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58 黒幕②

「なんで、…なぜここに?」


 昨日から、彼が犯人であることの目星は付けていた。まだ確証こそないものの、私の中ではほぼ100%そうであろうと思っていることだった。…だとしたらちょっと変に思うこともあるけど…。彼は常に、自分が直接関わることなく、自分が疑われることのない位置から陰湿なやり口で相手を追い詰めていくものだった…そんな彼が自分から行動を起こすの?、もう少し観察してみることにする。


『ちょっと話を聞いてくれよ、まだ藍星君に関することで、まだ話していないことがあるんだよ、それだけでも聞いてくれないか?』

『私はあなたのことが信用出来ません、嫌です』

『少しだけだからさ』


 それから二分間、まだ揉めている…しかし、何回断っても行かせてくれない斎藤に痺れを切らしたのか、妥協したのか、宵闇さんはこう切り出した…。


『…一分で終わらせてください、それ以上は待ちません』

『ここで話せる内容ではないんだよ、ちょっとこっちの方に来てくれ』


 教室の方は、なんだなんだとちょっと騒がしくなっている為か場所を変えるように言う斎藤。そうして二人はどこかに歩いていく…宵闇さんは、もちろん斎藤のことを警戒している。そうしてたどり着いたのは…あまり人通りの多くない別館、その空き教室の一つ。どうやら斎藤は校舎裏まで行こうとしていたようだが、宵闇さんがそれを頑なに拒否したらしい。部屋には入ったが、入り口の近くを常に陣取っている。


『本当なら、人の来ないところに行きたかったんだがな』

『…信用出来ない人には、ついていっちゃいけないと教わったもので』

『悲しいなぁ、善意で忠告してあげてるのに、それを聞き入れないなんてね』

『あなたが善意であろうと悪意であろうと余計なお世話なんです。私はあなたを信用するに足りません、言いたいことがあるならさっさと言ってください、私は帰ります』

『まぁまぁそう急かすな、そんな急いでも欲しいものは手に入らないよ』


 何を言ってものらりくらりと回答を避けてしまう斎藤の態度に、元々一切の信用を向けていない宵闇さんのイライラが募っていくのが見て取れる。


『早くしてください、さっきも言いましたけど人を待たせているんですよ。あなたに使っている時間はないんです』

『強情だなぁ…、君は藍星君のことを、ほんとに好きでいるのかい?』

『当たり前です』

『だけど、彼は昔、君のことをどうでもいい人と言っていたよ』

『…!!!』


「…!!!」


 近くで聞いている私にとっても初耳である話だった。


『これは中学校の頃の話だよ。確か君と同じ中学だったよ。それに中2の頃は藍星君とも同じクラスでね。もっとも、彼は私の存在を覚えてないだろうが』

『………』

『君の名前が学校内でかなり有名だったのも覚えているよ、それで君の家の隣に住んでるんだろう?、そんな彼に君とはどう言う関係なのか聞いたことがあるんだよね』

『…それで』

『彼はその話をすると、その話は聞きたくないと言うように、どうでもいい人だと言って話を終わらせたんだよ…そんな彼がなんで今君と付き合ってるんだい???、遊んでいるに決まっているじゃないか!、なんでそんな簡単な話が分からない』

『………』


 〜〜〜


 彼女は呆気に取られていた。


(確かに私が中一のとある時期から私にあまり関わってこなくなったのはよく知ってる…けど、なんでそんなこと言うの?、私に使ってくれた時間全部が、どうでも良かったと言うの?)


「おい!、聞いているのか!」

「……」

「まぁショックを受けるのも無理はない。藍星はそんなやつなんだよ、今も君と嫌々付き合っているに違いないだろうんね」

「………」

「そんな奴なんかとは別れて俺と付き合わないか?、俺なら邪険に扱ったりなんてしないし、俺のそばに大切に置いておいてやる。悪くない話だろう?」

「…その話は受け入れられません」

「!?、なぜだ?、君は藍星に大切だと思われてないんだぞ?、そんな奴と付き合っていてなんになると言うんだ?」

「…あの人じゃないと、ダメなんです」

「あ?」

「あの人はあなたみたいな悪意を微塵を見せずに、見返りなく人を助けるような、お人好しなんです。私が小さい頃、誰も味方がいなかった頃、あの人だけが、私のそばにいてくれて、元気づけてくれたんです…もし今、大切に思われていなくても、邪険にされていたとしても、私は絶対にあの人の傍を離れることはありません」

「……ッチ、まぁいい、お前がこんなところまで来た時点でもう終わってんだよ!」


 あるまは腕を掴まれた、逃げることができない。


「こんなことして、許されると思ってるんですか?」


 世の男の人って怖い、何かあるとすぐこうやって力で、暴力でなんとかしようとしてくる。この場所なら頑張れば逃げられると思ったけど、私の考えが甘かった。


「あぁそうだな、これがバレたら問題になるだろうよ…ただ脅して言わせなければいい話だよ!」


 斎藤は腕を掴んだ反対の手に力を込めてあるまを全力で殴ろうとして、あるまも腹を括って目を瞑った。


『なにしてくれてんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


 その刹那、あるまの聞き覚えのある声が現れて、斎藤は地面に倒れていた。

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