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64 新年

『みりも早くお風呂入ってきなさいよ』

「わかったわかった」


 年越し、それは年が切り替わる、その刹那を切り取ったイベントだ。でも大事なのはその瞬間だけではない。

『今年ももう終わってしまうのか〜』

 とか、

『来年どんなことしたい?』

 とか、自分たちが"今年"と言う残り少ない期間を名残惜しみつつ、やってくる"来年"に準備への豊富や心構えをする、そんなイベントだ。


「今年もいろんなことがあったね〜」


 そんなことを考えていると、風呂を出たあるまがそう言った。


「そうだな〜、特にあるまと再開してから、ものすごい速さで終わったような気がするよ」

「ちょっと、それってどういう意味〜?」

「それだけ楽しかったってことよ、変な意味じゃない」

「ふーん、なら良いけどね!」


 俺も早々に入浴を済ませて俺の部屋で休む…


「おかえり〜、結構お風呂早いんだね」

「あんま長風呂すんのもよくないし、これくらいで良いのよ」

「私はゆったり湯船に浸かる方がいいと思うよ〜、だってそうしないと疲れも抜けないじゃん!」


 まぁ確かに、でも風呂で時間を浪費するくらいなら、早く終わらせて別のことに時間を回した方がいいに決まっている。


「確かにそうかもな」

「でもこれから何する〜?、大晦日って、唯一遅くまで起きてても怒られない日なんだよ?」

「俺はいつもそれくらいまで起きてるから大して変わんね、まぁゲームでもして気長に待っ…」

「ダメ」


 ゲームを開こうと伸ばした手をあるまが遮ってきた。


「この後年越しそばもあるんだから今からゲームしてもあまり出来ないよ?、それに…」


 そこまで行った後に俺の正面に来て、


「傍にいる彼女を放って別のことするなんて酷いと思わない!?」

「…あー」


 言われてみれば確かに、せっかく家に来てくれているのに放置するのはマズイか?


「と言っても今更何するんだ?」

「うーん、なにか考えて?」

「丸投げかよ」


 なにか考えてと言われましても、そう簡単に思いつくものでは…、


『年越し蕎麦出来てるわよ〜』


 タイミングとしては良かったかもしれない。蕎麦でも食べながらゆっくり考えることにしよう。


「「いただきまーす」」


 我が家の年越し蕎麦は、ネギにお正月にも食べるかまぼこ、あと海老天が入っている。他の家の年越し蕎麦を知らないからなんとも言えないのだが、割とみんなが想像するものは、こんな感じのものである気がする。


「蕎麦って滅多に食べないから、こういう時に食べると、あーもう年越しなんだな〜って思うよ〜」

「確かに…蕎麦って食べることないよな」


 蕎麦の有名な観光地とか行ったりした時には食べるけど…。蕎麦の名産地とかに住んでる人は食べるのかな?…とか色々考えながら年越し蕎麦を食べ切るのだった。


「あとはほんとに年越しを待つだけだね〜」

「あともう…20分くらいか」

「最後にこの一年を振り返っちゃう?」

「たまには悪くないかそう言うのも」


 この一年…と言うより、あるまと出会ってからの二ヶ月とちょっとのお話だ。

 これまでも何度か話したような、今となっては思い出深いお話たち。自分の人生を変えてくれた(と言うと大袈裟かもしれないけど)大切な人。人との出会いは一期一会とよく言う。人と人が結ばれるのは運命なのか、偶然なのか。それは誰にもわからない。でも、


「私たちの出会いは、きっと前世から運命付けられてたんだよ〜?」


 目の前の彼女が嬉しそうにしてくれるならなんでもいいやって、そう思った。


 〜〜〜


「あと1分!」


 スマホでカウントダウンのサイトをつけて上機嫌にカウントダウンを始める。


「3…2…1…!!!」


 あっという間に年越しを迎えた。あるまはこっちに向き直して


「ハッピーニューイヤ〜!、あけましておめでとう〜、これからもよろしくね〜」

「あけおことよろ」

「それくらいはちゃんと言おうよ!?」


 ひとしきりあるまと戯れたら、


「っと、母さんにも言ってこなきゃだし、あとLINEの方にもなんか来てるだろうから後で…」


 柊:あけおめ!、今年もよろしくな!、早速本題なんだが、初詣一緒に行かないか?


「…後で返信する時までに考えるか」


 一旦母さんにあけおめとだけ言いに階段を降りていくのだった。

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