59 なにがあっても
〜約15分前 藍星みり〜
「宵闇さんが、先輩に!」
「!!!、大丈夫なんだよな!?」
「わかんない!、ただ先輩についていってしまったとだけ!」
なんてことだ。きっと自分の噂のせいであるまの事を巻き込んでしまった。自分が全部悪い、俺が変な噂を立てるような事を起こさなければ…やっぱり自分なんて。
「ぼーっとしてないで、早く探しに行きましょうよ!…」
「はっ、いや、ありがと」
「な、なんで急に!?、早く行きましょう」
また自己嫌悪に陥るところだった。何かあるとすぐに自分を過度に責めてしまう、俺の悪い癖だ。
「…とは言っても、どこに行ったとか、その辺の情報ないの?」
「だからわかんないんですよ!、わざわざ移動しいたと言うことは人目のつかないところに行ったとは思いますが」
「とりあえず手当たり次第探すぞ!」
学校を走り抜けながら探すものの…なかなか見つからない。
「そりゃちょっと探せば見つかるような場所では話さないかそりゃ!、ていうかうちの学校そんなバカ広いとかそう言うわけじゃないはずなんだけどな!」
かれこれ5分ほど探しただろうか、一向に見つけられる気配がない、このままじゃ…あるまの身が危ない…でも手がかりがない。もう俺にはどうにもできないのか?。一生をかけて守りたいと思った相手も、すぐに消えていなくなってしまうのか?。嫌だ、そんなこと、もう二度と味わいたくはない。ましてや、それが自分のせいで起こったことだなんて、俺はきっと一生後悔する。
「一体どうすれば!!!」
そんな時、LAINに一つのメッセージが届いた。元カノである月乃みちるからのものだった。
月乃:宵闇さん、別館二階空き教室
なんだかんだ、別れてからもブロック出来なかった月乃のLINE、今でも残っている昔のメッセージ、しかし、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
「なんであるまの居場所を知っているのかわかんないけど、恩に着る!」
別のところを探しに行っている雨笠を連れ戻してすぐに空き教室に向かうことにした。
「雨笠!、場所わかった!」
「え!?、何かあったんですか!?」
「元カノから、あるまの場所がメッセージで!」
嘘をつかれているのかもしれない、もしかしたら罠なのかもしれない。でも今の俺には、これしか縋れるものがない。だから俺はこのメッセージを信じる。
「確かな情報なんですか!?」
「そうじゃなくとも行くしかない!!!」
なにを思ってこれを元カノは送ってきたのだろうか、今の俺には分からない。だけど、俺はもう後悔したくない。だから、俺は走る。もうなにも、失わないために。
「くっそ、ここ鍵空いてないじゃん!」
「一階以外、渡り廊下の鍵は閉められてるよ」
「それを早く言え!!!」
こんなところで時間を食っている場合ではないのに、いち早く向かわなきゃいけないのに、慌てると人生うまくいかない。『急がば回れ』とはこう言うことなのかね。
「てか空き教室ってなんで空き教室なんですかね」
「今聞くな!!!」
いつもなら教えてやるくらいの余裕はあるんだが、今は一刻を争う。そんな事をしている場合ではないんだ!
そうして別館の階段を駆け上がる。するとそこには月乃みちるがいた。
『やっと来たのね』
「うん、なにがなんでも助けるためにね」
言葉を交わしたのはそれだけだった。
空き教室のドアを開けて最初に目に入ってきたのは、あるまの手を掴んで今にも殴ろうと力を溜めている…"斎藤 修"の姿だった。
「なにしてくれてんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
駆け込んだ勢いそのままに拳を握り締め、あるまを傷つけようとするクズをそのまま吹き飛ばした。
「痛っぇぇぇぇぇえ!!!」
手で頬を覆いながらうずくまる斎藤を見て、一旦冷静になって周囲を見回す。ここは使われていない教室なだけあって、人はほとんどいない。今ここにいるのは俺とあるま、そして斎藤。俺が来る前にいた月乃と、俺の後ろをついてきた雨笠の5人だけだ。
「み……り……?」
あるまがフラフラしながら起き上がってこっちを見る。
「ごめ…んね、行け…なくて」
「大丈夫、大丈夫だから」
そう言うと、あるまは俺に寄りかかって…涙が出ているのか体が震えている。虚勢を張っていた、と言うと聞こえが悪いのだが、あるまも一人の女の子である。怖いと思うし、誰か助けて欲しいと思っていたはずだ。だけど、こう言う人に弱いところを見せるとそこにつけ込まれることはわかっていた。だからこそ、なにも動じていないふうに演じなければいけなかった。
「もう、大丈夫、ちょっと後ろに下がってて」
そう言って、起き上がってきた斎藤と対峙した。




