56 月乃の推理力
「今日は一緒に帰ろ♡」
「毎日一緒に帰ってるんですがそれは」
授業を受け終えてあるまと一緒に帰路に着く、それは今日も変わらない日常の風景だ。今日は12/23、聖夜の前夜祭の前夜祭である…それは果たして前夜祭と言うのか?、それはもはや前夜祭とは…なんだかゲシュタルト崩壊を起こしそうになってくる。
「もう明日か」
「そうだよ!、だから絶対に体調とか崩しちゃダメだからね!」
「俺もせっかく色々考えたのに、それが出来ないとなると悲しいから、あるまもちゃんと来てね」
「もちろん!!!」
あるまもいつになく上機嫌だ…ただしかしなんだろう…元気なのはいつもと変わらないんだけど…何か違和感を感じる…自分でも上手く説明できないけど何かが違うような、そんな気がするのだ。
「ねぇあるま、最近何か変わったことない?」
「え!?…いや、そんなことないけど?、心配しなくても大丈夫だよ〜」
心配いらないというのなら大丈夫なのかな?…でも最近の噂の件といい自分の周りであまり良くないことが起きているのは事実である。今は大丈夫であっても、明日、明後日、またその先が大丈夫であるとは限らない。事態は常に変わりゆく者なのだ。
「明日は終業式が終わって、お昼前には帰れるから、そしたら急いで帰って準備して、私の家の前に来てね!。あ、でも一緒に帰りたいからやっぱり待ってて!」
急ぐのに待つのはなんだか行動に一貫性がないようなそんな気もするのだが…まあ一緒に帰りたい気持ちはこっちも一緒なので特に何も言わないでいるのだがね。
「分かった分かった、校門の前で待っとけばいい?」
「うん!、終わったらすぐ行くからね!」
「りょうかーい」
そう言って、あるまはスキップしながら家に入っていくのであった。
〜〜〜
数日前に突如として流れ出した、藍星みりに関する悪い噂。それは数日経った今も疑惑は消えることなく話され続けているところなのだが、全員が全員、みりに対して疑念を持っているのかと言われたらそうではない。あるまはもちろんのこと、みりと近しい関係にある人は、みりはそんなことしない(出来るわけがない)と確信している。
ただ、それ以外の観点から疑念を持つ人も居たようだ…。
「…なんで今になって噂が広まるの?」
私は月乃みちる。みりとは大体二ヶ月前まで付き合っていた元恋人の関係性。別れる原因となったのは、彼が何人もの女性と関係を持っているという話を聞かされたからだ。証拠の写真も見せられたが、後になって考えたら色々不自然な点が数多くあるものだったし…そもそも一体誰がそれを見たのか、情報をくれたのか一切わからない。数多くのことが謎として残されたままなのだ。
だから私はバレないように藍星君と宵闇さんが帰るところを尾行したこともあった(最近もたまに行っている)。私とまだ付き合っていた頃の様子から、みりは何股も出来るような人じゃないことは想像がついていた。客観的に見ても藍星君は一途であると言えるものだった。それに尾行していても他の女がいるという素振りを見せることはないし、(良くも悪くも)異性に慣れていないようなそんな感じがしているのだ。
あれからもたまに尾行したりしているのだが、それでも特に何もないあたり、みりが何股もしているという噂は十中八九デマであると判断した。
「…私が別れるきっかけになった時に聞いた話とほとんど同じ内容…この噂」
…藍星君を陥れようと偽の噂を流した人がいる…そしてそれは、私と別れるきっかけになった噂を流した人と同一人物…。
だけど一体誰がそんなことを?、藍星君が優しい性格であることは、この学校の誰よりも知っているつもりだ。誰かの恨みを買うような行動をしたとは考えにくい…。
「だとすると私たち絡み?」
そうであると仮定したら、あるまの中に一つ思い当たる節があった。
「もしかして…私が告白を断った後に、私の悪い噂を流したのも同一人物?」
あまりにもやり口が似ている。普段の本人の立ち振る舞いから周りを納得させるエピソードを作り上げ、偽の証拠を作り上げて周りに信じさせ、本人に弁護の余地を与えない、あまりにも用意周到な手口。
「頭が良くて、私に恨みがあって、私繋がりで藍星君を陥れる理由がある…」
確定でこそなかったものの、その情報は彼女の長くの疑念を晴らすには十分なものだった。
「……気まずいけど、教えて上げたほうがいいよね、藍星君に」




