていくあるまと俺(女の子の姿)。周りからは恋人として見られてないんだろうな〜、今の俺は女子なんだし。でもこれは言わば、俺とあるまだけが知っている秘密。そういうとなんだかドキドキする、女装すると共に、考えも乙女になってる?、いや、そんなことはないと信じたい、と頭の中でブツブツ感上げながら帰路につくのであった。




