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68 あるまの企み②

「えっとその、なんというか、え?」

「だから〜、みりにはこれから女装してもらいます!」

「いや聞こえなかったとかじゃなくて」


 ちょっと何言ってるかわからんのだが。聞こえなかったとかじゃなくて普通に意味がわからない。


「前から思ってたんだよね〜、みりって女装したらめっちゃ可愛いんだろうな〜って」

「んなわけ」

「だって、毛深いわけじゃないし」

「頻繁に手入れがいるわけでもないからねーありがたいことに」

「肌も綺麗だし」

「前にあるまと買った化粧品類のおかげやな、ずっと使ってると効果を実感するよ」

「それに色白だからね」

「あんま外出ることもないから日焼けという概念がないし」


 自分でもこの肌はいいと思う。友達《柊》にも羨ましがられたことがあるし。


『ほんと肌綺麗だよな、羨ましいよ』

『そうか?、柊も綺麗だと思うが』

『ほっとくとすぐ毛とか生えるし、手入れ大変なんだよ』

『なるほど』


 自分自身あまり苦労したことがないからわからないのだが、羨ましがられるようなものらしい。


「だからメイクしてウィッグして可愛い服"着せれば"、みりが可愛い女の子になるんじゃないかって思ったの!」

「丁重にお断りいたします」


 俺に女装の趣味はないぞ、と心の中で呟いたのも束の間、


「なんでもしてくれるって言ったじゃん…?」

「記憶の限りでは言ってない」


 うん、言ってない、言ってないはずだ、今回ばかりは本当に、


「言った!、絶対言った!、言ったってことでいいの!」

「えぇ…?」

「それともなに、私がやってほしいってお願いしてることを拒絶するの…?」


 いくらカップルでも、なんでもするってわけではないと思うんだけど…ていうかさっきからあるまの圧がすごい。有無を言わさないような何かがある。観念するしかないのかね…


「わかった、わかったから圧をかけてくるのはやめて?、めっちゃ怖い」

「…女装、してくれる?」


  "はい" か "YES" の解答しか受け付けてないであろうことをわざわざ聞く必要があるのかねと思ったけどここは素直に応じておくことにする。


「わかった、もう好きにしちゃってよ」


 そういうと、あるまが笑顔になって、


「わかった!、とびっきり可愛くしてあげる☆」


 そうして椅子に座らされ、そこそこの時間、あるまに身を任せることになったのだ…なんか他人にメイクされるのって…あれだな、くすぐったいというのはもちろんそうなのだが、それ以外にも…なんだか、なんと言い表すべきかよくわからない何かがある。なんだかソワソワするというか落ち着かないな…。


「よし!、完了!、じゃあこの服に着替えて〜、私部屋出ておくから〜、あ、全部終わってから見てほしいから部屋の鏡は全部持っていっておくね〜」


 鏡を持って行かれてしまった…まぁ着替えてと言われたから着替えて…っとここで俺は気づいてしまった、いや女装というから当然と言えば当然なんだけど…


「スカート…、服も全部女物だし…」


 サイズは自分に合うものを全部出してくれている。その辺りを把握されてることは置いておくとして、なんだが、男の自分が女物の服を着ることに抵抗があるというか…。そりゃそうだ、だって女装なんて初めてだから。鏡がないから自分がちゃんと着れているのかもわからないが、一応着替えを済ませてあるまを呼んだ。


「お、着替え済んだね〜…と、ちょっと違うねこの着方、こうしたほうが綺麗に見えるよ」


 あるまが微調整を済ませて、最後に持ってきたのは。


「はいこれ!、ウィッグ!、みりにちゃんと合うやつにしてあるから!」

「なんで合うやつが用意されてるんでしょうね」

「それは…秘密!、まぁまぁまぁ、私がしっかりつけてあげるから心配ないよ!」


 そうして全ての準備が済んで、あるまと大きめの鏡が置いてある脱衣所の前まで移動した。部屋に入る前、あるまに目を塞がれて鏡の前まで案内される。そうして目を塞いでいた手を離し…最初に飛び込んできたのは…


「え、誰?」

「今鏡の前に立ってるのはみりしか居ないよ〜」


 そこに写っていたのは、街中にたまにいそうな、高身長の女性。ストイックさも感じさせながら可愛さも兼ね備えた女性がそこには居た。


「これが…俺?」

「ちょっと〜?、今のみりは女の子なんだから俺って言っちゃダメ、一人称は私」

「いやでも俺…私?」


 口を動かすと鏡の女性も一緒に動く、すごく脳がバグりそう。

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